アメリカのトラック運転手の怖い話

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突然ですが皆さんは怖い話は好きですか?私は好きです。

個人的には落ちが無いような、意味不明な話が好きです。そして何かその場の雰囲気を感じられると尚良いですね。

普段は堅苦しい法律の話などの記事を書いていますので、今回はちょっと息抜きにアメリカのトラック運転手の怖い話をご紹介したいと思います。(一応、物流系の行政書士なのでちょっとでも関係あるようにトラック運転手の怖い話にしました)

個人的には怖いだけでなくアメリカの長距離トラックが走るハイウェイの空気を感じられて好きな話です。

それではどうぞ


長距離トラック運転手の人生は困難に満ちています。長距離の道のりのため数日から数週間は家族から離れて生活することになります。マイクが語るように、彼らは州をまたぐ旅路で多くの奇妙で信じられないものを目の当たりにするものです。しかし、マイクはその夏、道中の小さなトラック停留所で体験することについて心の準備が出来ていませんでした。

マイク・Lの体験


私はハイウェイのトラック運転手で、48の州の全てを走ります。時々、奇妙なものを目撃はしますが、2011年6月中旬にアーカンソー州パレスチナで遭遇したものとは比較できません。

私はミシガン州デトロイトからテキサス州ヒューストンに向かっていました。それは旅の三日目の出来事です。その日一日中は運転しっぱなしでした。I-401沿いにあるトラック停留所兼ガソリンスタンドがあったのでそこで一晩過ごすことにしました。予定以上に走ったので通常の10時間ではなく、長時間の14時間の休憩を取ることにしました。

私はすぐにその停留所が好みでは無いことが分かったが、他に選択肢がありませんでした。バスルームは不潔だったし、まるで都会のトラック停留所のようにたくさんの落書きが壁にありました。

またそこには十数台分のトラック用の駐車場を備えた小さな店もありました。洗濯をした後、そこで新しいワークナイフといくつかの温かい食べ物を買って自分のトラックに戻りました。

開けた窓から入る乾いた風を感じつつ、シートに座ってラジオを聞きながら夕食を食べました。ミシシッピ川はちょうど氾濫し始めていましたが、一週間以上雨がなかったようなので大丈夫でしょう。周囲の景色は、アーカンソーというよりもネバダのように見えました。

食事を終え、少し車内の掃除をしました。シートから地面に降りると暖かい風が私に当たりました。ゴミ箱に向かって歩き、ゴミを投げ込んでゆっくりと自分のトラックに戻りました。トラックに寄りかかりながらフィルターなしのタバコにライターで火をつけ、私は水平線の太陽を見ながらその煙を楽しみました。

その後さらにいくつかのトラックが停留所に入ってくるのを見ました。一人の男がビール瓶を片手に店内を歩いていましたが、彼がすぐにトラックに慌てて戻って行くのを見ました。トラック運転手の人生、何が面白くてたった1つのビールのために仕事を危険に晒すんでしょうかね。

私はトラックの寝台に入り、寝巻きに着替えて横になりました。目覚ましのアラームの設定を気にする必要がありません。夢の世界へ漂っていくうちに、睡眠が私の上に忍び込み、私はそれを受け入れました。

寝台の横のテーブルに置いた水のボトルがガタガタと揺れ床に落ちました。激しく揺れるトラックの中で目覚めたのです。私は背筋を伸ばして座り、完全に覚めた頭でカーステレオを押すと、時間は午前3時過ぎでした。落ちたボトルを掴んでキャップを外し、ゴクリと飲みました。

私はなんとか落ち着きを取り戻し、心拍数を100以下に整え、そして頭を枕の上に戻しました。しかしトラックは再び揺れ、灰皿とホルダーに入れていたボトルが舞い上がりました。

私はひっくり返り、すぐに靴を履いてカバンの中から新しいタバコの箱を掴み取りました。カーテンを開いて運転席に座り、寝台の光を消しました。

ドアを開けると外がかなり寒いことに気付きました。トラックに鍵をかけポケットに入れ、歩き回って周りを見渡しました。

その夜、その停留所ではガソリンの給油機だけが光を灯していました。その光はトラックが駐車している場所までは届きません。一瞬周りを見て、タバコに火を付け、・・・そして気付きました。風がピタリと止んでいます。

トラックはなぜ激しく揺れたのでしょう。おそらく地震?メンフィスの周りでは地震の報告があることは知っていましたが、あの揺れは地震のようには感じられませんでした。まるで強い風がトラックの側面に突っ込んできたようだったのです。

奇妙なほど用心深く助手席側のトラックの前まで歩いていき、トレーラーの下を覗き込みました。

何かが動いています。それは1.2mほどの背の低い何か。すばやい動きではない。

私は助手席側のドアを解除し、飛び上がって頭上の荷物入れから大きな懐中電灯を掴み取りドアをバタンと閉めました。パッとライトをつけトレーラーの側面を照らしていきます。

