倉庫業のその他の変更を解説:申請・届出が必要な変更について

倉庫業その他の変更:申請と届出

倉庫業では変更が生じた際に届出が必要なものがあります。大きく、変更登録、軽微変更、その他の変更の三つに大別できます。その他の変更は、変更登録や軽微変更に比べて頻出する変更ではありませんが、その分失念してしまうことが多く注意が必要です。ただ申請や届出を怠っていると、その後に変更登録や軽微変更を行う際に、国土交通省に登録されている情報と不一致が起こり、混乱が生じてしまうことも多々あります。 その他の変更は、変更登録や軽微変更とは違い、発生事由や提出書類が多種多様です。(倉庫業のすべての変更続きの一覧はこちら

本コラムでは、変更の申請・届出が必要となる具体的なケースについて詳しく解説します。また変更以外にも申請または届出が必要な事由

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申請・届出が必要な事項とは?

以下のような変更が発生した場合は、申請・届出が必要です。

また変更以外の申請・届出については以下のような事項があります。

  • 倉荷証券の発行の許可の申請(則第10条)
  • トランクルームの認定の申請(法第25条の2)
  • 倉庫寄託約款の届出(則第5条)
  • 料金の届出(則第24条第1項)

営業の譲受による承継の届出(則第13条)

営業の譲渡譲受について運用方針では以下のように説明されています。

営業とは、倉庫業の目的に供するために結合された財産的組織体であり、動産、不動産、債権、債務等のほか営業上の秘訣、得意先等の取引関係も当然これに含まれる。営業の同一性が全体として認められる限り、1営業所に係る営業のみを譲渡譲受の対象とし又は営業の構成部分の一部例えば動産、債権等を除外して譲渡譲受の対象としても差し支えない。従って、次の場合には営業の譲渡譲受とは認められないので注意すること。
イ 事業所又は倉庫のみの譲渡譲受
ロ 倉庫業の登録を受けたという地位のみの譲渡譲受
ハ 倉庫の譲渡譲受を伴わない営業の譲渡譲受
倉庫業の本質上倉庫施設は営業の中心部分を構成するものであるから、倉庫施設を伴わない営業の譲渡譲受は認められない。
ただし、譲渡人の所有権又は賃借権を有する倉庫施設を譲受人が借用する場合は営業の同一性が全体として認められるので、営業の譲渡譲受と認められる。

簡単にいうと、倉庫施設とともに1営業所ごと他の会社から譲受し、その倉庫業について承継することができます。また倉庫施設については元の会社が所有権や賃貸権を有したままであっても、元の会社から借用するのであれば問題ないということです。ちなみに倉庫のみを譲渡譲受する場合は、違う手続きが必要となります。(詳しくはこちらのコラムをご覧ください。⇒営業倉庫の貸主・借主それぞれの手続きについて解説

倉庫のみを譲渡譲受する場合と違って、新規事業者であってもこの届出のみで既存事業者の地位と得ることができます。原則として組織体すべてを一括して承継するものですので、従業員についても譲受することとなり、倉庫管理主任者もそのまま引き継がれます。

手続きでは、営業所及び倉庫の名称の新旧対照表、登記簿の謄本、役員が欠格事由に該当しない旨の宣誓書を添付します。約款や料金表に変更がある場合は、同時にそれらの変更の届出書を提出します。

合併又は分割による承継の届出(則第14条)

倉庫業者である会社が合併または分割をする場合は、届出をすることで倉庫業の登録を承継することができます。

ただし吸収合併や新設合併をする際に、どちらかの会社が発券倉庫業者である場合は、届出ではなく認可の申請が必要となるので注意してください。発券倉庫業者の合併又は分割の認可の申請については別の項目に記しています。

届出にあたっては、合併契約書または分割契約書(新設の場合は分割計画書)を添付します。また営業所及び倉庫の名称の新旧対照表、登記簿の謄本、役員が欠格事由に該当しない旨の宣誓書も添付して提出します。

発券倉庫業者の営業の譲渡及び譲受の認可の申請(則第15条)

発券倉庫業者においても非発券倉庫業者と同じく営業の譲渡譲受をすることができます。ただし発券倉庫業者の場合は、届出はなく認可の申請になるので審査があります。審査期間は、都道府県をまたぐ広域に倉庫を所持している場合は、国土交通大臣権限による認可になりますので、審査期間は3か月ほど、それ以外は2カ月ほどになります。

申請にあたっては、以下の資料を添付します。

  • 譲渡譲受契約書
  • 営業所及び倉庫の名称の新旧対照表
  • 譲渡譲受をしようとする倉庫業の最近の営業年度の損益計算書
  • 倉荷証券の様式
  • 倉荷証券発行原簿の様式を記載した書類
  • 発券業務の管理組織及び倉荷証券の取扱手続に関する説明書

