民法の意思表示を覚える方法【心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・脅迫】

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民法の勉強において序盤に出てくる意思表示ですが、個人的には序盤な割には難解だと思います。表示行為だけならまだしも、本人や相手の内面までも問われるので何か雲をつかむような話に聞こえてくるので、理解するまで混乱しがちなのです。

そんな意思表示の問題ですが、解くコツは『とにかく一覧そのまま覚えて機械的に当てはめる』ことです。

最初に勉強する際にはそれぞれの意味と道理を理解する必要があると思いますが、はっきり言って、それを完璧に覚えることも、覚え続けることも不可能だと思います。試験のために勉強ならばある程度テキストを読んで理解したら、それを完璧に覚えようとせずに、それを覚えやすい形に変えてから覚え、その後何度も問題を解くことが大事だと思います。その後、またテキストに立ち返って理解を深めると良いでしょう。つまりこんな感じです↓

テキストを読む→理解→図式化→問題演習→テキストを読む

今回は上記のうち、図式化について書いていきます。

意思表示を図式化するズバリこんな感じです。

民法の意思表示を覚える方法【心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・脅迫】

これをいきなり全てそのまま覚えることは難しいので、ブロックに分けて覚えていきます。

意思表示の欠陥

まず意思表示には『心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・脅迫』の5種類ありますが、それぞれ意思表示として欠陥があるので問題となるのです。そもそも正しい意思表示であれば民法によって扱いを規定されることもないわけです。

『心裡留保・虚偽表示・錯誤』は【意思の不存在】、『詐欺・脅迫』は【瑕疵のある意思】という欠陥があります。まずはこの2つのグループがあることを覚えましょう。

【意思の不存在】とは思っていたことと行為が違うこと

【瑕疵のある意思】とは行為そのものが駄目なこと

一覧の基本形

いよいよこれからは原則例外第三者の各項目について覚えていきますが、その前に一覧の基本となる形を覚えておくと楽です。

 

原則【意思の不存在】グループでは無効
【瑕疵のある意思】グループ取消うる
例外全てなし
第三者善意の第三者に対抗できない

これを一覧の基本となる形として覚えておきます。そしてこの基本形とは違う部分を一つ一つ覚えていけば良いのです。

覚えておくべき項目は7つで済みます。下記で①~⑦で示しますので一つずつ理解していきましょう。

意思の原則

欠陥がある5つの意思表示たちですが、民法では原則としてどのような効果を持つかを規定しています。

【意思の不存在】グループ有効無効

【瑕疵のある意思】グループ取消うる

 

①心裡留保だけが有効となっていますが、それは相手方の保護のためです。つまり元々は欠陥がある意思表示なので無効とするが基本なのですが、心裡留保だけは相手の保護のために特別に有効としているということです。

虚偽表示は相手も分かっているので無効となります。

錯誤では、相手方も分かっていないのですが表意者(意思表示した本人)の保護のために無効となっています。

詐欺と強迫は表意者には責任がないので取消うるとなっています。

意思表示の例外

虚偽表示と強迫以外には例外的な扱いが決められています。基本的には例外は『なし』だと覚えて下さい。心裡留保・錯誤・詐欺の3つの例外について覚えていきます。

②心裡留保では原則有効となっていますが、相手方が悪意または有過失の場合は無効となります。相手方保護のために特別に有効にしているので、相手方に駄目なところがあれば当然に無効になるわけです。

③錯誤は『意思の原則』の項目で説明した通り、表意者保護のために原則は無効となっています。しかし表意者に重過失がある場合は保護する必要がないので、無効を主張できないことになります。つまり有効なものとして扱われます。注意してもらいたいのは無効を主張できないのは表意者だけでなく相手方と第三者もそうであるということです。1

④詐欺では後述する第三者に関する事項が例外となります。先に説明すると詐欺においては善意の第三者に対抗できないのですが、第三者による詐欺でなおかつ相手が悪意の場合は取消うるとなります。

意思表示の第三者

民法の意思表示では表意者と相手方の関係だけではなく第三者についても言及しています。

繰り返しになりますが、意思表示に過失があったので、基本的には『善意の第三者に対抗できないということになります。つまり第三者は保護される立場にあります。

しかし心裡留保・錯誤・強迫の3つは少し複雑になっていますので、別途覚える必要があります。

⑤心裡留保(93条)においては第三者の規定がありません。しかしながら現在の学説では、94条の項目から第三者の規定を借りてきて第三者を保護しています。これを民法94条2項の類推適用といいます。

⑥錯誤について『意思表示の例外』の項目において、表意者に重過失があった場合は第三者も無効を主張できないと書きました。しかしながらその場合においても、表意者(本人)が意思表示の瑕疵を認め債権を保全する必要がある場合は第三者無効を主張できるとしています。2つまりは例外の例外といった感じです。

⑦強迫は少し特殊で、基本的に善意の第三者は保護されません取消前に登記をしていても無効になります。ただ取消後は、二重譲渡と同じように先に対抗要件(登記)を備えた者が優先されるので注意が必要です。

  1. 最判昭40.6.4
  2. 最判昭45.3.26