倉庫業登録では、倉庫の種類を選択して申請をすることになります。国土交通省で公開されている倉庫業登録申請の手引きを見ると、倉庫にの種類によって施設設備基準が異なることが分かると思います。1類倉庫、2類倉庫、3類倉庫は同じカテゴリーのようだけど、具体的にはそれぞれどう違うのか。野積倉庫はどのような物品を保管できて、どのような場所なら登録を受けられるかなど、倉庫の種類別に詳しく解説したします。
なぜ倉庫は種類別に分かれているのか
倉庫業の登録申請の審査では、倉庫の施設および設備が基準を満たしてるかチェックする必要があります。しかしながら、実際には、保管する物品によって必要とされる倉庫の施設および設備は異なるはずです。例えば、木材を保管するだけであったら、倉庫が柵や塀で囲まれた場所であれば良く、耐火性能や防水性能がある立派な建屋の倉庫である必要はないはずです。また逆に、精密機械や薬品など、環境により品質に影響を及ぼす恐れがある物品は、倉庫の施設および設備の基準は厳しいものである必要があるでしょう。
このように保管する物品によって必要とされる倉庫の施設および設備は違い、そのため倉庫業法においても倉庫を種類別に分けて、審査を行っているのです。
保管する物品によって、必要とされる倉庫の施設および設備が違うため
目次
倉庫の種類一覧
まずは倉庫業法によって規定されている倉庫の種類をご紹介します。倉庫の種類は8種類あります。
それぞれの倉庫では、保管可能な物品が決まっています。もっとも多くの種類の物品を保管できるのが、1類倉庫です。2類倉庫、3類倉庫は1類倉庫よりも施設および設備の基準が緩くなっている分、保管可能な物品も少ないです。
野積倉庫、水面倉庫、貯蔵槽倉庫は、保管可能な物品はかなり少なく、施設および設備の基準もかなり緩くなっています。特定の物品を保管するために建てられる傾向にあります。
危険物倉庫、冷蔵倉庫は、保管可能な物品はかなり少ないですが、取り扱いに注意が必要な物品であるため、施設および設備の基準は厳しいものとなっています。
保管可能な物品と備考についてはあとで解説いたします。
種類 | 保管可能な物品 | 備考 |
1類倉庫 | 危険物及び高圧ガス(第7類)、10℃以下保管の物品(第8類)を除いた全て | もっともスタンダードなタイプ |
2類倉庫 | 第2類、第3類、第4類、第5類、第6類 | 1類に比べて耐火性能が不要 |
3類倉庫 | 第3類、第4類、第5類 | 1類・2類に比べて多くの性能が不要 |
野積倉庫 | 第4類、第5類 | 柵や塀で囲まれた区画で保管 |
水面倉庫 | 第5類 | 原木を水面で保管 |
貯蔵槽倉庫 | 第6類と第1類および第2類でバラのもの | サイロやタンクで穀物などをバラ及び液体で保管 |
危険物倉庫 | 第7類 | 建屋、タンクまたは区画(区域)で危険物を保管 |
冷蔵倉庫 | 第8類 | 10℃以下が適当なものを保管 |
保管可能な物品
上記の一覧にあるように、倉庫で保管可能な物品は種類ごとに類別されています。物品の種類は8種類に分かれています。
第1類は「第2類~第8類以外のもの」となっています。市場にある多くの製品は第2類~第8類に当てはまらないため、第1類に分類されると思われます。
リチウムバッテリー(リチウムイオン電池)はどの倉庫に保管するべきか
リチウムバッテリー(リチウムイオン電池)は少量の危険物を含有するため、第7類に分類され危険物倉庫でのみ保管が許されていました。しかし、倉庫業法施行規則等の改正により、消防法で指定する数量未満なら、1類倉庫で保管できるようになりました。具体的には以下の数量となります。
リチウムバッテリー(リチウムイオン電池)の電解液の引火点は40℃程度なので、第4類第二石油類に分類されます。第4類第二石油類の指定数量は1000Lですので、電解液の総量が1000L未満なら1類倉庫に保管でき、1000L以上なら危険物倉庫に保管することになります。
リチウムバッテリー(リチウムイオン電池)の中にある電解液の確実な量を知るには、メーカーに問い合わせる必要がありますが、リチウムバッテリー(リチウムイオン電池)自体の容量は超えることはないので、概算することは可能でしょう。
倉庫別の施設設備基準
