流通と物流の違いとは?【イラスト付きですぐ分かる】

流通と物流の違いとは

ズバリ「所有権が移転しているかどうか」です!

アキヤマ

所有権とはなんぞや!

一般的な製品がメーカーから消費者の手元まで届く流れを例に見てみましょう。

流通と物流
流通と物流ではそれぞれ別のことの流れに表しているといえるのです。
流通・・・所有権の移動についての流れ
物流・・・の移動についての流れ

所有権とは

そもそも所有権とは何でしょうか。簡単に言ってしまうと、

所有権とは自分の持っている物を自由に使用・収益・処分する権利」です。

人々が持つ権利の多くについては法律において規定されています。所有権もそのうちの一つで、法律のうち『民法』において規定されています。
所有権の法律上の位置づけを示すならば↓のような図になります。
物権とは

物権とは

上から順に説明していきます。

物権とは「土地や建物などの一定の物を支配して利益を受ける権利」のことです。

所有権の「自分の持っている物を自由に使用・収益・処分する権利」と同じことのように聞こえますがちょっと違います。

概念としては物権は所有権よりも大きな範囲の権利を指す言葉ということです。

本権と占有権の違い

まず物権とは、「土地や建物などの一定の物を支配して利益を受ける権利」のことでしたが、その物権も本権と占有権の2つに分けられるのです。

  • 本権は「その物の支配を法律上で正当付けられる権利」のこと
  • 占有権は「現実に物を支配しているという事実状態に基づく権利」のこと

なにがなにやら分からないですね😁

一番最初に出した図の中で簡単に例えてみましょう。

流通と物流

上の流通の流れ最後の2コマに注目してください。

例えば小売から消費者が通販で商品を買ったとします。ここで特別な取り決めがない限り、注文時に小売から消費者にすぐに本権が移転します。

繰り返しますが、本権とは「その物の支配を法律上で正当付けられる権利」のことです。つまり商品がまだ消費者の手元になくても、商品を支配する権利は消費者に移転されます。

しかし通販ですので、現実では小売の店舗から消費者の自宅までは運送業者が商品を支配して運ぶことになります。ここで運送業者にはもう一つの権利である占有権が発生するのです。占有権とは現実に物を支配しているという事実状態に基づく権利」のことでしたね。

つまりは同時に、本権は消費者にあり、占有権は運送業者にあるという、同じ品物に2つの権利が同時に発生している状態になります。そしてそれは法律上現実という別の次元でそれぞれ認められた権利となります。

なぜこのように本権とは別に占有権が発生するかというと、占有権が認めないと運送業者は安心して物を運ぶことができないためです。占有権というものがないと、運送業者が商品を運んでいる際に、「おまえにはその物を占有している権利は無いのだから俺によこせ」なんて知らない人に言われても、運送業者はそれに言い返すことができなくなってしまいます。

本権と占有権

つまり本権占有権という2つの権利を認めることによって、経済活動をより安定したものとしようとしているのです。

ところでちょっと巻き戻ります。最初に消費者は本権を持っていると書きましたが、この時に持っている本権所有権なのです

所有権と制限物権とは

再びこの図を見てください。本権は所有権と制限物権に分かれているのがわかると思います。

所有権とは

所有権とは「自分の持っている物を自由に使用・収益・処分する権利」であるのに対して、
制限物権は「他人の持っている物を使用・収益する制限された権利」といえます。

たとえば制限物権には、

  • 他人が所有する土地を一定の目的のために使用・収益するための権利である用益物権
  • 債権者が債務者に確実に債務を返済してもらうために、債務者の物の価値を利用する権利である担保物権などがあります。

今回の流通・物流の話ではあまり関係ないので詳しいことは省かせていただきますが、あくまでも制限物権は他人のもっている物に対する権利なのです。

よくある例では、住宅ローンを利用する際に制限物権の1つである担保物権がよく使われます。銀行はローンを組む際に住宅に担保物権を設定し、債務者がお金を返せない際はこの担保物権を行使して家を差し押さえます。あくまで銀行にとって住宅は他人の持っている物ですが、担保物権があるので使用・収益することが可能ということです。

消費者が小売から商品を購入したという例え話に戻りますと、運送業者に運んでもらうような商品を購入することによって得られる権利は制限物権ではないことがおわかりになられると思います。他人の持っている物でも制限された権利でもないので移転した本権も制限物権ではなく所有権だと言えるのです。

流通で所有権が移転する理由

そもそも流通で所有権が移転するのはなぜかと言うと、それはそれぞれの段階で所有権の「自分の持っている物を自由に使用・収益・処分する権利」が必要だからです。

例えば一次卸業者はメーカーから製品を仕入れ、それを二次卸業者に売ることで収益を上げますが、これは所有権がないとできません。占有権には自由に使用・収益・処分することは認められていませんし、制限物権はその名の通り制限された権利ですので限られた状況の中でしか行使できない権利なので不適格です。

最後に

流通・・・所有権の移動についての流れ
物流・・・の移動についての流れ

まさか法律上の権利の話になると思っていなかったかと思います。特に本権と占有権については概念的にもかなり難解で、ちゃんと掘り下げようとするとドイツ民法やスイス民法の考え方が発祥になっていたりして大変なものなのです。(それはそれで面白いのですが…)

一方、物流に関しては基本的には物を移動させるだけですので所有権を考える必要ありません。近年のロジスティックスの高度化により、物流の枠内での加工処理等も話(つまり所有権についての問題)が出てきますがそれはまた機会にしたいと思います。

ご拝読いただきありがとうございました。