顧客が荷物を引き取りに来ない時の内容証明の書き方とポイント

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荷物を預かって報酬を得る倉庫業にとって、顧客が荷物を引き取りに来ないという事態は大きな損失です。なぜならば引き取りに来ない間は無料で荷物を預かっているようなものでコストだけ支払っている状態だからです。

この記事では顧客に荷物の引き取りを催促する場合の内容証明の書き方をご紹介します。また書く際のポイントも併記しますのでご参考にしていただけたら幸いです。

例文

通知書

 当社は、貴社に対し、以下の通り通知致します。

当社は、平成○年○月○日、貴社との間で貴社の貨物(以下「貨物」という)の寄託契約を締結し、平成○年○月○日に貨物の引渡しを受けました。

契約では、貨物の保管期間について平成○年○月○日に満了すると定められていましたが、同日を経過しても貴社からの引取がありません。

そのため、当社は、貴社に対し、貨物の引取を請求致します。

つきましては、本書面到達後○週間以内に、貨物の引取をして下さい。

なお、上記期間内に引取がなされなかった場合には、貨物の引取を拒絶したものとみなします。

 

東京都中央区○○町○丁目○番○号

○○株式会社

代表取締役 田中一郎 殿

平成○年○月○年

東京都江戸川区○○町○丁目○番○号

通知人 株式会社〇〇倉庫

代表取締役 玉藻行政     ㊞

ポイント① 契約情報

平成○年○月○日、貴社との間で貴社の貨物(以下「貨物」という)の寄託契約を締結し、平成○年○月○日に貨物の引渡を受けました。

契約した日時、内容をできるだけ特定するようにしましょう。契約時に登録番号等を設定している場合は、併記するとなお良いでしょう。

ポイント② 契約の始期日の確定

平成○年○月○日に貨物の引渡しを受けました。

通常、寄託契約では特約をしていない場合は、『物を保管することを約し、それを受け取ることによって成り立つ』契約ですので、貨物を受け取った日時を記載すると良いでしょう。特約で契約の始期日を定めていた場合は、そちらを記載して下さい。

ポイント③ 保管期間の経過

契約では、貨物の保管期間について平成○年○月○日に満了すると定められていましたが、同日を経過しても貴社からの引取がありません。

契約で定めた保管期間が経過していることを明確に記載しましょう。

ポイント④ 期限の設定

本書面到達後○週間以内に

期限をきちんと設定するようにしましょう。目安としては1ヶ月前後ですが、特に決まりはありませんので任意の期間を設定できます。契約書や約款で別に定めている場合はその旨を記載します。

ポイント⑤ 拒絶したものとみなす旨の付記

なお、上記期間内に引取がなされなかった場合には、貨物の引取を拒絶したものとみなします。

標準倉庫寄託約款の第28条二項において、『引取の請求は、一定の日までに引取がなされないときは引取を拒絶したものとみなす旨を付記してすることができる。』とされています。付記は任意ですので、記載をしないことも可能です。

関連法令

寄託物の受け取りの拒否についての関連法令をご紹介いたします。

商法第624条

第524条第1項及び第2項(売主の目的物供託及び競売の権利)の規定は、寄託者又は預証券の所持人が寄託物を受取ることを拒み、又は之を受取ること能はざる場合に之を準用す。此場合に於て質入証券の所持人の権利は競売代金の上に存在す。

寄託者または預証券の所持者が寄託物を受け取ることを拒否したり、または受け取ることができない場合には、商法524条第1項および第2項の規定を準用します。この場合において質入証券の所持者は競売代金から優先的に支払いを受けます。

商法524条についてはこちら↓

商法第524条

商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければならない。

2 損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、前項の催告をしないで競売に付することができる。

3 前二項の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。

商人間の売買において、買主が受け取りを拒否したり、または受け取りができないときは、売主はその物を供託し、または相当の期間を定めて催告した後に競売することができます。この場合において、供託または競売したときは、遅滞なく買主にそのことについて通知をしなければならない。

2 時間が経つと損傷したり価値が下がる物は、催告をしないで競売することができる。

3 競売をした際の代価は供託したくてはいけないが、競売の費用の全部または一部を代価でまかなっても良い。

商法第611条

倉庫営業者は競売代金の中より競売に関する費用、受寄物に課すべき租税、保管料其他保管に関する費用及び立替金を控除したる後、其残額を質入証券と引換に其所持人に支払うことを要す。

2 競売代金の中より前項に掲けたる費用、租税、保管料、立替金及び質入証券所持人の債権額、利息、拒絶証書作成の費用を控除したる後、余剰あるときは倉庫営業者は之を預証券と引換に其所持人に支払うことを要す。

倉庫営業者は競売をした際の代価について次の項目について控除したあとに、その残りの金額を質入証券と引き換えに所持者に支払えば良い。

・競売に関する費用

・預かっていた物に関する税金

・保管料や保管に関する費用および立て替えたお金

2 前項においてそれでもまだお金が余った場合は、預証券の所持者にそれと引き換えに支払わなければならない。

 

商法第612条

競売代金を以て質入証券に記載したる債権の全部を弁済すること能はざりしときは、倉庫営業者は、其支払いたる金額を質入証券に記載して、其証券を返還し、且其旨を帳簿に記載することを要す。

競売をした際の代価では質入証券に記載された金額に満たない場合は、まずは競売をした際の代価分までを支払い、次にその金額を質入証券に記載して返還し、その旨を帳簿に記載する必要があります。

 

標準倉庫業約款

倉庫業の登録時に参考する標準倉庫業約款において、引取の請求の箇所をご紹介します。

引取の請求

第28条

当会社は、保管期間満了の後に、寄託者又は証券所持人に対し、受寄物の引取を請求することができる。

2 前項の請求は、一定の日までに引取がなされないときは引取を拒絶したものとみなす旨を付記してすることができる。

供託

第29条

寄託者若しくは証券所持人が寄託物を受け取ることを拒み若しくは受け取ることができないとき又は当会社の過失なくして寄託者若しくは証券所持人を確知することができないときは、当
会社は、その受寄物を供託することができる。

2 前項の規定により受寄物を供託したときは、 遅滞なくその旨を寄託者又は証券所持人に通知する。ただし、寄託者又は証券所持人を確知できないときは、この限りでない。

競売

第30条

当会社は、前条第1項の場合において、寄託者又は証券所持人に対して期限を定めて受寄物の引取の催告をしたにもかかわらず、その期限内に引取がなされないときは、その受寄物を民事執行法に定める手続により競売することができる。

2 前項の規定により受寄物を競売したときは、 。 遅滞なくその旨を寄託者又は証券所持人に通知するただし、寄託者又は証券所持人を確知できないときは、この限りでない。

任意売却

第31条

当会社は、第29条第1項の場合において、寄託者又は証券所持人に対して期限を定めて受寄物の引取の催告をしたにもかかわらず、その期限内に引取がなされず、かつ、次の事由が発生したときは、競売に代えて寄託者又は証券所持人の危険及び費用で任意に受寄物を売却することができる。この場合には、当会社は、知れたる寄託者又は証券所持人に対して、あらかじめその旨及び売却の期日を予告する。

(1)受寄物の価格が保管料その他の費用及び競売費用を加えた額に満たないとき。

(2)受寄物が損敗するおそれがあるとき。

2 当会社は、前項により任意売却した受寄物の代価から保管料、荷役料、その他の費用、立替金、延滞金及び任意売却のために要した費用を控除した後、 その残額を寄託者又は証券所持人に支払う。