倉庫の施設設備基準は23の項目で分類され、倉庫の種類よって満たすべき基準の数は違います。それぞれの施設設備基準については詳しく解説すると少々難解ですので、倉庫の種類別にどのような施設であるべきか簡単に解説いたします。
施設設備基準について詳しく知りたい方は以下のコラムをご覧ください。
↓以下に一覧の表を掲載いたします。
危険物 | ||||||||||
項目 番号 | 施 設 設 備 基 準 | 一類 | 二類 | 三類 | 野積 | 水面 | 貯蔵槽 | 工作物 | 土地 | 冷蔵 |
1 | 倉庫及び敷地について所有権その他使用権原を有すること | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
2 | 倉庫の種類ごとに国土交通大臣の定める建築基準法その他の法令の規定に適合してい ること | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
3 | 土地に定着し、かつ、屋根及び周囲に壁を有する工作物であること | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
ただし、鋼材その他の重量物の保管のため、天井走行クレーン等の固定荷役機械を設置 しており、周囲に壁を設けることができない倉庫にあっては、国土交通大臣が別に定める ところによる | ○ | |||||||||
4 | 軸組み、外壁又は荷ずり及び床の強度が、国土交通大臣の定める基準に適合しているこ と | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
5 | 構造及び設備が、倉庫内への水の浸透を防止するに足るものとして国土交通大臣の定め る基準に適合していること | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
6 | 土地からの水分の浸透及び床面の結露を防ぐため、床に国土交通大臣の定める防湿措 置が講じられていること | ○ | ○ | |||||||
7 | 国土交通大臣の定める遮熱措置が講じられていること | ○ | ○ | |||||||
8 | 倉庫の設けられている建物が、耐火性能又は防火性能を有するものとして国土交通大臣 の定める基準に適合していること | ○ | ○ | |||||||
9 | 危険物等を取り扱う施設その他の国土交通大臣の定める施設に近接する倉庫にあって は、国土交通大臣の定める災害防止上有効な構造又は設備を有すること | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
10 | 倉庫の設けられている建物内に事務所、住宅、商店等の火気を使用する施設又は危険 物等を取り扱う施設が設けられている場合にあっては、当該施設が、国土交通大臣の定 めるところにより区画されていること | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
11 | 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第6条に定めるところにより消火器等の消 火器具が設けられていること(この場合において、倉庫の延べ面積が150平方メートル未 満であるときは、これを延べ面積が150平方メートルの倉庫とみなして、同規則第6条の 規定を適用する) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
12 | 国土交通大臣の定める防犯上有効な構造及び設備を有していること | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
13 | 国土交通大臣の定めるそ害の防止上有効な設備を有していること | ○ | ○ | |||||||
14 | 工作物又は土地であって、その周囲が塀、柵等の国土交通大臣の定める防護施設を持っ て防護されていること | ○ | ○ | |||||||
15 | 国土交通大臣の定めるところにより照明装置が設けられていること | ○ | ○ | ○ | ||||||
