倉庫業の変更登録を解説:申請が必要な変更と手続きについて

倉庫業の変更登録を解説:申請が必要な変更と手続きについて

登録された倉庫に大きな変更が生じた場合、国土交通省への変更登録申請が必要です。これは倉庫業者に課された義務であり、変更登録を行わずに倉庫を変更すると罰則を受ける可能性があります。(倉庫業のすべての変更続きの一覧はこちら

変更登録は、倉庫業における最も重要な手続きの一つです。なぜならば営業に大きな影響を及ぼす変更が対象となるため、これを怠ると重大な事故や法的リスクにつながる可能性があります。

本コラムでは、変更登録が必要となる具体的なケースや申請手続きの流れについて詳しく解説します。不明点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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変更登録が必要な変更とは?

変更登録が必要な変更は大きく分けて以下の3つあります。一つずつ解説していきます。

  1. 倉庫の種類を変更する場合
  2. 倉庫の施設および設備の変更
  3. 保管する物品の種類の変更

1.倉庫の種類を変更する場合

倉庫の種類とは「1類倉庫」「冷蔵倉庫」「危険品倉庫」などのことを指します。倉庫の種類により、施設設備基準も、保管できる物品も異なります。例えば冷蔵倉庫では10℃以下の物品を保管できますが、そのために冷蔵庫・冷凍庫の冷却性能などの施設設備基準が設けられています。しかしながら冷蔵物を保管しない1類倉庫では、そのような施設設備基準はありません。このように倉庫の種類を変更することは大きな変更であるといえるため、変更登録する必要があるのです。

倉庫の種類について詳しく知りたい方は以下のコラムをご覧ください。

倉庫の種類って何?-1類?2類?3類?を徹底解説

倉庫の種類によって、施設設備基準は異なりますが、ケースによって施設や設備の変更が伴う場合と、伴わない場合があります。両者とも、変更登録の申請が必要ですが、手続きで提出する資料が異なります。

施設や設備の変更が伴う場合

以下のような場合は、施設や設備の変更が伴うケースが多いといえるでしょう。

  • 「1類倉庫」から「危険品倉庫」への変更
  • 「1類倉庫」から「冷蔵倉庫」への変更

施設や設備の変更が伴わない場合

以下の場合では、施設や設備の変更をせずとも倉庫の種類が変更できます。

  • 「1類倉庫」に「トランクルーム」を追加して「1類倉庫・トランクルーム」へ変更する
  • 「1類倉庫」から「2類倉庫」への変更

このほかにも「2類倉庫」から「1類倉庫」への変更では、もともと「1類倉庫」として施設設備基準を満たしていながら、あえて「2類倉庫」として登録してたケースなどがあります。

2.倉庫の施設および設備の変更

倉庫の面積を拡大・縮小したり、建物の構造や設備を変更する場合も変更登録の手続きが必要となります。これらの変更を実施する際は、倉庫業法で定められた施設設備基準に適合しているかどうかの確認が重要です。変更内容によっては基準を満たさなくなる可能性があるため、計画段階での十分な検討と事前確認が必須となります

※この項目で言われる主要構造とは「壁・柱・床・梁・屋根・階段」のことを指します。

新設・増設

「変更に係る倉庫が新たに営業に使用されるものである場合(規模の拡大を伴う主要構造の変更を含む。)」に該当する場合は、変更登録の手続きが必要とされています。具体には以下のような事項が当てはまります。

  • 新築、買入、借入により倉庫を新築または増築する場合
  • 自家用倉庫を営業用倉庫に転用する場合
  • 倉庫を解体し他の場所に再建築する場合
  • 倉庫の主要構造の全部を変更する場合
  • 倉庫の規模の拡大を伴う主要構造の一部を変更する場合

構造の変更(規模拡大なし)

「規模の拡大を伴わない主要構造の一部変更等の場合(倉庫の種類の変更を含む。)」に該当するものも変更登録の手続きが必要となります。具体的には以下のような事項が当てはまります。

  • 営業倉庫の一部を他人に譲渡または貸渡して倉庫の規模を縮小する場合(減坪)
  • 営業倉庫の一部を営業倉庫以外の用途(事務所、労務員詰所等)に変更する場合
  • 倉庫の規模の変更を伴わない主要構造の一部を変更する場合(窓、出入口の閉鎖等)
  • 倉庫を解体することなく他の場所に移動させる場合(曳家)

冷蔵倉庫設備の変更

冷蔵倉庫で使用される設備に関しては変更にあたって変更登録の申請が必要となります。ただし、設備の老朽化などの理由によって、同じ仕様のものに交換する場合は、変更ではないので変更登録の申請は必要ありません。設備は以下のようなものがあてはまります。

  • 圧縮機
  • 蒸発器
  • 防熱装置

3.保管する物品の種類の変更

倉庫に保管する物品の種類を変更する場合も、変更登録の申請が必要となります。物品の種類は以下の表でいう左側の項目を指します。(第1類、第2類など)変更登録の申請は手間がかかるので、あらかじめ登録時に保管する物品を種類を広く指定しておくことをおすすめします。

