【倉庫業】軸組み・外壁・荷ずりの強度の審査基準について分かりやすく解説します【営業倉庫】

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倉庫業の申請にあたっては使用する倉庫が審査基準を満たしている必要があります。

審査対象となる項目はいくつもありますが、今回は『一類倉庫1の軸組み・外壁・荷ずりの強度』について分かりやすく解説していきたいと思います。


荷ずりとは?胴縁とは?

『荷ずり』とは倉庫の内側に貼り付けることによって荷崩れや湿気から壁を守る板状や棒状のものです。こちらの方の記事で具体的に説明されています。また『胴縁』とは、外壁を支えるための下地部分のことを指します。内壁がない場合は、胴縁の間隔を直接確認することができますが、通常は建築図面にて確認します。


まず倉庫業施行規則第3条の4第2項第2号において以下のように規定されています。

軸組み、外壁又は荷ずり及び床の強度が、国土交通大臣の定める基準に適合していること

この国土交通大臣の定める基準については倉庫業法施行規則等運用方針において知ることができます。

このページの読み方

上部の枠内に法令の条文を示し、その下に解説が書かれています。

前提条件

(1) 軸組み、外壁又は荷ずりは、2500N/㎡以上の荷重に耐えられる強度を有していなければならない(告第3条第1項)。

解説

倉庫業法施行規則の第3条の4第2項の(2)には、軸組み、外壁、荷ずり、および床の強度が国土交通大臣が定める基準に適合していることを要求しています。この規則に基づく運用方針では、「2500N/㎡以上の荷重に耐えられる強度」という具体的な基準が設けられています。これは、保管されている荷物が崩れた際に壁に接触しても壊れない程度の強度が必要であるためです。

この規則と運用方針は、倉庫内での安全性を確保するために重要です。倉庫業を行う者は、このような要件を満たしていることを確認する必要があります。


軸組み、外壁又は荷ずりが2500N/㎡以上の荷重に耐えられる強度を有している倉庫とは、以下のものをいう。

解説

実際に強度の計算をするのは大変ですので、以下の条件を満たしていれば『2500N/㎡以上の荷重に耐えられる強度』があると『みなす』ということです。


開口部について

なお、外壁に窓その他の開口部が設けられている場合であって、当該開口部の幅及び高さがいずれも内法寸法で1m以上である場合にあっては、当該開口部の設けられている部分は十分な強度を有している外壁とは認められない。ただし、当該開口部が下地板、角材等により補強されている場合、鉄格子により防御されている場合、開口部にJIS規格S-6グレード以上の建具が設けられている場合等十分な強度を有すると認められる場合にあっては、この限りではない。

解説

基本的には開口部の内法寸法の幅と高さの両方が1m以上の場合はNGです。しかしながら開口部が以下の場合はOKとなります。

  • 開口部の内法寸法の幅と高さのいずれかが1m以下
開口部の内法寸法の幅と高さの両方が1m以上の場合では
  • 開口部が下地板、角材等により補強されている場合
  • 開口部が鉄格子により防御されている場合
  • 開口部にJIS規格S-6グレード以上の建具を使っている場合
  • その他、開口部が十分な強度を有すると認められる場合

建築構造について

以下の、a、b、c、dのいずれかに当てはまればOKです。

無条件でOKな構造

建築基準法の基準に適合する鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、補強コンクリートブロック造又は煉瓦造、石造、コンクリートブロック造りその他の組積造の倉庫

解説

用途が倉庫として建築確認申請がなされ、以下の構造において「建築確認済証」および「完了検査済証」があればOKです。

  • 鉄骨鉄筋コンクリート造
  • 鉄筋コンクリート造
  • 補強コンクリートブロック造
  • 煉瓦造
  • 石造
  • コンクリートブロック造
  • その他の組積造

条件付きの構造

鉄骨造又は木造の軸組みを有する倉庫であって、以下のいずれかに該当するもの

・76cm以下の間隔で設けられた荷ずり及び90cm以下の間隔で設けられた胴縁を有するもの

・下地板又は内壁(木板、木毛セメント板又は石膏ボードの類にあっては厚さ1.2cm以上、硬質木片セメント板、合板の類にあっては厚さ0.9cm以上のものに限る。)を有するとともに、90cm以下の間隔で設けられた胴縁を有するもの

解説

用途が倉庫として建築確認申請がなされ、 鉄骨造または木造の構造において以下の条件のどちらかを満たしていればOKです。

76cm以下の間隔で設けられた荷ずり及び90cm以下の間隔で設けられた胴縁を有するもの

『荷ずり』とは倉庫の内側に貼り付けることによって荷崩れや湿気から壁を守るものです。こちらの方の記事で詳しく説明されています。また胴縁とは外壁を留めるための下地となる部分のことです。内壁がない場合は、内部から胴縁の間隔を確認することができますが、通常は図面にて確認します。

