今回はシリーズ第十三段として1類倉庫の防犯上有効な構造及び設備の審査基準について解説します。防犯に関しては配布されているPDFでは4ページにも渡り細かく指定されいます。特に照明について基準が厳しく設けられています。
※令和6年現在、照明についての条文は削除されました。
目次
このページの読み方
上部の枠内に法令の条文を示し、その下に解説が書かれています。
前提条件
倉庫業法施行規則第三条の四第2項十より
国土交通大臣の定める防犯上有効な構造及び設備を有していること。
防犯上有効な構造及び設備とは
倉庫業法施行規則等運用方針第3条の4第2項第10号より
2-11 防犯上有効な構造及び設備(則第3条の4第2項第10号)
「防犯上有効な構造及び設備」とは、以下のものを指す。
イ 出入口扉及び錠(告第10条第1号)
倉庫の出入口に扉が備え付けられており、かつ、施錠できなければならない。
ロ 開口部からの侵入を防ぐ措置(告第10条第2号)
侵入のおそれのある開口部には、鉄格子を備え付ける、網入り又は線入りガラスにより閉塞する等開口部からの侵入を防ぐ措置が講じられていなければならない。
ハ 照明装置(告第10条第3号)
イ、ロ、ハすべてについて基準を満たしている必要があります。イは錠付きの扉であること、ロは窓に格子などがついていることを求めれていますが、どのような錠や格子かは指定されておらず簡単な基準となっています。しかし最後のハの照明装置に関しては細かく指定されています。これから先の項目はハの照明装置に関するものとなっています。
後述するものと合わせるとこの項目では5つの基準を満たす必要があります。
- 錠付きの扉
- 窓に格子
- 出入り口の照明装置
- 24時間の警備体制
- 隣接する施設から遮断
出入り口の照明装置(平成30年の改正により削除)
この項目は改正により削除されました。
基本用語
(1) 基本用語
照明装置の性能を測定する際の基本用語は、次の通りとする。a 照度ある面に対する、単位面積当たりの光の照射量を表す。単位:lx(ルクス)
b 光束光源から出る可視光の総量を表す。単位:lm(ルーメン)
c 光度光源から出る可視光の量で、ある一方向に発されている光の量を表す。単位:cd(カンデラ)
照明装置の基準にあたっては実際の数値としての照明装置の性能を証明する必要がありますので、計算をするにあたっての単位が示されています。
照明装置の基準
(2) 照明装置の基準
照明装置は、夜間、倉庫の出入口の周辺部中灰色で示された部分において、地上高1.5mの部分で2lx(4m離れた場所から見て人間の顔が判別できる程度の明るさ)以上の直接照度が確保できるように設けられていなければならない。なお、倉庫の出入口付近に街路灯等が設置されている場合であって、恒常的に上の照度が確保できると認められる場合にあっては、倉庫側において照明装置の設置を要しない。
地上高1.5mというのは人間が立った時の顔の位置を想定していますので、灰色で示された範囲内で顔を判別できる直接照度(2lx以上)があることを証明する必要があるということです。直接照度とは照明装置から直接得られる照度のことです。
直接照度の算出方法
実際の証明装置が十分な光度を満たしているかを確認するには2つの方法があります。
- 照明装置の仕様書をもとに計算する
- 照度早見表に照らし合わせて確認する
まずは1.照明装置の仕様書をもとに計算する方法です。
(3) 直接照度の算出方法
ある測定点における直接照度の値は、以下の数式により算出された値とする。なお、ある測定点が複数の光源により照らされている場合にあっては、それぞれの光源ごとに以下の数式により直接照度の値を算出し、その合計をもって当該測定点の直接照度の値とする。
E:ある測定点における直接照度の値(単位:lx)
L:光源の光度の値(単位:cd)
光源の光度の値は、当該光源として使用されている照明装置の仕様書等に記載の数値を使用することとする。
照明装置によっては、測定点の位置により光度が増減するため、当該照明装置に係る配光曲線(当該照明器具について、角度x度の地点から光源を見た場合におけるランプ光束1000lmあたりの光度の値の分布を図示したもの。メーカーの作成した当該照明装置の仕様書等に記載されているものを使用すること。)を参考に適正な光度の値を算出の上、上の数式に当てはめること。
D:測定点と光源との距離(単位:m)
当該測定点から見た場合の、当該光源の高さの数値を指す。
M:照明装置の保守率
当該照明装置の保守点検の頻度により、当該照明装置の光度が減殺される程度を表す数値であり、一律0.7とする。
実際の直接照度の算出にあたっては、計算式によってEの値を求めることになります。
Lは照明装置の仕様書を見ながら計算します。計算例で示されている2図の配光曲線図では、点線で書かれた縦長の楕円と放射状の角度を表す直線が交わった点が光度を示しています。照明装置は通常は真下の0°が一番明るく、角度がつくほど暗くなっていくので配光曲線も縦長の楕円となるのです。