16 | 建物の屋上を野積倉庫として用いる場合にあっては、当該屋上の床の強度が国土交通 大臣の定める基準に適合しているとともに、保管する物品が屋上から落下することを防ぐ 措置が講じられていること | ○ | ○ | |||||||
17 | 水面であってその周囲が築堤その他の国土交通大臣の定める工作物をもって防護されて いること | ○ | ||||||||
18 | 高潮等による保管する物品の流出を防止するため、周囲の防護施設に保管する物品を係 留する等の措置が講じられていること | ○ | ||||||||
19 | 土地に定着し、かつ周壁により密閉された貯蔵槽であること | ○ | ||||||||
20 | 周壁の側面及び底面の強度が国土交通大臣の定める基準に適合していること | ○ | ||||||||
21 | 倉庫内の要所に、倉庫内と外部との連絡のための通報機その他の設備を有すること | ○ | ||||||||
22 | 冷蔵室の保管温度が常時摂氏10度以下に保たれるものとして国土交通大臣の定める基 準を満たしていること | ○ | ||||||||
23 | 見やすい場所に冷蔵室の温度を表示する温度計が設けられていること | ○ |
1類倉庫
もっともスタンダードなタイプの倉庫であり、満たすべき施設設備基準も多いのが特徴です。そのため、保管できる物品の種類も多くなっています。
建屋の倉庫で、耐火性能、防水性能など、保管する物品が火事や雨によって破損することを防ぐための施設設備が必要となります。
何かしらの製品など、破損を防ぐべき物品を保管する際は、この1類倉庫を選択することとなります。
2類倉庫
1類倉庫に比べて、耐火性能のための施設設備基準がありません。具体的には、倉庫が防火構造であるか、耐火建築物もしくは準耐火建築物であることを要しません。
耐火性能については、以下のコラムをご覧ください。
保管できる物品は、第2類、第3類、第4類、第5類、第6類であり、第1類は保管できません。
3類倉庫
1類倉庫に比べて、水の浸透、防湿措置、遮熱措置、耐火性能、そ害についての施設設備基準がありません。また、鋼材その他の重量物の保管のため、天井走行クレーン等の固定荷役機械を設置している場合は、土地に定着し、かつ、屋根及び周囲に壁を有する工作物であることも有しません。
野積倉庫
1類、2類、3類倉庫のような建屋の倉庫ではなく、柵や塀で囲まれた区画で保管する倉庫です。そのため建屋の倉庫に求められ施設設備基準は満たす必要がありません。
建物の屋上を野積倉庫として申請することができますので、その場合は、積載荷重が3,900N/㎡以上であることと、落下防止の措置が取られている必要があります。
水面倉庫
原木等を水面に浮かべて保管するための特殊性が高い倉庫です。現在、登録されている倉庫も全国で3棟しかないようです。
保管できる物品は、 第5類だけです。
貯蔵槽倉庫
サイロやタンクで穀物などをバラ及び液体で保管する倉庫です。固有の施設設備基準として、サイロやタンクの側面が2,500N/㎡以上の荷重に耐えられる強度を有することと、底面が3,900N/㎡以上の積載荷重に耐えられる強度を有する必要があります。
保管できる物品は、第6類と第1類および第2類でバラのものです。
危険物倉庫
危険物を保管するための倉庫ですが、倉庫業における施設設備基準はあまり多くありません。なぜならば危険物の貯蔵施設は、消防法で厳しく規制されており、設置においては消防庁において審査がなされるためです。そのため倉庫業の登録申請では、消防庁により発行された設置許可書を提出すれば、細かい施設設備基準について証明する必要がありません。
危険物倉庫は、「工作物」と「土地」に分けられています。工作物とは、建屋の倉庫に保管することを指し、土地とは柵や塀で囲まれた区画で保管することをさします。
保管できる物品は、第7類だけです。
冷蔵倉庫
10℃以下が適当なものを保管する倉庫です。プレハブ型の冷蔵庫・冷凍庫を使用する場合でも倉庫業の登録は可能ですが、防犯などの施設設備基準もありますので、更地ではなく、建物内に設置することが必要となるでしょう。また、温度計や、外部への通報機など冷蔵庫・冷凍庫ならではの施設設備基準があります。
保管できる物品は、第8類だけです。