倉庫業を営む上で遵守する必要がある倉庫業法ですが、違反した場合の罰則はどのようになっているでしょうか。倉庫業法の罰則の欄を見てみるとあちらこちらに飛んで分かりにくいと思いますので、整理して掲載していきたいと思います。
『倉庫業法』における罰則一覧
条 | 項 | 概要 | 罰則 |
第28条 | 1 | 国土交通大臣の登録を受けずに倉庫業を営んだ | 一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する |
2 | 倉庫業者は他人の倉庫業のために名義を貸した | ||
3 | 名義を借りて倉庫業を行った | ||
第28条2 | 営業停止命令に違反した | 六月以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する | |
第29条 | 1 | 変更登録を受けずに変更をした | 五十万円以下の罰金に処する |
2 | 倉庫寄託約款の変更命令に違反した | ||
倉庫の修理・改造し、又は倉庫の種類を変更する命令に違反した | |||
運営改善命令に違反した | |||
営業倉庫であると誤認させないようにする命令に違反した場合 | |||
3 | 倉庫管理主任者を選任しなかった | ||
4 | 許可を受けないで倉庫証券を発行した | ||
5 | 倉庫証券の発行の停止の命令に違反した | ||
第30条 | 1 | 届出をしないで寄託の引受けをした | 三十万円以下の罰金に処する |
2 | 基準に適合していない認定トランクルーム業者に対する是正命令に違反した | ||
3 | 認定トランクルーム業者があらかじめ変更の届出をしなかった | ||
4 | 認定トランクルーム若しくは優良トランクルームという名称又はこれらと紛らわしい名称を用いた | ||
5 | 報告をせず、又は虚偽の報告をした | ||
6 | 検査を拒み、妨げ、又は忌避した | ||
第31条 | 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して、第二十八条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する | ||
第32条 | 1 | 倉庫の用途の廃止その他の国土交通省令で定める軽微な変更について三十日以内に届出なかった | 五十万円以下の過料に処する |
譲受人が承継の日から三十日以内に承継した旨を届出なかった | |||
相続人が承継の日から三十日以内に承継した旨を届出なかった | |||
営業廃止について三十日以内に届出なかった | |||
発券倉庫業者が業務の廃止について三十日以内に届出なかった | |||
認定トランクルーム業者が全部又は一部を廃止したときに三十日以内にその旨について届出なかった | |||
2 | 掲示義務を怠った |
第28条の罰則について
1.国土交通大臣の登録を受けずに倉庫業を営んだ
「倉庫業」とは、報酬をもらって寄託を受けた物品の倉庫における保管を行うことを指します。つまりこの条文では無登録業者への罰則を記しています。
2.倉庫業者は他人の倉庫業のために名義を貸してはならない
いわゆる「名義貸し」の禁止にあたります。
3.名義を借りて倉庫業を行った
名義貸しに類するものですが、「事業の貸渡し」を明示的に禁止しています。
第28条2項の罰則について
営業停止命令に違反した
↓の第二十一条第一項に該当した場合は、営業停止命令か登録の取り消しがされます。そのうち営業停止命令を無視して営業を続けた場合に、↑の懲役か罰金または併科という処分になります。
国土交通大臣は、倉庫業者が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以内において期間を定めて営業の停止を命じ、又は第三条の登録を取り消すことができる。
一 この法律、この法律に基づく処分又は登録、許可若しくは認可に付した条件に違反したとき。
二 第六条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当することとなつたとき。
三 営業に関し不正な行為をしたとき
国土交通大臣は、第四条の規定による登録の申請が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を拒否しなければならない
一 申請者が一年以上の懲役又は禁錮この刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者であるとき。
二 申請者が第二十一条の規定による登録の取消しを受け、その取消しの日から二年を経過しない者であるとき。
三 申請者が法人である場合において、その役員が前二号のいずれかに該当する者であるとき。
第29条の罰則について
1.変更登録を受けずに変更をした
前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 倉庫の所在地
三 国土交通省令で定める倉庫の種類(トランクルームを含み、以下「倉庫の種類」という。)
四 倉庫の施設及び設備
五 保管する物品の種類
六 その他国土交通省令で定める事項
重要事項を変更しようとする場合はあらかじめ国土交通大臣に変更についての申請書を提出し、その変更についての登録を受ける必要あります。その変更登録を受けずに変更をすると50万円以下の罰金になります。
2.命令に違反した
国土交通大臣は倉庫業者に対して様々な命令をすることができますが、その命令に違反すると罰せられます。
倉庫寄託約款の変更命令に違反した
国土交通大臣は、前項の倉庫寄託約款が寄託者又は倉庫証券の所持人の正当な利益を害するおそれがあると認めるときは、当該倉庫業者に対し、期限を定めてその倉庫寄託約款を変更すべきことを命ずることができる。
倉庫の修理・改造し、又は倉庫の種類を変更する命令に違反した
国土交通大臣は、営業に使用する倉庫の施設又は設備が第六条第一項第四号の基準に適合していないと認めるときは、当該倉庫業者に対し、期限を定めて当該倉庫を修理し、若しくは改造し、又は倉庫の種類を変更すべきことを命ずることができる。
倉庫の施設又は設備が倉庫の種類に応じて国土交通省令で定める基準に適合しないとき。