Eは照明装置との距離です。照明装置の基準である高さ1.5mからの距離を忘れずに計算しましょう。(決して地上0mからの距離ではありません。)ピタゴラスの定理とは一辺cの二乗は他の2つの辺(aとb)を二乗して加えた値に等しいという定理です。
Mはどのような場合でも0.7として計算します。
ただ計算例では倉庫の壁沿いを測定点(緑点)としていますが、それ審査基準の範囲内では照明装置から一番遠い場所ではないので下の図のような場所(赤点)を測定点にすると良いでしょう。
照度早見表による確認方法
次に2.照度早見表に照らし合わせて確認する方法です。
(4) 照度早見表による確認方法
照度早見表とは、地上高1.5mの部分において2lx以上の直接照度が確保できる範囲(照明直下の地上高1.5mの点を中心とする半径rmの真円により表される。以下「照射範囲」という。を、照明装置の地上高及び照明装置の性能の相関関係を一覧表にしたものである。照度の基準適合性の審査に際しては、以下の簡易な審査方法をとることができる。
a 照度早見表中において当該倉庫で用いられている照明装置の種類と、照明装置の設けられている地上高とが交差する欄を参照し、照明装置の照射範囲の半径rを定める。
b 図面上に照明装置を中心とする半径rmの真円を図示する。
c 上の(2)の図中に示された倉庫の出入口の周辺部がbの真円中に収まれば、当該照明装置が基準を満たすことが証明される。
(注意)
複数の照明装置により直接照度を確保する場合にあっては、以下の方法のうちのいずれかにより確認することができる。
a 照度早見表を参照して、それぞれの照明装置の照射範囲を図示した上で、倉庫の出入口の周辺部がいずれかの円内に収まることを確認。
b 照度早見表から、それぞれの照明装置ごとにNlxの直接照度が確保できる範囲を下記計算方法により算出し、それぞれの円を図示する。円の重なりから照度の合計が2lx以上になる領域が判明することから、出入口の周辺部がその領域内に収まることを確認。
R:ある照明装置について、Nlxの照度が確保できる領域の半径(単位:m)
N:照度の値(単位:lx)
r:照度早見表に記載されている、ある照明装置についての2lx以上の照度が確保できる領域の半径(単位:m)
直接照度の算出方法を用いなくとも、照度早見表によって基準を満たしているか簡単に確認できます。
a、b、cの順に確認していきます。用意するものは照明装置の種類とワット数(W)と設置している高さ、あとは図面が必要です。種類とワット数(W)と高さをもとに照度早見表から照射範囲の半径rを抜き出し、図面上にその半径rの円を描きます。その円が照明装置の基準以上の大きさであればOKです。
これから照明装置を設置する場合は、直接照度の算出方法を用いずにこちらの方法を用いて購入する照明装置を検討されたほうが簡単でしょう。
以上で照明装置についての項目は終わりですが、見慣れない言葉や単位が多くすこしわかりにくいかも知れません。ただ計算例や具体例を見ながら一つずつ当てはめていけばそれほど難しくないでしょう。
24時間の警備体制
ニ警備体制(告第10条第4号)
倉庫においては、盗難等の防止上警備業法(昭和40年法律第117号)第2条第5項に定める警備業務用機械装置の設置その他これと同等以上の警備体制を有していなければならない。
「警備業務用機械装置」とは、庫内における事故の発生を感知し、当該倉庫の警備を請負う警備業者その他の者に通報するセンサーを指す。業務時間外に宿直を置く場合、24時間体制で荷役業務等を行っている場合等倉庫又はこれに付随する施設内に常に人が所在している場合にあっては、このような警備業務用機械装置の設置と「同等以上の警備体制」を有しているものとして取扱うこととする。
24時間常に倉庫に人がいるような状況以外では、警備会社と契約する必要があります。この場合、警備契約書の写しを提出することで証明します。また自社で警備する場合は警備状況説明書を提出します。
ちなみに警備会社は警視庁から警備業として認定を受ける必要がある業務です。違法業者と契約しないように気を付けましょう。
隣接する施設から遮断
ホ隣接部分からの遮断(告第10条第5号)
「隣接部分」とは、倉庫が設けられている建物内に当該倉庫と隣接する形で設けられた事業所、商店、住宅等の施設であって、倉庫関係者(倉庫業者本人若しくはその使用する荷役労務員又は寄託者等を指す。)以外の者が管理するものを指す。倉庫においては、倉庫と無関係の者が容易に出入りできることは防犯上望ましくないことから、倉庫全体を壁で区画し、倉庫と隣接部分とをつなぐ開口部を閉鎖しておく等このような隣接部分から倉庫を遮断することを要する。なお、寄託者の流通加工施設、寄託者の手配した検査員の検品スペースを庫内に設ける場合等隣接部分を当該倉庫に係る寄託者又はその関係者の用に供する場合であっては、防犯上の配慮を要しないことから遮断措置は不要である。
その他の施設基準について
倉庫業審査基準シリーズとしてその他の施設基準についても解説しています。ぜひご覧ください。