するとトラックの3m後ろに幼い女の子が立っています。目を凝らしてもう一度見ると、もうそこには彼女はいませんでした。

まあ、先ほど述べたようにトラック運転手は毎日何かしら新しい何かと遭遇します。これは確かに新しいものですね。

私はトラックの後部に向かって歩き出しました。私が見た少女の痕跡が何かないかと地面をライトで照らしましたが、痕跡は何もありませんでした。

それは何かの見間違いだったに違いない。そうです、きっと私は完全に目を覚ましてなかったのです。

振り返るとガソリンの給油機の周辺には車はなく、店員は私には気付いてないようでした。

私は何か『野生の呼び声』のようなものを感じて、寝巻きのまま店まで歩いていく気にはなりませんでした。誰も見ていなかったと思うのでたぶん害は無かったでしょうが。

トレーラーの後ろに立ってもう一度彼女を探してみました。(誰も隠れて私がしていたことを見ていなかったことを望みます)

すべてをしまい込みトラックの運転手席側に歩き出しました。最後の一本を取り出すとタバコの空き箱を地面に放り投げ、ドアを開けました。

そして足を踏み入れた時にハッキリと聞こえたのです。くすくすと笑う声。女の子の笑い声。

振り返り周囲を懐中電灯で照らします。何もない。

「気味が悪いぜ!」と大声で言うと

「私のこと聞こえるのね」小さな女の子の声で返答がありました。

トラックから飛び降りました。運転席の中から声が聞こえてきた!これは何かの間違えだ。

私は外を歩き回っている間、トラックを閉め切っていました。誰かが窓を壊すことなく内部に侵入なんて出来るはずがありません。

少なくとも不快な遭遇になることを覚悟して、トラックに足を踏み入れ、頭を傾けました。

「そこにいるのは誰だ」私は尋ねました。寝台のライトをオンにするためにスイッチを押しました。そしてシートに膝立ちになり寝台のほうをじっと見ました。

「おやすみなさい」それは柔らかな声で、私の周囲から発せられたようでした。急に体がゾワッと冷たくなったので手で体を軽く叩くとシートから転げ落ちてしまいました。なんとか立ち上がると今度は頭を上の荷物入れにぶつけてしまいました。

寝台の周りを見渡しても誰もそこにいません。

あたりを見回してから運転席のドアを閉めるために足を引きずるように移動しました。

すると目の前の地面に少女が立っています。

ギラギラとした目で私を見つめてきます。その目は人間の物ではありませんでした。まるで彼らは捕食者のようで、突然私は獲物になった気分でした。

私は運転席にたどり着きドアを閉めてロックをかけました。そしてすぐにここから出発することを決めました。鍵を回すとトラックのエンジンが唸り響くのが聞こえます。慣れ親しんだエンジン音とともにブレーキを開放するのに十分でないことを空気圧計が教えてくれます。

窓の外を見ると、彼女はまだ立っていました。

まるで木のように立って私を見上げて笑っています。

トラックの準備が整うまで窓の近くにさえ行きたいと思いませんでした。

その”少女”は人間ではなかった。少なくとも彼女はそうではなかった。彼女は人間の形をした人間ではない何かでした。私からそれ以上説明するのは難しいですし、考えるだけで気が病んでしまいそうです。

警告音が止まってブレーキシステムに空気が供給された音が聞こえました。しかしシステムが起動し始めるとまた警告音が鳴り出します。

ここから出るのには十分だ!自分自身に言い聞かせ、クラッチを外しギアを入れ、悪魔のような轟音を響かせながら駐車所を出ました。

右折する時にサイドミラーを見ると、私のトラックのライトで赤と琥珀色に照らされた少女が見えました。彼女は私に微笑んで、手を振っていた。

ギアを上げ、すぐにハイウェイに乗りました。

その後、私は45分間運転し、何度も室内灯をオンにして運転席と寝台の周りを見回しました。ハイウェイの次の出口で大きなトラック用の停留所を見つけたので入り、空いてある場所の1つに駐車しました。そしてヘッドライトを消し、寝台のライトをまたつけました。

あの店ではお土産を買っていました。つまらないアーカンソーの絵が書かれたポストカードです。そして新しいワークナイフも買いました。それらはまだ箱から出してなくて引き出しに入れっぱなしにしていたはずです。

しかし、そのナイフの刃はポストカードに描かれたアーカンソーのあの停留所の場所を突き刺し、寝台横のテーブルにポストカードを磔にしていました。

ナイフを引き抜くのに数分掛かりましたが、ありがたいことにポストカードを見回しても何のメッセージも書かれていませんでした。


今でも私があの場所で何を見たのかわかりません。

他の運転手が州をまたぐ数々のハイウェイで体験した奇妙な出来事について話すのを聞きますが、私自身はまだ彼らに体験したことを話したことはありません。

彼女について話すだけで、また私のトラックに彼女が来るのではないかと怖いのです。

あのポストカードは投げ捨て、ナイフはゴミ箱に投げ込みました。その後、アーカンソーに行くたびにポストカードを買っています。今では36枚にもなってしまいました。


  1. 州間ハイウェイ40号線。アメリカの東西に結ぶハイウェイ。