倉庫業とは何なのか具体例で解説します

倉庫業とは、何なのか。自社のビジネスがもしかしたら倉庫業にあたるのではと不安な方もいらっしゃるかも知れません。このコラムでは、まだ倉庫業を始めてられてない方に向けて、倉庫業とは何なのか基礎から分かりやすく解説します。このコラムにて倉庫業についてご理解いただき、倉庫業の登録が必要か否かをご確認いただければと存じます。

まずは正しく倉庫業について理解していただくために、国土交通省のホームページに記載されている倉庫業についての記載をご覧ください。

倉庫業とは、寄託を受けた物品を倉庫において保管する事業であり、原料から製品、冷凍・冷蔵品や危険物に至るまで、国民生活・経済活動に欠かせない多種多様な物品を大量かつ安全に保管する役割を担っています。

他人の貴重な物品を預かるという営業倉庫の特性から、倉庫業を営むにあたっては倉庫業法に基づく登録を受ける必要があります。登録を受けるためには、保管する物品に応じた倉庫施設の基準をクリアした倉庫であること、倉庫ごとに一定の要件を備えた倉庫管理主任者を選任すること等が必要となります。

すこし分かりにくいかも知れません。まずは文章で使用されている用語を解説したあとに、倉庫業にあたる事業について解説いたします。

倉庫業の用語

まずは国土交通省の説明にあった分かりにくい用語について解説いたします。

寄託

寄託とは、「物を他人に預けること」という意味です。特にビジネスや法律の上では、寄託契約と言われており、民法においてどのような義務が発生するなどの取り決めがされています。まず民法第657条では以下のように寄託を定義しています。

寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

民法においては第657条から第666条までで、寄託について取り決めをしています。ご興味あるかたは各条文をご確認ください。→ウィキブックスで条文を確認する。

国土交通省の説明にある「倉庫業とは、寄託を受けた物品を倉庫において保管する事業であり」とは「倉庫業とは、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾した物品を倉庫において保管する事業である」と言い換えることができます。

余計分かりにくくなったとお思いの方もいらっしゃるかも知れませんが、ここでご理解していただきたいのは、寄託とは、民法でも規定されているれっきとした行為であるため、そのため倉庫業によってその行為を保護しているということなのです。

☑寄託は民法でも定められたれっきとした行為

営業倉庫

営業倉庫とは倉庫業の言い換えとなります。つまりその業種そのものを指す言葉です。

一方で、建物として、倉庫業の登録を受けた倉庫を「営業倉庫」、受けていない倉庫を「自家倉庫」ということもあります。そのため、倉庫業の登録を受けている事業者でも、同じ敷地内に営業倉庫と自家倉庫の二つを持っているということもあり得るわけです。

あまり厳格に使用される用語ではないので、営業倉庫とは、倉庫業の言い換えであり、かつ、登録を受けた倉庫のことを指す、ぐらいに覚えておきましょう。

☑営業倉庫とは倉庫業と同じ意味

倉庫業法

倉庫業は倉庫業法という法律によって規定されています。昭和31年に公布された法律であり、以下の三つを目的としています。

  1. 倉庫業の適正化
  2. 利用者の保護
  3. 倉庫証券の流通

以下のコラムで詳しく解説していますので、是非ご覧ください。 お問い合わせ

☑倉庫業は倉庫業法で規定されている

登録

国の許認可には五つの種類があり、倉庫業はその許認可の中でも登録を受ける必要があります。許認可には以下の五つであり、下にいくほど難易度があがります。

  1. 届出
  2. 登録
  3. 認可
  4. 許可
  5. 免許

登録とは、名簿に登録するということで、基準を満たしていればすべての申請はおおよそ登録を受けることができます。そのため倉庫業の申請においても、あらかじめ基準を満たしているか確認さえしていれば、申請が通らないことはありません。

☑倉庫業は比較的簡単な許認可である

倉庫施設の基準

倉庫業の登録を受けるためには、使用する倉庫の施設が一定の基準を満たしている必要があります。ここでまず注意していただきたいのは、建物の用途が倉庫でないと、まず基準はクリアできません。建物の用途は、建築確認通知書や確認済証に記載されています。まれに工場を倉庫としている方がいらっしゃいますが、倉庫業の登録を受けるのは難しいでしょう。

倉庫施設の基準は具体的は以下のようなことを確認します。

  • 関係法令への適合
  • 土地への定着性等
  • 軸組み、外壁又は荷ずりの強度
  • 床の強度
  • 水の浸透を防止する構造及び設備
  • 水の浸透を防止する構造
  • 水の浸透を防止する設備
  • 床の防湿措置
  • 遮熱措置
  • 耐火性能又は防火性能
  • 災害防止上有効な構造又は設備
  • 防火区画
  • 消火器具
  • 防犯上有効な構造及び設備
  • そ害の防止設備

倉庫施設の基準について以下のコラムで詳しく解説しています。 倉庫業審査基準シリーズ目次

当事務所では、倉庫が施設の基準を満たすかの確認まで無料を承っております。お問い合わせはこちらから お問い合わせ

☑倉庫業の審査は施設の確認がメイン

倉庫管理主任者

倉庫業を営むにはあたっては、倉庫管理主任者を選任する必要があります。倉庫管理主任者は以下のどれかにあてはまるものを選任することができます。

  • 倉庫管理業務に2年以上の指導監督的実務経験を有する者
  • 倉庫管理業務に3年以上の実務経験を有する者
  • 国土交通大臣が指定する講習の修了者
  • これと同等以上の知識・経験を有すると認められた者

