倉庫業登録の申請では、作成した申請書類のほかにも多くの書類を提出し、使用する倉庫が施設設備基準を満たしていることなどを証明します。例えば、もっともスタンダードな形態である1類倉庫の申請では、13の項目に対して、ひとつひとつ基準を満たしていることを証明する書類を用意する必要があります。このコラムでは、1類倉庫を例として提出する必要がある書類についてどのように入手できるなど、詳しく解説いたします。
目次
必要書類の一覧
当事務所では、倉庫業登録の申請をご依頼いただく際、まず以下の書類をご準備いただくようお客様にご案内しております。ご提出いただいた書類を確認し、登録申請が可能であると判断した場合に正式にご依頼をお引き受けしております。
- 賃貸借契約書(所有物件なら不要)
- 検査済証
- 確認済証
- 警備契約書
- 構造計算書
- 消防用設備等検査済証
- 消防用設備等点検結果報告書
- 平面図
- 立面図・断面図
- 矩計図
- 建具表
- 倉庫管理主任者修了証
使用する倉庫によって必要となってくる書類は変わってきますが、このリストにある書類は、必要となる可能性がとても高くなります。なぜ必要となるか、またこれらの書類はどのように入手するかは、後述いたします。
書類はなぜ必要なのか
倉庫業登録の申請では、倉庫の施設設備が基準を満たしているかを審査します。そのため提出する書類は、倉庫の施設設備を証明するための書類となります。
倉庫の施設設備の基準とは、申請する倉庫の種類によって異なります。もっともスタンダードな形態である1類倉庫では、13の項目の基準が審査されます。以下がそのリストです。
- 倉庫及び敷地について所有権その他使用権原を有すること
- 倉庫の種類ごとに国土交通大臣の定める建築基準法その他の法令の規定に適合していること
- 土地に定着し、かつ、屋根及び周囲に壁を有する工作物であること
- 軸組み、外壁又は荷ずり及び床の強度が、国土交通大臣の定める基準に適合していること
- 構造及び設備が、倉庫内への水の浸透を防止するに足るものとして国土交通大臣の定める基準に適合していること
- 土地からの水分の浸透及び床面の結露を防ぐため、床に国土交通大臣の定める防湿措置が講じられていること
- 国土交通大臣の定める遮熱措置が講じられていること
- 倉庫の設けられている建物が、耐火性能又は防火性能を有するものとして国土交通大臣の定める基準に適合していること
- 危険物等を取り扱う施設その他の国土交通大臣の定める施設に近接する倉庫にあっては、国土交通大臣の定める災害防止上有効な構造又は設備を有すること
- 倉庫の設けられている建物内に事務所、住宅、商店等の火気を使用する施設又は危険物等を取り扱う施設が設けられている場合にあっては、当該施設が、国土交通大臣の定めるところにより区画されていること
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第6条に定めるところにより消火器等の消火器具が設けられていること
- 国土交通大臣の定める防犯上有効な構造及び設備を有していること
- 国土交通大臣の定めるそ害の防止上有効な設備を有していること
ご覧のとおり、各項目については具体的な施設設備の内容が明確に指定されていないため、どのような書類を用意すればよいのか分かりにくい部分があるかと思います。しかし、実際には倉庫業法施行規則やその運用方針において、各施設設備基準が詳細に定められています。ただし、いずれの場合も、使用する倉庫がこれらの基準を満たしているかどうかは、必要な書類を集めたうえで判断することになります。
倉庫業登録の申請を行政書士に依頼する場合でも、ご自身で国土交通省に相談しながら進める場合でも、まずは必要な書類が揃っているかどうかをご確認ください。
このコラムではこれらの施設設備基準については、解説いたしませんが、詳しい知りたい方は是非以下のコラムをご覧ください。
↓各施設設備基準についての詳しい解説は以下のコラムをご覧ください。
↓倉庫の種類による施設設備基準については、以下のコラムをご覧ください。
必要書類の重要度と入手方法について
ここでは、最低限用意する必要が書類について紹介いたしますが、その書類も重要度が多少違ってきます。まずはこれがないと申請は不可能といったものから、早めに対策が必要、申請までに用意できれば大丈夫の、重要度をA・B・Cの3つのレベルに分けさせてもらいました。
重要度A・これがなければ申請は不可能
まずは使用する倉庫が決まっている場合、これらの書類がないとまず申請は不可能だと思われる書類を示します。倉庫を購入するにせよ、借りるにせよ、これらの書類があるかまずは確認してください。通常これらの書類は、倉庫の所有者もしくは管理者が保管しています。
- 建築図面
- 確認済証(確認通知書)
- 検査済証
- 構造計算書
建築図面
倉庫を建てる際には、まずは自治体や指定確認検査機関に、建物が建築基準法や条例に適合しているかを確認してもらいます。そのことを建築確認申請といいます。建築確認申請では、主に建物を設計する際に作成した建築図面を提出します。そして倉庫業の登録における審査でも、この建築図面が重要となります。建築確認申請の際に提出した、建築図面があることを確認してください。
建築図面はいくつかの図面に分かれています。平面図、断面図、立面図、矩計図、平面詳細図、配置図などです。大きな倉庫になるほど枚数も多くなりますが、できるだけすべての図面を確保するようにしましょう。
施設設備基準では、1以外のすべてを証明する際に使用されます。
確認済書(確認通知書)