現に倉庫業を営んでいない譲受人が申請する場合の添付書類には以下のものがあります。

  • 集荷見積書
  • 見積損益計算書
  • 所要資金及びその調達方法に関する説明書
  • 登記簿の謄本
  • 役員が欠格事由に該当しない旨の宣誓書
  • 最近の営業年度の貸借対照表、損益計算書及び損益処分
  • 附帯業務又は兼営事業があるときは、その種類及び概要を記載した書類

現に倉庫業を営んでいる譲受人が申請する場合の添付書類には以下のものがあります。

  • 集荷実績書及び集荷見積書
  • 見積損益計算書
  • 譲受をしようとする倉庫業についての所要資金及びその調達方法に関する説明書
  • 最近の営業年度の貸借対照表、損益計算書及び損益処分表

なお発券倉庫業者同士で譲渡譲受が行われる場合や、発券業務自体を非発券倉庫業者に譲渡譲受しない場合は、以下の添付書類となります。

  • 譲渡譲受契約書
  • 営業所及び倉庫の名称の新旧対照表
  • 登記簿の謄本
  • 役員が欠格事由に該当しない旨の宣誓書

発券倉庫業者の合併又は分割の認可の申請(則第16条)

発券倉庫業者の会社が合併または分割する場合は、認可の申請をする必要があります。認可は、届出と違い審査期間が設けられています。都道府県をまたぐ広域に倉庫を所持している場合は、国土交通大臣権限による認可になりますので、審査期間は3か月ほど、それ以外は2カ月ほどになります。

申請にあたっては、以下の資料を添付します。

  • 合併契約書または分割契約書(新設分割の場合にあっては、分割計画書)
  • 合併比率説明書又は分割比率説明書
  • 営業所及び倉庫の名称の新旧対照表
  • 集荷見積書
  • 見積損益計算書
  • 定款
  • 役員が欠格事由に該当しない旨の宣誓書
  • 倉荷証券の様式
  • 倉荷証券発行原簿の様式を記載した書類
  • 発券業務の管理組織及び倉荷証券の取扱手続に関する説明書
  • 附帯業務又は兼営事業があるときは、その種類及び概要を記載した書類

相続による承継の届出(則第17条)

個人の名義で倉庫業を行っている場合は、相続が発生した場合にその地位を承継をすることができます。届出書は、相続人が被相続人の死亡を知った日から 30 日以内に提出します。(※死亡日かではありません)

倉庫業の営業をすべて一括で承継する必要はなく、範囲を一部に指定して承継することもできます。「営業の一部(○○倉庫株式会社、○○営業所(事務室及び荷役機械を除く。)、○○営業所)」などと記載します。

届出では、戸籍抄本、相続人が欠格事由に該当しない旨の宣誓書を添付して提出します。

相続による発券倉庫業者の地位の承継の認可の申請(則第18条)

相続により発券倉庫業者の地位の承継する場合は、届出ではなく認可の申請となります。申請書は、被相続人の死亡後 60 日以内に提出します。(※死亡を知った日ではありません。)都道府県をまたぐ広域に倉庫を所持している場合は、国土交通大臣権限による認可になりますので、審査期間は3か月ほど、それ以外は2カ月ほどになります。

倉庫業の営業をすべて一括で承継する必要はなく、範囲を一部に指定して承継することもできます。「営業の一部(○○倉庫株式会社、○○営業所(事務室及び荷役機械を除く。)、○○営業所)」などと記載します。

申請には以下の資料を添付します。

  • 集荷見積書
  • 見積損益計算書
  • 資産調書
  • 倉荷証券の様式
  • 倉荷証券発行原簿の様式を記載した書類
  • 発券業務の管理組織及び倉荷証券の取扱手続に関する説明書

営業の廃止の届出(則第19条第1項)

営業の全部または一部を廃止する場合は届出をします。営業の全部とは倉庫業者としての営業すべてを指し、営業の一部とは、特定の営業所を管理の倉庫ともに廃止することを指します。

倉庫のみを廃止する場合は、この営業の廃止の届出ではなく、軽微変更届の「倉庫の用途の廃止」となりますので注意してください。

添付書類は特にありません。

倉荷証券発券業務の廃止の届出(則第19条第2項)

発券倉庫業者であることを廃止する場合は届出をすることができます。倉荷証券発券業務を廃止した日から 30 日以内に提出します。

未回収の倉荷証券が流通している場合は、それらどうのように処置するかを付記する必要があります。添付書類として、倉荷証券の発行回収高及び流通高報告書を提出します。

認定トランクルームの変更の届出(則第22条第1項)

すでに認定トランクルームとして営業してるときに以下の変更が発生した場合、届出をする必要があります。

  1. 認定トランクルームの性能を発揮させるための設備の変更
  2. 認定トランクルームの利用者相談窓口に係る事項の変更
  3. その他認定申請書記載事項の変更
  4. トランクルーム寄託約款の変更