多くの場合、上から三つ目の「国土交通大臣が指定する講習」を受けて資格証を取得して選任されます。「国土交通大臣が指定する講習」は一般社団法人 日本倉庫協会が主催しています。開催数が多くありませんので、早めの受講をおすすめします。→日本倉庫協会HP

☑倉庫業のためには倉庫管理主任者の選任が必要

倉庫業にあたるかどうか判断する方法

国土交通省による倉庫業についての説明およびその用語の解説を読んでいただいたところでお分かりになるように、倉庫業とは、倉庫施設の基準を満たした倉庫に、寄託された物品を保管することで成り立つ事業であるということです。

しかしながらすべての物品を保管する事業が倉庫業とされているわけではなく、倉庫業法では、物品を保管しながらも倉庫業にあたらない事業も定めれています。

倉庫業にあたらない事業

まずは倉庫業にあたらない事業にどのようなものがあるかを確認していきましょう。

国土交通省のホームページでは倉庫業にあたらない事業を以下のように記載しています。

  1. 港湾運送事業において一時保管用に供される上屋
  2. 貨物自動車運送事業の運送契約において一時保管用に供される保管庫や配送センター
  3. ロッカー等外出時の携帯品の一時預かり
  4. 銀行の貸金庫等の保護預かり
  5. 特定の物品を製造・加工した後で他人に譲渡する営業、譲渡後も引き続きその物品を保管する場合も含む
  6. クリーニング業のように、特定の物品の役務(洗濯や修理等)の営業を行う場合に付随してその物品を保管する行為

これに加えて、倉庫業法施行規則では以下のような例は倉庫業にあたらないとされています。

  • いけすによる活魚の保管、動物の遺体安置所、電子データの保管
  • 他人の使用する自転車、自動車その他これらに準ずる物品の保管

 

ご覧いただいたように保管をしながらも、事業の全体を見た場合に他の行為のためにある事業は倉庫業にあたらないとされているようです。

☑保管はするけど倉庫業にあたらない事業もある

倉庫業に該当するケースとしないケース

次に倉庫業かどうか判断するのが難しい事業についてみていきましょう。

同じように物品を預かる事業であっても、契約や立場によっては倉庫業に該当するケースと、該当しないケースがあります。

トランクルーム

倉庫業に似ている事業として、トランクルームがあります。実際には、トランクルームには、倉庫業の登録を受けたトランクルームと、登録を受けていないトランクルームがあります。

倉庫業の登録を受けたトランクルームは、倉庫の設備基準を満たしているため、物品を安全に保管できるという利点があります。

一方、倉庫業の登録を受けていないトランクルームは、賃貸業であり、物品の寄託ではなく保管場所を貸すという事業になります。物品の保管は利用者が責任を負うところとなります。

よくあるコンテナを設置しただけのトランクルームでは、倉庫業の登録は受けられないため自動的に賃貸業としてのトランクルームとなります。

事業者としてトランクルームの経営を考えている場合、どちらのトランクルームにするかは任意となりますが、倉庫業の登録を受けた場合は、事業所税の節税ができるメリットがあります。詳しくは以下のコラムをご覧ください。 なぜ営業倉庫の登録をすれば節税できるのか

☑トランクルームには倉庫業と賃貸業がある

運送業の一時保管

上記の倉庫業にあたらない事業の2.「貨物自動車運送事業の運送契約において一時保管用に供される保管庫や配送センター」にあるように、運送業において貨物を一時的に保管する際には、倉庫業の登録は必要ありません。また利用運送において、荷扱いなどで保管する場合も倉庫業の登録は必要ありません。

しかしながら、自身が運送事業者でない場合や、利用運送と実運送の関係でない運送事業者から一時保管の依頼を受けた場合は、倉庫業の登録を受ける必要があります。運送という行為を行わないため、保管がメインの行為となるためです。

運送業の一時保管だからといって、すべてのケースで倉庫業の登録が必要ないと限らないので注意が必要です。

☑運送者ではないなら倉庫業登録が必要

タイヤの保管

上記の倉庫業にあたらない事業の6.「クリーニング業のように、特定の物品の役務(洗濯や修理等)の営業を行う場合に付随してその物品を保管する行為」にあるように、修理等の役務のために物品を保管を預かる場合は、倉庫業にはあたりません。

自動車修理工場がタイヤ交換のために、お客さまからタイヤと車を預かる場合、倉庫業には該当しません。

ただし修理等の役務を依頼されていない事業者が、タイヤの保管をする場合は倉庫業に該当します。例えば、自動車修理工場やディーラーが自社の工場に置ききれないタイヤを、他の事業者に依頼した場合、依頼された事業者は倉庫業の登録を受けている必要があるでしょう。

☑修理等の役務がないなら倉庫業登録が必要

判断に迷ったら

事業によっては倉庫業にあたるか判断に迷う事業もあると思います。その場合は、国土交通省の地方局の窓口や、専門の行政書士にご相談することをおすすめいたします。

また、すでに倉庫をお持ちであるならば、とりあえず登録をするのも良い判断だと思います。実際に倉庫業の事業をしていないとも、倉庫を登録することはできます。

☑倉庫業をしていなくとも倉庫業登録はできる

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