倉庫業登録を行うためには、使用する倉庫の施設や設備が、倉庫業に適したものであることが最も重要です。
その他の要件は比較的少なく、建設業や貨物運送業のように、資本金や人員数などの基準は設けられていません。
ただし、倉庫業を営むうえで一つだけ必要な資格があります。それが、本記事で解説する「倉庫管理主任者」の資格です。この記事では「倉庫管理主任者」とは何なのか。どうやって資格を取得できるかなど、分かりやすく解説いたします。
目次
倉庫業とは
この記事をご覧になられている方の多くは、倉庫業についてある程度知識をお持ちだと思いますので、軽く説明をさえていただだきます。
倉庫業とは、倉庫業とは、倉庫で有料にて他人の物品を預かる業態のことを指します。営業倉庫とも呼ばれています。
他人の物品を預かって倉庫に保管する営業を行うためには、国土交通大臣による倉庫業者としての登録が必要です。違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられることとなります。
登録を得るためには、倉庫業法に基づき、各種類の倉庫ごとに定められた要件を満たす必要があります。たとえば多様な物品を保管することができる『1類倉庫』では、耐火性能・防水性能・防鼠措置など13の要件を満たす必要があります。
なぜ倉庫管理主任者の選任が必要か
倉庫業登録のためには、使用する倉庫の施設・設備が要件を満たしていることが必要なのは先ほど述べた通りですが、実はその倉庫以外にも要件がひとつだけあります。
それが「倉庫管理主任者」の選任です。
選任とは、ある人物を選んでその役職に就かせることを指します。つまり倉庫業登録のためには、従業員もしくは役員からひとり選び倉庫管理主任者の役職に就かせることとなります。
倉庫管理主任者に選任するためには、その会社に勤務こと以外にも以下のいずれかに当てはまることが必要です。
倉庫管理主任者の資格要件
以下の3つのうちどれかに当てはまれば倉庫管理主任者として選任できます。
①実務経験その1
倉庫管理業務に関し2年以上の指導監督的実務経験を有する。
②実務経験その2
倉庫管理業務に関し3年以上の実務経験を有する。
③講習の修了
国土交通大臣が定める「倉庫の管理に関する講習」を修了した。
実務経験その1とその2の「倉庫管理業務」とは、営業倉庫としての経験を指します。そのため、現在の会社に入る前に、倉庫業の登録を受けていた会社で、倉庫管理の実務をされていた方が当てはまります。多くの場合、③講習の修了によって倉庫管理主任者としての資格要件を取得することとなります。
資格が取得できる講習とは
では実際に、倉庫管理主任者の資格を取得できる講習とはなんでしょうか。それは「倉庫管理主任者講習」と呼ばれるものです。
倉庫管理主任者講習とは
倉庫管理主任者講習とは一般社団法人 日本倉庫協会よって主催されている講習です。以下のような特徴があります。
- 1日の受講で資格を取得可能
- その日に資格証を授与
- 全国で開催
- 受講料は14,000円(2025年現在)
- 期間限定でweb講習会もある
詳しくは一般社団法人 日本倉庫協会のページをご覧ください。
倉庫管理主任者講習はいつ受講するべきか
結論としては、倉庫業登録を考えているならば、すぐにでも受講の手続きをするべきです。それは倉庫がまだ要件を満たしているかどうか確認する前でも、もしくは使用する倉庫をまだ見つけていない段階であってもです。
当事務所では、今までいくつもの倉庫業登録の申請代理を承ってきました。倉庫の設備が整っていれば、申請書の作成は長くとも3カ月で完了します。しかしながら登録完了まで時間が掛かってしまうことが何件かありました。その理由の多くは、使用する倉庫によるものではなく、お客さまに倉庫管理主任者の資格を取得するのを待ってのことです。
先ほど項目で述べた通り、営業倉庫で実務経験のある方を雇い入れるよりも、講習を修了して倉庫管理主任者の資格を所得することが多くなります。
倉庫業登録の申請では、「倉庫管理主任者配置状況及び資格要件確認書」に倉庫管理主任者の情報を記載し、修了証の写しを添付する必要があります。
受講の手続きを早くするべき理由
この倉庫管理主任者講習は、一般社団法人 日本倉庫協会さまによって定期的に主催されております。ただ、あまり回数が多くなく、全国を回ってやられているため、近隣の会場で開催されるのを待てば1年待つ必要があったりします。そのため倉庫業登録の申請手続きを始めても、講習が修了しておらず、倉庫管理主任者の選任ができないため、申請が完了することができないこととなります。
倉庫管理主任者とは
倉庫管理主任者という名前から判断して選任されることに尻込みしてしまう方もいらっしゃるかも知れません。では、倉庫管理主任者とは具体的にどのような役職かご説明いたします。
倉庫管理主任者は以下のような業務を行うものとされています。
- 倉庫における火災の防止その他倉庫の施設の管理に関すること
- 倉庫管理業務の適正な運営の確保に関すること
- 労働災害の防止に関すること
雨漏りがないか、壁に亀裂が入ってないかなど、倉庫の施設に保全に目を配ることや、荷役業務の管理や労働災害の防止など多岐にわたりますが、あくまでも倉庫の現場管理が主となっています。
倉庫管理主任者講習の内容
すこし古くなりますが、平成30年に私が参加した倉庫管理主任者講習は以下のような内容でした。
講習では以下の4つのトピックについて、それぞれ60分間学びました。
- 倉庫業法及び関係法規
- 倉庫における火災予防
- 労働災害の防止
- 倉庫管理実務
講習中には昼食休憩と15分の小休憩が設けられていました。昼食時にはお弁当とペットボトルのお茶が提供されたため、外食する必要はありませんでした。さらに、2回目の15分休憩時には追加でペットボトル飲料が配布されました。
倉庫業登録の申請では、倉庫管理主任者はひとつの倉庫にあたり一人を選任すれば良いですが、安全で円滑な倉庫運営のためにも、倉庫管理主任者に選任される予定のない方も参加されるのをおすすめいたします。

