認定トランクルーム申請の基礎のキホン

認定トランクルーム」とは、国土交通大臣の認定を受けた倉庫業者が運営するトランクルームのことを指します。これは、単なる「貸し倉庫」や「レンタル収納スペース」とは異なり、倉庫業法に基づく安全性・管理基準を満たした施設です。

申請をすることで認定を得ることができますが、施設の要件を満たしていることを証明することが必要です。今回の記事では、具体的にどのような要件が課されているか、どのような書類を用意するかを分かりやすく解説します。

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トランクルームの認定の申請とは

まず大前提として認定トランクルームを取得するためには、もともと倉庫業でトランクルームの登録を受けている必要があります。トランクルームとは「その全部又は一部を寄託を受けた個人(消費者)の物品の保管の用に供する倉庫」と定義されているもので、倉庫業法上は一類倉庫の施設設備の要件を満たしているものが登録を受けることができます。これらの認定トランクルームではないものを標準トランクルームと呼ぶこともあります。

トランクルームの認定の申請では、標準トランクルームの登録を受けたものが改めて認定のための申請をします。申請にあたっては以下の書類を提出します。

申請の必要書類

  1. トランクルーム認定申請書
  2. トランクルームの図面
  3. トランクルームの性能を発揮させるための設備に関する書類
  4. 倉庫管理主任者の資格に関する書類

トランクルームの認定の基準とは

6つの新たな基準

  1. 定温性能の基準
  2. 定湿性能の基準
  3. 防塵性能の基準
  4. 防虫性能の基準
  5. 防磁性能の基準
  6. 常温及び常湿性能の基準

すべての基準をクリアする必要はなく、あくまで任意の基準をクリアすることで、その性能を認定マークとともに掲げることができます。下の例では、定温性能と定湿性能をクリアしていることを示しています。

例えば衣装を預けるのであれば、防虫性能の基準をクリアしたことが明示されている認定トランクルームを選ぶという、顧客に選択肢を提示することができます。

次に各基準ではどのような点を満たせばいいかを法令に基づき解説していきます。青いボックスの中に法令を記し、解説はその下に書きます。

定温性能の基準

「定温性能」とは、酒類その他温度の変化により変質しやすい物品を保管するため、トランクルーム内の温度を調節できる性能を指す。当該性能について認定を取得するためには、以下の基準を満たしていなければならない(告第 22 条第1項)。

イ 冷却装置、加熱装置等を備えることにより、トランクルーム内の温度を一定の範囲内に保つことができること(告第 22 条第1項第1号)。

冷却装置、加熱装置等の性能は、当該トランクルームにおいて保管する物品の特性から見て適切な保管温度を維持できることを要する。

これはエアコンなどの空調設備で大丈夫です。ただし仕様書等でトランクルーム内をすべてカバーできる出力であることを確認することが大事となります。あらかじめ空調設備の専門家に相談することをおすすめいたします。

ロ トランクルーム内の見やすい場所に温度計が設けられていること(告第 22 条第1項第2号)。

「温度計」とは、液体温度計、気体温度計、抵抗温度計、熱電温度計等温度を容易に測定することのできる計器をいう。なお、事務所等において庫内の温度を集中管理している場合であって、庫内の温度が電光掲示板等により容易に確知できる場合にあっては、本基準を満たしているものとして取り扱うこととする。

室内の見える場所に温度計を設置する必要があります。エアコンの集中監視システムを使用する場合は、そのシステムの画面に温度表示があることが示すこととなります。

ハ 則第3条の4第2項各号の基準に適合していること(告第 22 条第1項第3号)。

定温性能の認定を取得しようとするトランクルームは、その施設及び設備が一類倉庫の基準を満たしていることを要する。

認定トランクルームは標準トランクルームの施設設備の基準(一類倉庫)をクリアしていることが必須となります。

定湿性能の基準

「定湿性能」とは、漆器類その他湿度の変化により変質しやすい物品を保管するため、トランクルーム内の湿度を調節できる性能を指す。当該性能について認定を取得するためには、以下の基準を満たしていなければならない(告第 22 条第2項)。

イ 除湿機、加湿機等を備えることにより、トランクルーム内の湿度を一定の範囲内に保つことができること(告第 22 条第2項第1号)。

除湿機、加湿機等の性能は、当該トランクルームにおいて保管する物品の特性から見て適切な保管湿度を維持できることを要する。

エアコンでカバーできない場合は、別途、除湿機または加湿機を設置することとなります。

ロ トランクルーム内の見やすい場所に湿度計が設けられていること(告第 22 条第2項第2号)。

「湿度計」とは、乾湿球湿度計、露点湿度計、電気湿度計などの湿度を容易に測定することのできる計器をいう。なお、事務所等において庫内の湿度を集中管理している場合であって、庫内の湿度が電光掲示板等により容易に確知できる場合にあっては、本基準を満たしているものとして取り扱うこととする。