さきに述べたように、倉庫を建てる際には建築確認申請を行います。この建築確認申請を経て、法律等に適合していることが確認された場合、指定確認検査機関からこの確認済書(確認通知書)が発行されています。倉庫業登録においては、施設設備基準の『2.倉庫の種類ごとに国土交通大臣の定める建築基準法その他の法令の規定に適合していること』を証明するためにこの確認済書(確認通知書)を提出します。もし単純に紛失している場合は、確認済書(確認通知書)自体の再発行はできませんが、自治体の建築指導課に台帳記載事項証明書を発行してもらい、代替とすることができます。
検査済証
建築確認申請が済み、倉庫が竣工となった場合に、実際に建てられた倉庫と建築図面が同一であることを確認する完了検査というものを行います。それも無事にクリアすると、指定確認検査機関からこの検査済証が発行されます。この完了検査を受けていない事例も多くあるようですが、倉庫業の登録の審査では、この完了検査を受けていることは絶対条件となります。施設設備基準の『2.倉庫の種類ごとに国土交通大臣の定める建築基準法その他の法令の規定に適合していること』とは、この完了検査を受けていること自体が法令の規定に適合していることとなるためです。もし紛失している場合は、検査済証自体の再発行はできませんが、自治体の建築指導課に台帳記載事項証明書を発行してもらい、代替とすることができます。
構造計算書
構造計算書は、建物の構造計算の概要・仮定条件・計算式・計算結果を示すための書類です。建築図面と同じく、建築確認申請の際に、提出します。倉庫などの大型の建築物では、構造計算書のページ数を多く、保管をしていないケースが多々あります。ただ倉庫業の登録の申請では、主に施設設備基準『4.軸組み、外壁又は荷ずり及び床の強度が、国土交通大臣の定める基準に適合していること』を証明する際に、この構造計算書が必要となります。
重要度B・なければ早めの対策を
次に、ないならば早めの対策が必要となる書類についてご紹介いたします。重要度Aとは違い、あとから対策することで入手できる書類となります。
- 賃貸借契約書(所有物件なら不要)
- 消防用設備等検査済証
- 消防用設備等点検結果報告書
賃貸借契約書(所有物件なら不要)
施設設備基準『1.倉庫及び敷地について所有権その他使用権原を有すること』を証明するために使用します。自己所有の倉庫であるならば、代わりに登記簿謄本を提出します。賃貸であるならば、倉庫業登録の申請までに賃貸借契約を結び、契約書を用意します。転貸借の物件でも、倉庫業登録の申請はできますが、ひとつ気を付けていただきたい点としては、所有者の許可が必要だということです。マスターリース契約書などがあれば良いですが、なければ改めて所有者に承諾書を取り付ける必要がありますので注意が必要です。
消防用設備等検査済証
倉庫を建てる際に消防用設備を設置する必要がありますが、その際に消防庁又は消防署長に設置届を提出し、検査を受ける必要があります。検査に合格したらこの消防用設備等検査済証が発行されます。通常この書類は、倉庫の所有者もしくは管理者が保管しています。この書類が見当たらない場合は、紛失か届出忘れですので、早めに所轄の消防庁に相談するようにしましょう。紛失の場合は、再発行してもらえます。
消防用設備等検査済証は、施設設備基準『11.消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第6条に定めるところにより消火器等の消火器具が設けられていること』を証明します。
消防用設備等点検結果報告書
倉庫では消防用設備の点検を定期的にする義務があります。半年に一度の機器点検と、一年に一度の総合点検です。そして、三年に一度、消防庁又は消防署長に点検についての報告書を提出する義務もあります。その報告書がこの消防用設備等点検結果報告書となります。つまり、竣工から三年以上経た倉庫は必ず提出済みの報告書があるはずです。倉庫業登録の申請では、提出済(届出済)の押印がある最新の報告書を提出します。その報告書に、不良の箇所がある場合は、その設備を修繕している必要があります。
倉庫の竣工から三年以上経ているのに、消防用設備等点検結果報告書がない場合は、点検忘れと報告忘れの可能性があります。消防設備の点検事業者を探して、点検と報告をしてもらうようにしましょう。各都道府県消防設備協会では、適正な点検を行うことができる一定の要件を満たしている事業者を『消防用設備等点検済表示登録事業者』として公開しています。事業者選びの参考にしてみてください。→消防用設備等点検済表示登録会員名簿
消防用設備等点検結果報告書は、施設設備基準『11.消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第6条に定めるところにより消火器等の消火器具が設けられていること』を証明します。
重要度C・申請までに用意しよう
- 警備契約書
- 倉庫管理主任者修了証
警備契約書
施設設備基準「12. 国土交通大臣の定める防犯上有効な構造および設備を有していること」では、警備会社による機械警備が必要です。機械警備とは、国から許可を受けた警備会社が使用する特定の警備用機械装置を指します。そのため、市販のセンサーアラームなどでは基準を満たせない点にご注意ください。なお、警備契約は倉庫業登録の申請時までに締結されていれば問題ありません。
倉庫管理主任者修了証
倉庫業登録の申請では、倉庫管理主任者の選任が必要です。選任資格は以下のいずれかを満たす者に限られます:
- 倉庫管理業務に関して2年以上の指導監督的実務経験を有する者
- 倉庫管理業務に関して3年以上の実務経験を有する者
- 国土交通大臣が定める倉庫管理に関する講習を修了した者
初めて倉庫業登録を行う場合、経験者を確保するのが難しいため、多くの場合は講習を受講して修了証を取得することが一般的です。この講習は一般社団法人日本倉庫協会が開催していますが、開催頻度が高くないため、早めの予約をお勧めします。
なお、この倉庫管理主任者の選任は施設設備基準やチェックリストに記載されておらず、見落としやすい点ですので注意してください。