下地板又は内壁(木板、木毛セメント板又は石膏ボードの類にあっては厚さ1.2cm以上、硬質木片セメント板、合板の類にあっては厚さ0.9cm以上のものに限る。)を有するとともに、90cm以下の間隔で設けられた胴縁を有するもの

胴縁の上に下地板または内壁を貼り付けている場合は、厚さが条件を満たしていればOKです。胴縁と同じく図面にて確認します。

 


パネル製の外壁について

プレキャストコンクリート板、軽量気泡コンクリート板若しくはセメント成型板の外壁を有すること又はこれら以外のパネル製の外壁を有している倉庫であり、かつ、当該パネルの許容荷重が2500N/㎡以上となるように、当該パネルの長さ(1枚のパネルであっても、間柱・胴縁等により支持されている場合にあっては、当該間柱・胴縁の間隔分の幅を有する複数枚のパネルであるものとして取り扱うこととする。)が設定されているもの。
パネルの基準適合性を審査する場合にあっては、パネルを製造したメーカー等の作成した、パネルの長さと許容荷重との相関関係を表にした資料等を適宜参考にすること。

解説

鉄筋コンクリート造などでは型枠にコンクリートを流し込み固めることで外壁を作りますが、それとは違いすでに作ってあるパネルを間柱・胴縁等に貼ることで外壁にする工法があります。鉄骨造でよく採用される工法です。PC、ALC、ECP、サイディングなど色々な素材のパネルがあります。それらを使用している場合は、メーカーが公表している資料等で許容荷重が2500N/㎡以上であることを確認しましょう。パネルは小さいほうが強度が増します。


その他の構造について

a~cの基準に該当しない構造であってメーカー、民間の建築士事務所その他の者の行った検査により、当該軸組み、外壁又は荷擦りが2500N/㎡以上の荷重に耐えられる強度を有することが証明できるもの

解説

a~cの基準に該当することが、図面や資料等によって確認できない場合は、1級建築士の先生などに依頼して証明してもらう必要があります。当然それなりの費用がかかることになります。


荷崩れへの対策

(2) 「荷崩れのおそれのない措置」として以下の措置が講じられている場合にあっては、軸組み、外壁又は荷擦りが(1)の基準を満たしていることを要しない(告第3条第1項ただし書き)。

解説

上記(1)で定められた基準は荷崩れした場合に壁が壊れて近隣住宅や外を歩く人に被害がおよばないためにあるので、そもそも荷崩れがしないように措置がされていれば良いということです。


ラックや平積みの場合

ラックを使用して貨物を保管している場合又は貨物を平積みにしている場合等、保管の態様又は貨物の性状からみて、荷崩れが発生する危険のない場合。
この場合にあっては、倉庫の図面中においてラックの配置状況及び構造の概要を示すこととする。

解説

荷崩れを防ぐために処置がされたラックが販売されていますのでそれを使用します。また荷崩れするようなタイプではない荷物の場合もOKです。


外壁から離す場合

外壁から離れた場所(外壁から貨物の高さと同じ距離(高さが6m以上の場合にあっては、6mの距離)をとることとする。)に貨物を配置している場合等荷崩れが発生した場合でも貨物の配置上外壁に損傷を与えるおそれがない場合。この場合にあっては、倉庫の図面中において貨物の配置箇所を明示しておくとともに、倉庫内においても白線を引く等により当該箇所を明示の上、指定箇所外に貨物を置かないように当該倉庫業者において従業員に周知徹底を図るものとする。なお、庫内の貨物が、貨物の性状から見て一定の高さ以上に積まれることのない場合にあっては、外壁のうちその高さより上の部分については、bに該当するものとして取り扱うこととするが、この場合についても、同様に貨物を置く高さの上限を壁に白線を引く等により明示した上で、その高さ以上に貨物を積まないように当該倉庫業者において従業員に周知徹底を図るものとする。

解説

ラックを使用しない場合は、その荷物の高さ分だけ外壁から距離を離して置き、倉庫の床に白線を引き、従業員に物を置かないように伝える必要があります。また積み上げる高さが決まっている場合は、高さの上限を壁に白線を引き、同じく従業員に伝えることが必要です。


その他の施設基準について

倉庫業審査基準シリーズとしてその他の施設基準についても解説しています。ぜひご覧ください。


  1. 一類倉庫とは多くの種類の物品を保管できる最もポピュラーな形態の倉庫です。