【寄託】商法603~610条を超噛み砕いて解説【倉庫営業】

引き続き「倉庫営業」の項目になります。

商法603条

原文
預証券及ヒ質入証券ハ其記名式ナルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡シ又ハ之ヲ質入スルコトヲ得但証券ニ裏書ヲ禁スル旨ヲ記載シタルトキハ此限ニ在ラス

○2 預証券ノ所持人カ未タ質入ヲ為ササル間ハ預証券及ヒ質入証券ハ各別ニ之ヲ譲渡スコトヲ得ス

現代風

預証券及び質入証券は、其記名式なるときと雖も裏書に依りて之を譲渡し、又は之を質入することを得。但、証券に裏書を禁する旨を記載したるときは此限に在らず

○2 預証券の所持人が未だ質入を為さざる間は、預証券及び質入証券は各別に之を譲渡すことを得ず

噛み砕き

預証券と質入証券は、所有者名を記入する欄がある場合は、譲渡する際に証券の裏に次の所有者名を記入しなければならない1

○2 預証券を持っている人は、預けている物をまだ質入りしていない場合は、預証券と質入証券を別々に譲渡してはいけない


商法604条

原文

第五百七十三条及ヒ第五百七十五条ノ規定ハ預証券及ヒ質入証券ニ之ヲ準用ス

現代風
第573条(運送品に関する処分)及び第575条(貨物引換証の引渡し)の規定は、預証券及び質入証券に之を準用す

噛み砕き

 

商法第573条の運送品に関する処分の規定

商法605条

原文
預証券又ハ質入証券カ滅失シタルトキハ其所持人ハ相当ノ担保ヲ供シテ更ニ其証券ノ交付ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ倉庫営業者ハ其旨ヲ帳簿ニ記載スルコトヲ要ス

現代風
預証券又は質入証券が滅失したるときは、其所持人は相当の担保を供して、更に其証券の交付を請求することを得。此場合に於ては倉庫営業者は、其旨を帳簿に記載することを要す

噛み砕き

預証券または質入証券を紛失してしまった場合は、それなりの担保を設定して、証券の再発行を請求する必要がある。この場合において倉庫営業者は、このことについて帳簿に記載する必要がある。


商法606条

原文
質入証券ニ第一ノ質入裏書ヲ為スニハ債権額、其利息及ヒ弁済期ヲ記載スルコトヲ要ス

○2 第一ノ質権者カ前項ニ掲ケタル事項ヲ預証券ニ記載シテ之ニ署名スルニ非サレハ質権ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス

現代風

質入証券に第一の質入裏書を為すには、債権額、其利息及び弁済期を記載することを要す

○2 第一の質権者が前項に掲けたる事項を預証券に記載して之に署名するに非ざれば、質権を以て第三者に対抗することを得ず

噛み砕き

質入証券に初めて質入りの裏書をする場合は、債権の額、その利息、返済の期限を記載しなければならない

○2 はじめての質権者が第1項の事項を預証券に記載したが署名をしていなかった場合は、質権について第三者に主張したとは言えない


商法607条

原文
預証券ノ所持人ハ寄託物ヲ以テ預証券ニ記載シタル債権額及ヒ利息ヲ弁済スル義務ヲ負フ

現代風

預証券の所持人は、寄託物を以て預証券に記載したる債権額及び利息を弁済する義務を負ふ

噛み砕き

預証券を持っている者は、預けた物を受け取る際には記載されている債権の金額とその利息を支払わなければならない。


商法608条

原文

質入証券所持人ノ債権ノ弁済ハ倉庫営業者ノ営業所ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス

現代風

質入証券所持人の債権の弁済は、倉庫営業者の営業所に於て、之を為すことを要す

噛み砕き

質入証券を持っている者が債権を支払う場合は、倉庫営業者の営業所でしなければならない。


商法609条

原文

質入証券ノ所持人カ弁済期ニ至リ支払ヲ受ケサルトキハ手形ニ関スル規定ニ従ヒテ拒絶証書ヲ作ラシムルコトヲ要ス

現代風

質入証券の所持人が弁済期に至り支払を受けさるときは、手形に関する規定に従いて拒絶証書を作らしむることを要す

噛み砕き


商法610条

原文

質入証券ノ所持人ハ拒絶証書作成ノ日ヨリ一週間ヲ経過シタル後ニ非サレハ寄託物ノ競売ヲ請求スルコトヲ得ス

現代風

質入証券の所持人は、拒絶証書作成の日より一週間を経過したる後に非ざれば、寄託物の競売を請求することを得ず

噛み砕き

拒絶証書を作成してから一週間経つまでは、預けた物を競売にかけてはいけない。


  1. いわゆる裏書(うらがき)と呼ばれるものです
  2. 貨物の引換証を持っていない人が貨物の処分をしてはいけないという規定です
  3. 貨物の引換証が譲渡されたら、事実上は貨物が譲渡されたことと同じであるという規定です
  4. 返済を拒絶された旨を証明する公証人に作成してもらう書面です