今回は1類倉庫の土地への定着性等の審査基準について解説していきます。
はじめは記事を作る必要もないだろうと思っていたのですが、よくよく考えてみると運用方針の本文には具体的な施工については詳しく書かれていないので、ちょっと分かりにくいかも知れない…と思い直し今回の記事を書くことにしました。具体的な施工方法をまじえて分かりやすく解説していきたいと思います。
目次
このページの読み方
上部の枠内に法令の条文を示し、その下に解説が書かれています。
前提条件
倉庫業法施行規則
2 一類倉庫に係る施設設備基準は、前条に定めるもののほか、次のとおりとする。
一 土地に定着し、かつ、屋根及び周囲に壁を有する工作物であること。
倉庫業法施行規則等運用方針
2-2 土地への定着性等
「土地」とは、陸地のみならず、建築可能な水面、海底等を含み、「土地に定着」とは、「土地」に定常的に定着されている状態を指す。従って、陸地に建てられた倉庫のみならず、桟橋等に繋留された水面タンク等動力を有さず、移動にタグボート等を要する等容易に移動できない工作物にあっては土地に定着していると認められるが、土地に置かれたコンテナ(ボルト等で地盤に固定されている場合を除く。)等容易に撤去可能な工作物又は船舶、車両等動力を有しており、容易に移動できる工作物は、土地に定着しているとは認められない。
解説
土地に定着し、かつ、屋根及び周囲に壁を有する工作物とは何か?
まず『建築基準法』において建築物は以下のように定義されています。
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨(こ)線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
倉庫業法施行規則に出てくる文言と同じですね。つまり営業倉庫として申請できるのは、建築基準法における建築物である必要があるということです。
水面、海底の建築物とは
皆さん倉庫業法施行規則等運用方針の方を読んでいて違和感をあるところは、この『建築可能な水面、海底等を含み』と『桟橋等に繋留された水面タンク等動力を有さず、移動にタグボート等を要する等容易に移動できない工作物』の部分だと思われます。
建築物という言葉のイメージからはプカプカと水面・海面にあるところを想像しにくく、どちらかといえば建築物ではなく、船舶なのでは?とお思いになることでしょう。
このようなものは海洋建築物や浮体構造物と呼ばれ、かつては建築物であるか船舶なのかの議論があったようです。しかし、現在では建設省からの通達により『水面、水底等にあって定常的に桟橋や鎖等で土地に定着された状態』であれば建築物であるとされています。つまり土地に定着しているので建築物ということになるのです。
土地に置かれたコンテナ等が建築物になるためには
土地に置かれたコンテナ等容易に撤去可能な工作物に関しては、土地に定着性がないとして建築物として認められていません。例えば、クレーンでそのまま釣り上げられたり、車でけん引して移動できる状態のものは建築物ではありません。
つまり、逆に言えばコンテナ等であっても容易に撤去可能でなければ、土地に定着性があるということになり倉庫としてい使用できる建築物になるのです。
上のように土地に基礎をつくり、その基礎とコンテナとをボルトで固定すれば土地に定着するので、建築物となります。
またトレーラーハウスなどの動力がついた工作物も、車輪が取り外されていたり、基礎にボルトで固定されていたりなど、『容易に移動できる』わけではないのなら、建築物という扱いになります。
すべての建築物が営業倉庫になれるわけではない
ここまで、建築物について説明してきましたが、ご注意していただきたい点が一つだけあります。
営業倉庫は建築物である必要がありますが、すべての建築物が営業倉庫になれるわけではないということです。
もちろん営業倉庫には他の審査基準がありますので、コンテナを基礎とボルトで固定して建築物にしたからと言って全てのコンテナが営業倉庫として使用できるとは限らないのです。
その他の施設基準について
倉庫業審査基準シリーズとしてその他の施設基準についても解説しています。ぜひご覧ください。