物品の種類の変更

第1類第2類~第8類以外のもの
第2類麦、でん粉、ふすま、飼料、塩、野菜類、果実類、水産物の乾品及び塩蔵品、皮革、肥料、鉄製品その他の金物製品、セメント、石こう、白墨、わら工品、石綿及び石綿製品
第3類板ガラス、ガラス管、ガラス器、陶磁器、タイル、ほうろう引容器、木炭、パテ、貝がら、海綿、農業用機械その他素材及び用途がこれらに類する物品であっても、湿気または気温の変化により変質し難いもの
第4類地金、銑鉄、鉄材、鉛管、鉛板、ケーブル、セメント製品、鉱物及び土石、自動車及び車両(構造上主要部分が被覆されているものに限る)、木材(合板及び化粧材を除く)、ドラム缶に入れた物品、空コンテナ・空ビン類、れんが、かわら類、がい子・がい管類、土管類、くず鉄、くずガラス、古タイヤ類等野積で保管することが可能な物品
第5類原木等水面において保管することが可能な物品
第6類容器に入れていない粉状又は液状の物品
第7類消防法(昭和23年法律第186号)第2条の危険物及び高圧ガス取締法(昭和26年法律第204号)第2条の高圧ガス
第8類農畜産物の生鮮品及び凍結品等の加工品その他の摂氏10度以下の温度で保管することが適当な物品
保管する物品の種類

他の第7類物品を保管

また第7類物品を保管している倉庫において、他の第7類物品を保管する場合も変更登録が必要となります。第7類物品とは以下のようなものになります。

  • 消防法上の危険物
  • 高圧ガス保安法上の高圧ガス
  • 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律の液化石油ガス

第8類物品の変更

第8類物品(非食品)を第8類物品(食品)に変更する場合は変更登録が必要です。第8類物品とは「農畜産物の生鮮品及び凍結品等の加工品その他の摂氏10度以下の温度で保管することが適当な物品」のことです。

登録手続きの具体的な手順

  1. 管轄の運輸局や専門の行政書士に相談
  2. 書類の収集
  3. 変更登録の申請
  4. 変更を行う

1.管轄の運輸支局や専門の行政書士に相談

いずれの変更事由においても、変更を行う前にまずは管轄の運輸局や専門の行政書士に相談するようにしましょう。なぜならば変更事由によっては、変更によって営業倉庫として不適格になってしまう可能性があるためです。まずは変更そのものを行って良いものかを確認してください。

2.書類の収集

変更事由によって収集するべき書類は違います。倉庫の種類の変更では、施設や設備の変更を伴わない場合は、用意する書類は多くはありませんが、伴う場合は建築図面やその他法令に適合していることを証する書類などを用意する必要があります。

新設・増設する場合の書類
  • 倉庫明細書
  • 冷蔵倉庫明細書 (冷蔵倉庫の場合)
  • 施設設備基準別添付書類チェックリスト
  • 倉庫及び敷地についての使用権原を証する書類
  • 関係法令に適合していることを証する書類
  • 倉庫の平面図、立面図及び断面図
  • 倉庫付近の見取り図及び倉庫の配置図
  • 集荷見積書 (発券倉庫業者の場合)
  • 所要資金及びその調達方法に関する説明書(発券倉庫業者の場合)
  • 場合により建築確認
規模の拡大を伴わない主要構造の一部変更(倉庫の種類変更を含む)をする場合の書類
  • 倉庫明細書
  • 冷蔵倉庫明細書 (冷蔵倉庫の場合)
  • 関係法令に適合していることを証する書類
  • 倉庫の平面図、立面図及び断面図
  • 所有者の承諾書

3.変更登録の申請

申請書は、正本1通、副本1通を変更を行う倉庫の所在地を管轄する地方運輸局に提出します。受領印が必要な場合は、控えを1通用意しましょう。また支局経由でも提出できますが、申請書の副本を一通多く作成する必要があります。直接窓口に提出することもできますが、郵送による受付もしています。

また現在では、メールでの申請も可能です。詳しくは国土交通省のホームページをご覧ください。

無事に変更登録が完了すると、登録免許税(3万円もしくは1万円)の納付を1か月以内にする必要があります。

4.変更を行う

実際には、変更登録の申請を行う前でも結構ですが、スケジュールを確認して変更を行いましょう。変更途中に予期せぬ事態が発生した場合は、申請書を提出した運輸局に連絡して相談するようにしましょう。

変更登録を怠るリスク

前述の通り、変更登録を行わずに変更を進めた場合、営業倉庫として不適格と判断されるリスクがあります。これにより、施設や設備が適切に管理されず、物品の破損や汚損といったトラブルが発生する恐れがあります。さらに、最悪の場合には火災などの重大事故につながる可能性も否定できません。

また、変更登録を行わないことは倉庫業法に違反する行為となります。以下に罰則規定を示します。


罰則規定

 倉庫業法第二十九条の規定により、50万円以下の罰金に処されます。

根拠となる条文は以下となります。

倉庫業法第二十九条

次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

一 第七条第一項の規定に違反して第四条第一項各号に掲げる事項を変更した者

倉庫業法第七条第一項

第三条の登録を受けた者(以下「倉庫業者」という。)は、第四条第一項各号に掲げる事項を変更しようとするときは、国土交通大臣の行う変更登録を受けなければならない。ただし、倉庫の用途の廃止その他の国土交通省令で定める軽微な変更については、この限りでない。

倉庫業法第四条第一項

前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。

一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名

二 倉庫の所在地

三 国土交通省令で定める倉庫の種類(トランクルームを含み、以下「倉庫の種類」という。)

四 倉庫の施設及び設備

五 保管する物品の種類

六 その他国土交通省令で定める事項

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