営業倉庫の貸主・借主それぞれの手続きについて解説

営業倉庫の賃貸 貸主と借主の手続き

すでに登録されている営業倉庫を賃貸し、倉庫業を行うケースは意外と多く見られます。この方法には、登録済み倉庫を使用することで、倉庫業を安心してスタートできるというメリットがあります。登録を受けている倉庫は倉庫業を行うための適格性が認められているからです。 ただし、同一の場所(倉庫面積)で重複して倉庫業の登録を行うことはできません。そのため、貸主と借主の双方が適切に国土交通省へ申請手続きを行うことが重要です。
注意
本コラムでは分かりやすく「貸主」と「借主」という呼称を使用していますが、これは「これまで倉庫を使用していた倉庫業者」と「これから使用する倉庫業者」として読み替えることもできます。なお、両者の関係は必ずしも賃貸借契約に基づくものとは限りません。
本コラムでは、ケースごとに異なる申請方法や適切な手続きを分かりやすく解説します。特に、変更登録が必要となる具体的なケースや申請手続きの流れについて詳しく説明しています。不明点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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申請には4つのケースがあります

まずは下のフローチャートをご覧いただき、ご自身がどのケースに当て嵌まるか診断してください。倉庫の全体を貸すか、倉庫の一部を貸すか、また借主が新規か既存かで、するべき申請は違ってきます。(新規とは非倉庫業者、既存とは倉庫業者という意味です。)営業倉庫を貸す借りる時の手続きは、変更登録か軽微変更か

借主が新規事業者か既存事業者かで、なぜ申請が違うのか

上のフローチャートをご覧いただくと分かるように、借主が倉庫業の新規事業者または既存事業者かで、必要な申請が異なります。これは、倉庫業の新規登録申請には「倉庫の登録」と「事業者の登録」という2つの目的があるためです。新規登録申請を済ませた事業者は、すでに事業者として登録されていることになります。そのため、新規登録後に新たに倉庫を設置する場合は、既存の倉庫業事業者としての登録情報を変更する必要があります。 これを踏まえると、①および③のケースでは借主が新規事業者であるため、借主が行うべき申請は新規登録申請となります。一方、貸主はすでに登録済みの事業者であるため、変更登録やその他の届出を行うことが求められます。

①倉庫全体を貸して、借主は新規

貸主は用途廃止届または営業廃止届

倉庫全体を貸す場合は、貸主である倉庫業者は用途廃止届または営業廃止届を提出することになります。 貸主が他に営業倉庫を所有している場合は、用途廃止届で貸出す倉庫のみを廃止する申請をします。用途廃止届は軽微変更届出の一種です。 また登録している倉庫が貸し出す倉庫のみであり、倉庫業自体をやめるつもりであれば営業廃止届を提出してください。ただ登録している倉庫が貸し出す倉庫のみだが、他の倉庫で倉庫業を続ける場合は、営業廃止届ではなく用途廃止届になる可能性があります。タイミングによって異なりますので、運輸局に相談するようにしましょう。 用途廃止届、営業廃止届ともに事実の発生後30日以内に提出する決まりとなっています。借主が新規登録申請する際に、まだ届出を提出していない場合、審査に支障をきたす可能性がありますので、前もって提出するようにしましょう。

借主は新規登録申請

借主が倉庫業の登録を今まで受けたことがない新規事業者である場合は、新規登録申請をすることとなります。提出書類は、貸主が倉庫業登録の際に提出した書類とほぼ同じとなりますので、書類を借りられるのであれば積極的に借りるようにしましょう。紛失している場合は、 情報公開における開示請求で国土交通省に保管されている書類を取得して、申請することも視野に入れてください。また新規登録申請は、国土交通省の審査だけでも2カ月かかり、開始までに時間を要する申請ですので注意が必要です。登録免許税は9万円かかります。

