【倉庫業】災害防止上有効な構造又は設備の審査基準について分かりやすく解説します【営業倉庫】

シリーズ第十段では1類倉庫の災害防止上有効な構造または設備の審査基準について解説します。

これは倉庫本体ではなく隣接する施設に種類によって倉庫の構造・設備を整える必要があることを表しています。

このページの読み方

上部の枠内に法令の条文を示し、その下に解説が書かれています。

前提条件

倉庫業法施行規則第三条の四第2項より

危険物等を取り扱う施設その他の国土交通大臣の定める施設に近接する倉庫にあつては、国土交通大臣の定める災害防止上有効な構造又は設備を有すること。

同じ敷地内において特定の施設に近接する倉庫では、災害防止上有効な構造または設備を有している必要があります。

国土交通大臣の定める施設

倉庫業法施行規則等運用方針において以下のように定められています。

2-8 災害防止上有効な構造又は設備(則第3条の4第2項第7号)

イ国土交通大臣の定める施設(告第8条第1項)

(1) 「国土交通大臣の定める施設」とは、以下のものを指す。

運用方針では『国土交通大臣の定める施設』の方のみが述べられているように見えますが、実際には『危険物等を取り扱う施設』はこの『国土交通大臣の定める施設』に含まれています。


居室を有する施設

a 建築基準法第2条第4号の居室を有する施設であって倉庫の外壁から3m未満の範囲に存在するもの(告第8条第1項第1号)。「居室を有する施設」とは、事務所、労務員詰所、商店、住宅等居住、執務等の用に継続的に使用される施設を指す。

建築基準法第2条第4号において居室は以下のように定められています。

居室 居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう

一般住宅における居間のようなものだけではなく、工場の作業室、事務所、研究所なども居室とされていますので注意が必要です。逆に一般的に居室とされているのは、事務所がない倉庫や作業場のない車庫などです。


参考
居室とは?定義と具体例を確認してみよう。不動産実務TIPS


業務上火気を使用する施設

業務上火気を使用する施設であって倉庫の外壁から5m未満の範囲に存在するもの(告第8条第1項第2号)。「業務上火気を使用する施設」とは、工場、ごみ焼却場、浴場等何らかの事業を営んでおり、その用に供するため火気を継続的に使用する施設を指す。

本文中では触れられていませんが、業務上火気を使用する施設は「対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)」1に基づき各市町村が火災予防条例を定めて規制しています。

対象設備は火災予防条例により各市町村に届出が必要ですので、業務上火気を使用する施設かどうかは自明だと思われます。


危険物の製造所等

c 消防法第2条第7項に定める危険物の製造所、貯蔵所及び取扱所、高圧ガス保安法第2条に定める高圧ガスの製造所(冷凍のためのものを除く。)、販売所及び貯蔵所又は火薬類取締法(昭和25年法律第149号)第2条に定める火薬類の製造所及び貯蔵所であって倉庫の外壁から10m未満の範囲に存在するもの(告第8条第1項第3号)

消防法第2条第7項において以下のように定められています。

危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。

危険物の製造所等に関しても消防法11条により所轄消防署に届出が必要ですので、該当施設かわかると思います。


適用除外

(2) 倉庫に近接する施設が(1)に挙げたものに該当する場合であっても、以下に該当する場合にあっては、本号の適用対象から除かれる(告第8条第1項ただし書き)。

居室を有する施設、業務上火気を使用する施設、危険物の製造所等に該当する場合でも、後述の条件にあてはまる場合は災害防止上有効な構造または設備を有している必要がありません。

災害防止の目的を達することができる自立した工作物

a 倉庫と倉庫に近接する施設との間に災害防止の目的を達することができる自立した工作物が設けられている場合

「災害防止の目的を達することができる自立した工作物」とは、倉庫と施設との間に設けられた防爆壁等の工作物で、当該施設で発生した火災等の事故の際に倉庫に被害が及ぶのを防ぐことができるように鉄筋コンクリート造等の堅固な構造を有しており、かつ、倉庫の外壁、軒裏及び屋根を全て防護することができるものでなければならない。ただし、当該施設の高さが倉庫に比して著しく低い場合等にあっては、施設の高さから通常想定される程度の災害の防止上有効な高さを有する工作物をもって足りる。

これに類するもので大規模な木造建築物に建築基準法によって設置が義務付けられている防火壁というものがあります。防火壁においては、自立する構造であり、外壁・屋根面からは50cm以上突出して設置することとなっています。

耐火構造かつ防火設備を有する

b 倉庫に近接する施設の屋根及び外壁が耐火構造であり、かつ、倉庫に面する側の外壁に設けられた開口部に防火設備を有している場合

耐火構造および防火設備に関してはこちらの記事をご覧ください。

【倉庫業】耐火性能または防火性能の審査基準について分かりやすく解説します【営業倉庫】


災害防止上有効な構造または設備

ここからは必要な構造・設備等の説明になります。

ロ国土交通大臣の定める構造及び設備(告第8条第2項)

倉庫が防火のための構造及び設備を有していることが必要になります。構造及び設備についての説明はこちらの記事をご覧ください。

【倉庫業】耐火性能または防火性能の審査基準について分かりやすく解説します【営業倉庫】

防火構造かつ防火設備を有する

(1) イa又はbに該当する施設に近接する倉庫にあっては、当該施設に面する倉庫の外壁のうち次図に示す部分を防火構造とし、かつ、当該部分に設けられた開口部に防火設備を有していなければならない(告第8条第2項第1号)。

耐火構造または準耐火構造かつ特定防火設備を有する

(2) イcに該当する施設に近接する倉庫にあっては、当該施設に面する倉庫の外壁のうち次図に示す部分を耐火構造又は準耐火構造とし、かつ、当該部分に設けられた開口部に建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第1項の特定防火設備(防火戸に限る。)を有していなければならない(告第8条第2項第2号)

特定防火設備とは防火設備の中でも特に防火性能の高い設備のことです。防火区画でよく使われます。

まとめ

近接する施設と倉庫に必要な構造・設備の関係は以下のようになります。

  • 『居室を有する施設』または『業務上火気を使用する施設』→防火構造かつ防火設備を有する
  • 『危険物の製造所等』→耐火構造または準耐火構造かつ特定防火設備を有する

その他の施設基準について

倉庫業審査基準シリーズとしてその他の施設基準についても解説しています。ぜひご覧ください。




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  1. 対象火気省令と言われています。