国土交通省にて標準的な運賃について告示されました【貨物運送業】

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2020年4月24日に国土交通省によってトラック運送業に係る標準的な運賃が告示されました。

【国土交通省】トラック運送業に係る標準的な運賃を告示しました~ 持続可能な物流の実現に向けて、取引の適正化・労働条件の改善を進めます ~

本来、運賃は自由に事業者が設定できるものですが、国土交通省によって標準的な運賃というものが設定され告示されることになりました。

当コラムではなぜ自由であるはずの運賃に標準値が設定されたのかの経緯と、その標準値について解説していきます。

なぜ標準値が設定されたのか

国土交通省のHPではこのように説明されています。

国土交通省のHPより抜粋

トラック運送業においては、運転者の労働環境は他の産業と比べて長時間労働・低賃金の状況にあり、運転者不足が大きな課題となっています。(~省略~)「標準的な運賃の告示制度」は、一般にトラック事業者の荷主に対する交渉力が弱いことや、令和6年度から年間960時間の時間外労働の限度時間が設定されること等を踏まえ、運転者の労働条件を改善し、トラック運送業がその機能を持続的に維持していくに当たっては、法令を遵守して持続的に事業を行っていくための参考となる運賃を示すことが効果的であるとの趣旨により設けられたものです。

つまり標準的な運賃を国土交通省が設定することにより、トラック運送事業者の諸問題が発生している状況を改善しようとするものです。

今まで商慣習として、トラック事業者は荷主との契約交渉において弱い立場となっていました。なぜならば、荷主の多くは大企業が多いのに対して、トラック業界は大半は中小零細事業者によって構成されているため、業界全体とし弱い立場にありました。またトラック事業者は貨物自動車運送事業法によって多くの法令を遵守する必要がありますが、対象的に荷主には遵守する法令がないため、諸問題を解決するスキームを構築する余地がありませんでした。

「標準的な運賃の告示制度」は告示された運賃を下回る契約を無効にする効力はありませんが、国としての一定の指針を示すことにより、運賃交渉を円滑できるようになることでしょう。

改正貨物自動車運送事業法における荷主関連部分

2019年7月から施行されている「改正貨物自動車運送事業法」では、「標準的な運賃の告示制度」以外にも、今までになかった荷主関連部分が新設され、トラック運送業において荷主にも一定の配慮が必要だと定めています。

国土交通省が公開しているリーフレット【PDF】がありますので、是非ご覧ください。

以下の3点です。

  1. 荷主の配慮義務の新設
  2. 荷主への勧告制度の拡充
  3. 違反原因行為をしている疑いがある荷主に対する国土交通大臣による働きかけ等の規定の新設

1.荷主の配慮義務の新設

荷主の責務
第六十三条の二 荷主は、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令を遵守して事業を遂行することができるよう、必要な配慮をしなければならない。

2.荷主への勧告制度の拡充

荷主への勧告
第六十四条(~省略~)当該命令又は処分に係る違反行為が荷主の指示に基づき行われたことが明らかであるときその他当該違反行為が主として荷主の行為に起因するものであると認められ、かつ、当該貨物自動車運送事業者に対する命令又は処分のみによっては当該違反行為の再発を防止することが困難であると認められるときは、当該荷主に対しても、当該違反行為の再発の防止を図るため適当な措置を執るべきことを勧告することができる。 国土交通大臣は、第一項の規定による勧告をしたときは、その旨を公表するものとする。

3.違反原因行為をしている疑いがある荷主に対する国土交通大臣による働きかけ等の規定の新設

違反原因行為への対処
附則 第一条の二 平成三十六年三月三十一日までの間、国土交通大臣は、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する原因となるおそれのある行為(以下この条において「違反原因行為」という。)を荷主がしている疑いがあると認めるときは、関係行政機関の長に対し、当該荷主に関する情報を提供することができる。
 平成三十六年三月三十一日までの間、国土交通大臣は、前項の荷主に対し、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令を遵守して事業を遂行することができるよう荷主が配慮することの重要性について理解を得るために必要な措置を講ずることができる。
 平成三十六年三月三十一日までの間、国土交通大臣は、荷主が違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、当該荷主に対し、違反原因行為をしないよう要請することができる。
 平成三十六年三月三十一日までの間、国土交通大臣は、前項の規定による要請を受けた荷主がなお違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、当該荷主に対し、違反原因行為をしないよう勧告することができる。ただし、第六十四条第一項の規定により勧告することができる場合は、この限りでない。
 国土交通大臣は、前項の規定による勧告をしたときは、その旨を公表するものとする。
 関係行政機関の長は、荷主による違反原因行為の効果的な防止を図るため、第二項から第四項までの規定の実施について、国土交通大臣に協力するものとする。
 国土交通大臣は、第二項から第四項までの規定の実施に際し、貨物自動車運送事業者に対する荷主の行為が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二条第九項に規定する不公正な取引方法に該当すると疑うに足りる事実を把握したときは、公正取引委員会に対し、その事実を通知するものとする。

運賃の変更には届け出が必要です

今回の標準的な運賃の告示にあわせて運賃を変更する場合は、貨物自動車運送事業報告規則の規定により、変更後30日以内に管轄の運輸支局に届け出する必要があります。

また変更した場合は、営業所内に掲示する運賃表を差し替えるのもお忘れなく。


玉藻行政書士事務所では貨物運送業(一般貨物自動車運送事業)の各種申請について取り扱っております。お気軽にご相談ください。

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