室内の見える場所に湿度計を設置します。集中監視システムを使用する場合は、そのシステムの画面に湿度表示があることが示すこととなります。

ハ 則第3条の4第2項各号の基準に適合していること(告第 22 条第2項第3号)。

1-1ハを参照のこと。

一類倉庫の施設設備基準を満たしていることが必要です。

防塵性能の基準

「防塵性能」とは、楽器、精密機器その他粉塵により機能が低下する等の粉塵の影響を受けやすい物品を保管するため、トランクルーム内の粉塵量を抑制し、除去できる性能を指す。当該性能について認定を取得するためには、以下の基準を満たしていなければならない(告第 22 条第3項)。

イ 床に防塵塗装その他の防塵措置が講じられていること(告第 22 条第3項第1号)。

防塵塗装とは、工場や施設などで見られるピカピカと光沢のある塗装です。エポキシ樹脂床、ポリウレタン床、ビニル床なども防塵性に優れてると言われています。

ロ トランクルーム内の集塵のため、清掃機その他の機器が備えられていること(告第22 条第3項第2号)。

粉塵、微粉などを掃除するのが得意な掃除機または集塵機を設置すると良いでしょう。

ハ 保管物品への直接の塵の付着を防止するための専用保管容器、防塵カバー等が備えられていること(告第 22 条第3項第3号)。

防塵カバーもしくはダストカバーと呼ばれ、防塵・静電気防止加工がなされたカバーで保管します。

ニ 則第3条の4第2項各号の基準に適合していること(告第 22 条第3項第4号)。

1-1ハを参照のこと。

一類倉庫の施設設備基準を満たしていることが必要です。

防虫性能の基準

「防虫性能」とは、衣類、毛皮類その他虫害の発生しやすい物品を保管するため、トランクルーム内の虫の発生を防止できる性能を指す。当該性能について認定を取得するためには、以下の基準を満たしていなければならない(告第 22 条第4項)。なお、防虫性能を有するトランクルームであって、標準トランクルーム寄託約款と同一の倉庫寄託約款を定めている場合は、損害に対する免責事由のうち虫害については、同約款第 32 条第2項の規定に基づき、虫害に関しても賠償の責任を負うことを約するよう指導すること。また、標準トランクルーム寄託約款以外の約款を定めている場合も同様とする。

イ 冷却装置等を備えることによりトランクルーム内の温度を害虫の発生を防ぐ一定の温度以下に保つことができること(告第 22 条第4項第1号)。

保管する貨物にもよりますが、温度が低い状態であれば害虫の活動を抑えることができます。たとえば毛皮であれば15℃以上になるとイガ、コイガ、ヒメマルカツオブシムシなどの害虫の活動に活発になってしまいます。そのため10℃ほどの温度を保つことが求められます。これはエアコンでカバーできる範囲といえるでしょう。

ロ 除湿機等を備えることによりトランクルーム内の湿度を害虫の発生を防ぐ一定の温度以下に保つことができること(告第 22 条第4項第2号)。

多くの害虫は湿度60%以上になると活動が活発になるようです。そのため防虫のためには湿度を50%程度まで抑えれらると良いでしょう。エアコンでカバーできない場合は、除湿機などで対応します。

ハ 害虫の発生を防止するため、トランクルーム内に有効な防虫剤又は薫蒸装置が備えられていること(告第 22 条第4項第3号)。

すでに害虫が付着している貨物を保管する可能性があれば、防虫剤や薫蒸装置などにより積極的に殺虫処理をしていく必要があると思われます。ただ危険性も高く、保管する貨物を損壊させる可能性も高いため、専門家に相談して導入するのがよろしいかと思います。

ニ 則第3条の4第2項各号の基準に適合していること(告第 22 条第3項第4号)。

1-1ハを参照のこと。

一類倉庫の施設設備基準を満たしていることが必要です。

防磁性能の基準

防磁性能」とは、データの入力済みの磁気テープ、フロッピーディスクといった、磁気の影響でその機能が低下する物品を保管するため、保管物品への磁気の影響を抑制できる性能を指す。当該性能について認定を取得するためには、以下の基準を満たしていなければならない(告第 22 条第5項)。

イ 磁気を帯びた物品がトランクルーム内に入ることを防止するため、トランクルームの入口に磁気センサーが設けられていること又は保管物品への磁気の影響を防ぐための専用保管容器が備えられていること(告第 22 条第5項第1号)。

ロ 則第3条の4第2項各号の基準に適合していること(告第 22 条第5項第2号)。

1-1ハを参照のこと。

一類倉庫の施設設備基準を満たしていることが必要です。

常温及び常湿性能の基準

「常温及び常湿性能」とは、事務用机、椅子といったオフィス用品類、スキー用具等のスポーツ用品等、保管に際して温度管理等の特殊な取り扱いをする必要のない物品を保管するために必要な性能を指しており、庫内への水の浸透を防ぐことができる等の基本的な性能を指す。当該性能について認定を取得するためには、一類倉庫の施設設備基準を満たしている必要がある(告第 22 条第6項)。

一類倉庫であればこの常温及び常湿性能を満たしているとされているようです。そのため特別な機器や装置を導入をしなくともこの基準に関しては認定を得られるということです。

なお、防虫性能を有するトランクルームにおいて保管することが望ましい衣服類のように保管に際して特殊の取り扱いをすることが望ましい物品であっても、寄託者から同意が得られた場合にあっては、常温・常湿性能を有するトランクルームにおいて保管を行うことは妨げない(則第 21 条第1項第6号)。