行政法とは?行政書士の専門分野である法律について

士業8種の中でも、「弁護士」「司法書士」「行政書士」の3種は法律系士業と呼ばれています。

行政書士が法律系と言われてもピンとこないという方もいらっしゃるかも知れません。それもそのはず、行政書士が専門とする法律『行政法』自体がほとんど知られていないからだと思われます。

このコラムでは、これから行政書士に何か依頼しようと考えてらっしゃる方にも分かりやすく『行政法』について解説していきたいと思います。

行政法とは?

まず第一に『行政法』とは総称です。

文書化されたひとつの法律があるわけではありません。

国家権力(立法権・司法権・行政権)のうち、行政権に関する法律のことを総称して『行政法』と言います。

行政権とは

国家権力のうち、立法権司法権についてはよく知られていると思います。

いっぽう行政権とは、実は定義がしっかりと定まっていないのです。大事な国家権力のひとつであるのにおかしな話ですが、それぐらい広範囲の権利であるとも言えます。

現在有力な説のひとつである『控除説』によれば、行政権とは国家権力のうち立法権と司法権を除いたすべての権利であるとされています。

つまり国が行うあらゆる活動はこの行政権によるものであるということです。

たとえば税金を徴収したり、運転免許を交付したり、地方公共団体にゴミの回収させたりなんかも行政権なのです。

行政法の3グループ

先に述べたように、行政権とはとても広範囲である権利ですが、そのひとつひとつにちゃんと根拠となる法律があるのです。

日本の法律の総数は約2,000個ですが、その中で行政法と言えるものは半数の約1,000個であると言われています。

そんな数多くある行政法ですが、3グループに大別できます。

行政作用法 国や地方公共団体の行政活動に関する法律 行政代執行法、行政手続法、警察官職務執行法、土地収用法、財政法、会計法、国税通則法、国税徴収法など
行政救済法 国や地方公共団体の行政活動により権利が侵害された時に救済するための法律 行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法など
行政組織法 国や地方公共団体の内部組織に関する法律 国家行政組織法、地方自治法、国家公務員法、地方公務員法など

この3グループの中でも特に『行政作用法』は多くの割合を占めます。よく知られている、都市計画法、道路交通法、農地法、特許法、建築基準法、食品衛生法などもこの行政作用法に属します。

行政書士と行政法との関わり

行政法は国が行うあらゆる活動についての法律ですが、その中には国民が何かすることを規制したり許可したりすることも含まれます。

たとえば飲食店を開業することに許可が必要なことはご存知な方は多いでしょう。もちろんそのことについても行政法のひとつである「食品衛生法」によって規定されているわけです。

その他にも、国の許可が必要とされている行為にはひとつひとつ根拠となる行政法があるわけです。

冒頭で行政書士は行政法を専門としている述べました。もちろん一人の行政書士がすべての行政法について深く理解しているわけではなく、それぞれの目的に合わせて行政法を専門としているのです。

たとえば当事務所の玉藻行政書士事務所では、一般貨物自動車運送事業の許可申請を取り扱っていますので、行政法である「貨物自動車運送事業法」を中心に付属する多くの法令を専門としていると言えます。他にも倉庫業の申請も取り扱っていますので「倉庫業法」を習熟しております。

これら取扱業務の行政法をよく読み理解し、実際に行政機関に提出する書類を作成するのが行政書士の業務になるわけです。

行政法と行政書士のこれから

行政法は国の実際の活動を司る法律です。そのため社会に適合するように改正が多い傾向にあります。

ITの発展により行政書士の仕事はなくなると言われていました。しかしながら、実際にはすぐに改正される行政法に即した申請手続きをIT化するには、コストが膨大になってしまいます。たとえば車の登録などIT化の試みが今まで何度かされてきましたが、あまりうまく行っていないのが実情です。

また行政法も専門性が増し、規制が多くなっているため提出が必要な書類は増加傾向にあります。しかし申請された書類を審査をする公務員の定員は抑制されており、そのため完成度の高い書類を提出する行政書士の重要度は年々増してきているのです。