運営改善命令に違反した
国土交通大臣は、倉庫業者の事業について倉庫の利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実があると認めるときは、当該倉庫業者に対し、第八条第二項及び第十二条第二項に規定するもののほか、料金の変更その他の事業の運営を改善するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
国土交通大臣は、前項の倉庫寄託約款が寄託者又は倉庫証券の所持人の正当な利益を害するおそれがあると認めるときは、当該倉庫業者に対し、期限を定めてその倉庫寄託約款を変更すべきことを命ずることができる。
国土交通大臣は、営業に使用する倉庫の施設又は設備が第六条第一項第四号の基準に適合していないと認めるときは、当該倉庫業者に対し、期限を定めて当該倉庫を修理し、若しくは改造し、又は倉庫の種類を変更すべきことを命ずることができる。
倉庫の施設又は設備が倉庫の種類に応じて国土交通省令で定める基準に適合しないとき。
営業倉庫であると誤認させないようにする命令に違反した場合
国土交通大臣は、倉庫業を営む者以外の者に対し、その行う営業が寄託を受けた物品の倉庫における保管を行うものであると人を誤認させないようにするための措置をとるべきことを命ずることができる。
3.倉庫管理主任者を選任しなかった
倉庫業者は、倉庫ごとに、管理すべき倉庫の規模その他の国土交通省令で定める基準に従つて、倉庫の適切な管理に必要な知識及び能力を有するものとして国土交通省令で定める要件を備える倉庫管理主任者を選任して、倉庫における火災の防止その他の国土交通省令で定める倉庫の管理に関する業務を行わせなければならない。
倉庫管理主任者は必ず選任する必要があります。
4.許可を受けないで倉庫証券を発行した
倉庫証券は、国土交通大臣の許可を受けた倉庫業者でなければ、発行してはいけません。
5.倉庫証券の発行の停止の命令に違反した
国土交通大臣は、発券倉庫業者が第十三条第三項第二号に該当することとなつたとき、又は前条第一号若しくは第三号に該当するときは、六月以内において期間を定めて倉庫証券の発行の停止を命じ、又は第十三条第一項の許可を取り消すことができる。
倉庫証券は、国土交通大臣の許可を受けた倉庫業者でなければ、発行してはならない。
3 国土交通大臣は、第一項の許可を受けようとする者が次の各号の一に該当するときは、その許可をしてはならない。
二 法人である場合において、その役員が前号に該当する者であるとき。
→前号 第一項の許可の取消を受け、その取消の日から二年を経過しない者であるとき。
倉庫証券の許可の取り消しを受けたことがある法人が取消の日から二年を経過しない者であるときは、倉庫証券の発行停止命令または倉庫証券の許可の取り消しをされます。
国土交通大臣は、倉庫業者が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以内において期間を定めて営業の停止を命じ、又は第三条の登録を取り消すことができる。
一 この法律、この法律に基づく処分又は登録、許可若しくは認可に付した条件に違反したとき。
三 営業に関し不正な行為をしたとき。
第三条 倉庫業を営もうとする者は、国土交通大臣の行う登録を受けなければならない。
営業停止命令または登録の取消に違反したものは、倉庫証券の発行停止命令または倉庫証券の許可の取り消しをされます。
第30条の罰則について
1.届出をしないで寄託の引受けをした
倉庫寄託約款を届け出をしないで報酬をえて倉庫業の営業をしてはいけません。
2.届出をしないで寄託の引受けをした
国土交通大臣は基準に適合しない認定トランクルームには改造・その他是正のために必要な措置をとるべきことを命ずることができますが、その命令に違反した場合は罰せられます。
3.認定トランクルーム業者があらかじめ変更の届出をしなかった
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 トランクルームの名称及び所在地
三 トランクルームの施設及び設備
四 保管する物品の種類
五 第十一条の規定により選任された倉庫管理主任者の氏名
六 その他国土交通省令で定める事項
重要事項を変更しよとする時はあらかじめ国土交通大臣に届け出する必要があります。
4.認定トランクルーム若しくは優良トランクルームという名称又はこれらと紛らわしい名称を用いた
認定トランクルームまたは優良トランクルームの名称は登録を受けた者しか使ってはいけません。
5.報告をせず、又は虚偽の報告をした
6.検査を拒み、妨げ、又は忌避した
第31条の罰則について
今までご紹介してきた第28条から第30条までの罰則は、「法人」「人」のそれぞれ代理人、使用人、その他の従業員が違反行為をした場合は行為者だけでなく「法人」「人」も罰金刑が科されます。懲役刑は科されません。
第32条の罰則について
過料は秩序罰であり、罰金と違い行政刑罰ではありません。罰金等の行政刑罰は刑事訴訟法にもとづいて刑事裁判によって科されますが、秩序罰である過料は地方裁判所の裁判を経て検察官の命令をもって執行されます。
1.届け出をせず、または虚偽の届け出をした
届け出の義務がある事項の届け出を怠るか、虚偽の届け出をすると罰せられます。
倉庫の用途の廃止その他の国土交通省令で定める軽微な変更について三十日以内に届出なかった
譲受人が承継の日から三十日以内に承継した旨を届出なかった
2 倉庫業者(発券倉庫業者を除く。)たる法人の合併又は分割(当該倉庫業の全部又は一部を承継させるものに限る。)があつたときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該倉庫業の全部若しくは一部を承継した法人は、倉庫業者の地位を承継する。
相続人が承継の日から三十日以内に承継した旨を届出なかった
営業廃止について三十日以内に届出なかった
発券倉庫業者が業務の廃止について三十日以内に届出なかった
認定トランクルーム業者が全部又は一部を廃止したときに三十日以内にその旨について届出なかった
2.掲示義務を怠った
料金等を、おもに現場業務を行う場所に掲示する義務があります。