1.認定トランクルームの性能を発揮させるための設備の変更

具体的に以下のように設備が変更された場合に届出するように規定されています。

  • 定温性能を発揮させるための空調装置の変更、認定トランクルームの規模の拡大(複数区画に分割された1棟の倉庫の一部を認定トランクルームとして使用している場合において、認定トランクルーム部分を他区画に拡大する場合又は認定トランクルームを増築する場合をいう。)その他〔22〕3-3イの認定トランクルームの性能を発揮させるための設備を変更する場合(認定トランクルームの性能に変更を加えるものを除く。)
  • 当該認定トランクルームに設備を追加し、認定トランクルームに新たな性能を付与する場合
  • 当該認定トランクルームの設備を撤去する等により、認定トランクルームの性能を削る場合

届出においては、トランクルームの性能を発揮させるための設備に関する書類(則第 20 条第2項第1号)を添付します。具体的には、トランクルームの性能を発揮させるために必要な設備(定温性能を発揮するための空調設備)の種類、数及び機能を一覧にした書類、またトランクルーム内における当該設備の配置図を指します。

2.認定トランクルームの利用者相談窓口に係る事項の変更

認定申請書に記載されている以下の事項を変更する場合に届出するように規定されています。

  • 組織名
  • 当該組織の置かれている事業場の名称及び所在地
  • 連絡先
  • 業務内容
  • 営業日及び営業時間

添付書類は特にありません。

3.その他認定申請書記載事項の変更

事項を変更する場合に届出するように規定されています。

  • 当該認定トランクルームの名称及び所在地
  • 保管する物品の種類
  • 当該認定トランクルームを担当する倉庫管理主任者の氏名

担当する倉庫管理主任者の氏名を変更する場合は、倉庫管理主任者の資格を記載した書類(則第2条第2項第1号ヘ)を添付します。それ以外の場合は添付書類は特にありません。

4.トランクルーム寄託約款の変更

トランクルーム寄託約款を変更する場合は、申請ではなく届出だけで済みます。

認定トランクルーム廃止の届出(則第22条第3項)

認定トランクルームの全部または一部を廃止する場合は届出をする必要があります。一部とは、認定トランクルームの一部分を譲渡などをして規模を縮小することを指します。

認定トランクルームの廃止後 30 日以内に提出します。

変更以外の申請・届出

  • 倉荷証券の発行の許可の申請(則第10条)
  • トランクルームの認定の申請(法第25条の2)
  • 倉庫寄託約款の届出(則第5条)
  • 料金の届出(則第24条第1項)

倉荷証券の発行の許可の申請(則第10条)

倉荷証券とは、倉庫業者が貨物を預かったことを証明し、預けた人や指定された人に対して貨物の引き渡しを約束する有価証券です。これが発行されると、貨物の引き渡しを受けるためには証券の提示・交付が必要になります。法律上、特定の方式が求められる証券であり、譲渡や処分の効力を持つ点が特徴です。倉荷証券を発行できる倉庫業者のことを、発券倉庫業者と言いますが、非発券倉庫業者と比べて経営面について厳しく審査されることになります。

許可の申請は、届出と違い審査期間が設けられています。都道府県をまたぐ広域に倉庫を所持している場合は、国土交通大臣権限による許可になりますので、審査期間は3か月ほど、それ以外は2カ月ほどになります。

申請には以下の資料を添付します。

  • 集荷実績書及び集荷見積書
  • 見積損益計算書
  • 最近の営業年度の貸借対照表、損益計算書及び損益処分表
  • 倉荷証券の様式
  • 倉荷証券発行原簿の様式を記載した書類
  • 発券業務の管理組織及び倉荷証券の取扱手続に関する説明書
  • 附帯業務又は兼営事業があるときは、その種類及び概要を記載した書類
  • 倉庫寄託約款

トランクルームの認定の申請(法第25条の2)

すでに営業している標準のトランクルームを、国土交通大臣の権限により消費者が安心して物品を預けることができるトランクルームとして認定してもらうことができます。標準のトランクルームに加えて、定温性能(空調設備)、定湿性能(除湿機、加湿機)、防虫性能(空調装置、薫蒸装置)などの性能を発揮させるための設備を設置する必要があります。認定はトランクルーム1棟ごとに行います。

認定の申請は、届出と違い審査期間が設けられています。認定は1棟ごとに行われますの審査期間は2カ月ほどになります。

申請には以下の資料を添付します。

  • トランクルームの図面
  • トランクルームの性能を発揮させるための設備に関する書類
  • 倉庫管理主任者の資格に関する書類

認定がなされたら「優良トランクルームマーク」を表示することができます。

倉庫寄託約款の届出(則第5条)

倉庫寄託約款の変更を行う場合は届出をする必要があります。届出書とともに30 日前までに提出します。

料金の届出(則第24条第1項)

料金の変更を行う場合はは届出をする必要があります。届出書とともに30 日以内に提出します。