認知症がある高齢運転者の車対策②『説得編』

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前回の『家族診断編』のチェックをしたことによって運転をやめさせる必要をご理解いただけたようでしたら、この記事では実際にどうやって説得していくかを説明したいと思います。

チェックがまだの方はこちらから↓

繰り返しになりますが「チェックにあてはまっているから運転をやめろ」とはすぐに伝えないで下さい。説得は計画を立て段階的に進めるようにしましょう。

計画の準備

①専門機関に相談し認知症について理解を深める

認知症の進行具合症状は人それぞれです。またご本人の性格やあなたとの関係もそれぞれです。他の家庭ではうまく行ったケースはあなたの家庭では通用しないこともあるでしょう。

インターネットに載っている認知症についての情報はあくまでも網羅的な内容です。

まずは専門機関に現在の状況を伝え、あなたの家族に適した情報を手に入れるよう努力しましょう。ご本人に運転をやめることの重要性を理解をしてもらうために、まずはあなたが認知症についての理解を深める必要があります。

相談先は各市町村に設置されている地域包括支援センターが最適です。

アキヤマ

地域包括支援センターは頼れる認知症のプロです

地域包括支援センターとは

介護保険法により、市町村または市町村から委託を受けた法人が設置しています。地域住民の心身の健康の保持および生活の安定のために必要な援助を行うことを目的としています。

業務内容は以下の通りです。

  1. 介護予防ケアマネジメント
  2. 総合相談・支援
  3. 権利擁護
  4. 包括的・継続的ケアマネジメント支援

市町村により運営の方法はそれぞれですが、多くの場合は地域を細かく分割しそれぞれ違う窓口を設けています。窓口の連絡先は市町村のホームページに掲載されていますが、よく分からない場合はとりあえず市町村の介護福祉課に問い合わせてみると良いでしょう。

窓口では、ご本人の症状や性格を伝え、おおよその認知症の傾向を掴みましょう。

②他の家族やご本人の友人にあらかじめ連絡し参加してもらう

あなた一人で計画を進めるよりも多人数に参加してもらったほうが成功率はぐんとあがります

またあらかじめ連絡することにより、ご本人が多くの意見に板挟みになり混乱することを避けられます。あなたから運転をやめるように説得されていることをご友人に相談し、そのご友人は運転を続けるように逆に言ってきた場合です。あなたかご友人のどちらか選ぶことになってしまいます。

③安全運転に関するリーフレットを印刷し用意する

警視庁では高齢運転者向けの安全運転に関するリーフレットを作成し公表しています。

警視庁|高齢者の交通事故防止関連

運転をやめるように直接的に促すためのものではありませんが、自身の運転についての理解してもらうために使用できます。

④代わりの交通機関について調べておく

ご本人が運転をやめた場合に使う、代わりの交通機関について調べておく必要があります。特に病院や趣味などご本人の生活に欠かせない場所へのアクセスを重視して考えましょう。地方自治体によっては交通費用の補助を行っている場合がありますので、福祉課に相談してみましょう。

  • 家族や友人が代わりに運転する
  • 電車やバスなどの公共の交通機関
  • タクシー

⑤宅配サービスについて調べておく

買い物に出かける際に自動車を利用している場合は、代わりに自宅まで商品を届けてくれるサービスがないか調べてみましょう。インターネットを利用しないと注文できない場合も多々ありますが、電話での注文も受け付けているところもあります。

説得を開始する

情報が揃ったらいよいよ説得の開始です。

説得は段階的に進めていきましょう。

まず一回の説得ではうまくいかないことが多いことを理解してください。抵抗がみられる場合は一日で全てのことについて話し合うのではなく、日を置いて伝えることも大事です。

  1. 運転についてのご本人の思いを聞く。(否定せず肯定的に)
  2. 運転についてあなたの懸念を伝える。
  3. あなたがご本人に対する愛情と支援を伝える。
  4. 集めた資料を見せる(警視庁のリーフレット、代わりの交通機関、宅配サービス)
  5. 運転をやめた場合についての日常をご本人と一緒に計画を立てる

3.については恥ずかしくて中々出来ない人もいるかも知れません。

ただ普段あまり言わないことなので、ご本人も深刻な話だと理解してくれる可能性があります。運転のやめることは自尊心を傷つけられ孤独を感じる人が多いのも事実です。家族としてそれを埋める気持ちがあることを伝えて下さい。

説得が失敗したら

運転を簡単にやめられる人もいれば、やめることが非常に困難がことがあります。認知症の症状の一つとして怒りっぽくなっているせいでもあります。

継続的な説得

一回目の説得に失敗した場合、以下の方法を試して下さい。

  • 日を置いて他の家族やご本人のご友人からも伝えてもらう
  • 運転をやめることへの苦痛に共感していることを伝える
  • ご本人の責任感にアピールする(運転やめることが責任ある行動であると伝える)
  • 権威のある第三者に参加してもらう(医師、弁護士、年長の親戚)
  • 辛抱強く説得を続ける

アキヤマ

あくまでも怒ったり叱ったりは厳禁です

自動車に対する処置

それでも説得が上手くいかない場合は、最終手段として物理的に運転出来ないようにすること考えて下さい。

  • 自動車のキーを隠す
  • キーを交換し発進できなようにする
  • バッテリーを外し自動車が故障したかのように装う
  • 駐車場を自宅から離れた場所に借りる

それからの心構え

度重なる説得でも運転をやめることに納得しない場合は、残念ながら認知症によりご本人の性格が変化してしまったからかも知れません。そのような状態ですと運転に限らず日常生活でも家族内でのトラブルが出てくることが予想されます。もしかしたらもう出てきてるのかも知れません。

悲しくやるせない気持ちになることがあるかと思います。

しかし認知症はあくまでも慢性の病気だと冷静にとらえましょう。ご本人も症状に苦しんでいるのです。

すでにお伝えしたように地域包括支援センターなど多くの頼れる機関が存在しています。何も情報が無い状態で家族として支えるのは難しいものです。一人で抱え込まずに周りに相談することでご本人にもあなたにも良い結果をもたらすことでしょう。

取り返しがつかなくなる前に認知症が疑われる高齢運転者に家族ができること 認知症がある高齢運転者の車対策①『家族診断編』