②倉庫全体を貸して、借主は既存

貸主は用途廃止届または営業廃止届

倉庫全体を貸す場合は、貸主である倉庫業者は用途廃止届または営業廃止届を提出することになります。 貸主が他に営業倉庫を所有している場合は、用途廃止届で貸出す倉庫のみを廃止する申請をします。用途廃止届は軽微変更届出の一種です。 また登録している倉庫が貸し出す倉庫のみであり、倉庫業自体をやめるつもりであれば営業廃止届を提出してください。ただ登録している倉庫が貸し出す倉庫のみだが、他の倉庫で倉庫業を続ける場合は、営業廃止届ではなく用途廃止届になる可能性があります。タイミングによって異なりますので、運輸局に相談するようにしましょう。 用途廃止届、営業廃止届ともに事実の発生後30日以内に提出する決まりとなっています。借主が新規登録申請する際に、まだ届出を提出していない場合、審査に支障をきたす可能性がありますので、前もって提出するようにしましょう。

借主は軽微変更届

借主が既存事業者である場合は、軽微変更届の提出で済みます。軽微変更届の一種である「継続使用届」と呼ばれるものです。倉庫業者が現に営業に使用している倉庫を現状のまま引き続き他の倉庫業者がその営業に使用することを指します。前提条件は以下となります。
  1. 倉庫業者から倉庫業者へ営業倉庫として引き継ぐこと
  2. 登録時から倉庫の主要構造に変更がないこと
  3. 登録を受けた面積を全て引き継ぐこと
上記の前提条件のため、倉庫の一部を借りる場合は、軽微変更届ではありません。

③倉庫一部を貸して、借主は新規

貸主は変更登録申請(減坪)

新規事業者の借主に、倉庫の一部を貸す場合は、貸主である倉庫業者は減坪の変更登録申請をする必要があります。変更登録申請は、新規登録申請ほどではないですが倉庫の建築図面などの必要書類も多く、審査期間も設定されています。通常ですと、借主の申請と同時に申請書を提出します。登録免許税はありません。行政書士に依頼する場合は、借主と同じ行政書士に依頼するのが安全です。 また基本的なことですが、貸主と借主の倉庫面積は壁や錠あり扉で区切られている必要があるので注意が必要です。

借主は新規登録申請

借主が倉庫業の登録を今まで受けたことがない新規事業者である場合は、新規登録申請をすることとなります。提出書類は、貸主が倉庫業登録の際に提出した書類とほぼ同じとなりますので、書類を借りられるのであれば積極的に借りるようにしましょう。紛失している場合は、 情報公開における開示請求で国土交通省に保管されている書類を取得して、申請することも視野に入れてください。また新規登録申請は、国土交通省の審査だけでも2カ月かかり、開始までに時間を要する申請ですので注意が必要です。

④倉庫一部を貸して、借主は既存

貸主は変更登録申請(減坪)

新規事業者の借主に、倉庫の一部を貸す場合は、貸主である倉庫業者は減坪の変更登録申請をする必要があります。変更登録申請は、新規登録申請ほどではないですが倉庫の建築図面などの必要書類も多く、審査期間も設定されています。通常ですと、借主の申請と同時に申請書を提出します。登録免許税はありません。行政書士に依頼する場合は、借主と同じ行政書士に依頼するのが安全です。 また基本的なことですが、貸主と借主の倉庫面積は壁や錠あり扉で区切られている必要があるので注意が必要です。

借主は変更登録申請(新設)

借主が既存事業者である場合は、新設の変更登録申請となります。必要書類や手続きとしては、新規登録申請とあまり相違がないので、それなりの準備期間が必要となりますので、スケジュールをしっかりと確認しながら申請しましょう。また審査期間は新規登録申請と同じ2カ月間で、登録免許税は3万円かかります。 必要書類は新規登録申請とほぼ同じですので、貸主がその倉庫を登録した際の書類を借りるようにしましょう。紛失している場合は、 情報公開における開示請求で国土交通省に保管されている書類を取得して、申請することも視野に入れてください。