【倉庫業】消火器具の審査基準について徹底解説

前回の防火区画のコラムからだいぶ日にちが開いてしまいましたが、今回はシリーズ第十二段として1類倉庫消火器具の審査基準について解説します。

倉庫業法として特別な基準があるわけではなく消防法に従えば良い形となっています。したがって今回は消防法についてのコラムとなります。

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上部の枠内に法令の条文を示し、その下に解説が書かれています。

前提条件

倉庫業法施行規則第三条の四第2項九より

消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第六条に定めるところにより消火器等の消火器具が設けられていること。この場合において、倉庫の延べ面積が百五十平方メートル未満であるときは、これを延べ面積が百五十平方メートルの倉庫とみなして、同規則第六条の規定を適用する。

消火器具は消防法施行規則第六条の基準を満たす必要があります。また倉庫の延べ面積が150㎡未満のときは150㎡の倉庫として扱います。

消防法

消防法施行規則第六条第一項より

令第十条第一項各号に掲げる防火対象物(第五条第十項第二号に掲げる車両を除く。以下この条から第八条までにおいて同じ。)又はその部分には、令別表第二において建築物その他の工作物の消火に適応するものとされる消火器具(大型消火器及び住宅用消火器を除く。以下大型消火器にあつてはこの条から第八条までに、住宅用消火器にあつてはこの条から第十条までにおいて同じ。)を、その能力単位の数値(消火器にあつては消火器の技術上の規格を定める省令(昭和三十九年自治省令第二十七号)第三条又は第四条に定める方法により測定した能力単位の数値、水バケツにあつては容量八リットル以上のもの三個を一単位として算定した消火能力を示す数値、水槽にあつては容量八リットル以上の消火専用バケツ三個以上を有する容量八十リットル以上のもの一個を一・五単位又は容量八リットル以上の消火専用バケツ六個以上を有する容量百九十リットル以上のもの一個を二・五単位として算定した消火能力を示す数値、乾燥砂にあつてはスコップを有する五十リットル以上のもの一塊を〇・五単位として算定した消火能力を示す数値、膨張ひる石又は膨張真珠岩にあつてはスコップを有する百六十リットル以上のもの一塊を一単位として算定した消火能力を示す数値をいう。以下同じ。)の合計数が、当該防火対象物又はその部分の延べ面積又は床面積を次の表に定める面積で除して得た数(第五条第十項第一号に掲げる舟にあつては、一)以上の数値となるように設けなければならない。

防火対象物の区分
面積
令別表第一(一)項イ、(二)項、(十六の二)項、(十六の三)項及び(十七)項に掲げる防火対象物
五十平方メートル
令別表第一(一)項ロ、(三)項から(六)項まで、(九)項及び(十二)項から(十四)項までに掲げる防火対象物
百平方メートル
令別表第一(七)項、(八)項、(十)項、(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物
二百平方メートル

消防法施行令第十条では指定の建物においては消火器具を置くことを義務付けています。消防法施行規則第六条ではさらに建物ごとにどれぐらいの消火器具を置けばよいか細かく定めています。

但し書きが多く読みにくいので括弧を抜いた文を掲載します。

令第十条第一項各号に掲げる防火対象物又はその部分には、令別表第二において建築物その他の工作物の消火に適応するものとされる消火器具を、その能力単位の数値の合計数が、当該防火対象物又はその部分の延べ面積又は床面積を次の表に定める面積で除して得た数以上の数値となるように設けなければならない。

つまり、防火対象の建物においては、指定の消火器具の『能力単位の数値の合計数』が延べ面積または床面積を表の面積で割ったときに求められる数値を超えなくてはならないということです。

倉庫はもちろん防火対象の建物となっており、百平方メートルで割ることになっています。消防法施行令別表第一では倉庫は(十四)項となっています。

主要構造部を耐火構造かつ難燃材料を用いている建物について

消防法施行規則第六条第二項より

前項の規定の適用については、同項の表中の面積の数値は、主要構造部を耐火構造とし、かつ、壁及び天井(天井のない場合にあつては、屋根)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを難燃材料(建築基準法施行令第一条第六号に規定する難燃材料をいう。以下同じ。)でした防火対象物にあつては、当該数値の二倍の数値とする。

つまり主要構造部を耐火構造とし、かつ壁・天井(屋根)の室内に面する部分の仕上げが、難燃材料の倉庫については、二百平方メートルで割ることになります。

設置する消火器具は一般のものよりも少なくて済むことになります。

消火器具の設置本数の求め方

消防法施行規則第六条第一項と第二項をまとめると以下のようになります。

消火器具の設置本数の求め方

 

例えば1000㎡の一般の倉庫であれば

1000㎡ ÷ 100㎡ = 10

したがって10単位以上の消火器具を用意する必要があります。

少量危険物・指定可燃物・変圧器等・ボイラー室等がある場合

消防法施行規則第六条第三項から第五項にあてはまる場合は、第一項および第二項において計算した数に加えて多くの消火器具を用意する必要があります。

3 第一項の防火対象物又はその部分のうち、少量危険物(危険物のうち、危険物の規制に関する政令第一条の十一に規定する指定数量の五分の一以上で指定数量未満のものをいう。以下同じ。)又は指定可燃物(同令別表第四の品名欄に掲げる物品で、同表の数量欄に定める数量以上のものをいう。以下同じ。)を貯蔵し、又は取り扱うものにあっては、前二項の規定によるほか、令別表第二において危険物又は指定可燃物の種類ごとにその消火に適応するものとされる消火器具を、その能力単位の数値の合計数が、当該防火対象物に貯蔵し、又は取り扱う少量危険物又は指定可燃物の数量を次の表に定める数量で除して得た数以上の数値となるように設けなければならない。
区分
数量
少量危険物
危険物の規制に関する政令第一条の十一に規定する指定数量
指定可燃物
危険物の規制に関する政令第一条の十二に規定する数量の五十倍
4 第一項の防火対象物又はその部分に変圧器、配電盤その他これらに類する電気設備があるときは、前三項の規定によるほか、令別表第二において電気設備の消火に適応するものとされる消火器を、当該電気設備がある場所の床面積百平方メートル以下ごとに一個設けなければならない。
5 第一項の防火対象物又はその部分に鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する場所があるときは、前四項の規定によるほか、令別表第二において建築物その他の工作物の消火に適応するものとされる消火器具を、その能力単位の数値の合計数が、当該場所の床面積を二十五平方メートルで除して得た数以上の数値となるように設けなければならない。

以上をまとめるとこのようになります。

少量危険物・指定可燃物・変圧器等・ボイラー室等がある場合

例えば少量危険物の灯油を800リットル貯蔵する場合は以下のような計算となります。

灯油の指定数量は危険物の規制に関する政令の別表第三より第2石油類の非水溶性液体なので1000リットル

800リットル ÷ 1000リットル = 0.8

0.8以上の単位の消火器具が必要なので1単位設置する必要があります。

消火器具の能力単位とは

消防法施行規則第六条第一項より

消火器にあつては消火器の技術上の規格を定める省令(昭和三十九年自治省令第二十七号)第三条又は第四条に定める方法により測定した能力単位の数値、水バケツにあつては容量八リットル以上のもの三個を一単位として算定した消火能力を示す数値、水槽にあつては容量八リットル以上の消火専用バケツ三個以上を有する容量八十リットル以上のもの一個を一・五単位又は容量八リットル以上の消火専用バケツ六個以上を有する容量百九十リットル以上のもの一個を二・五単位として算定した消火能力を示す数値、乾燥砂にあつてはスコップを有する五十リットル以上のもの一塊を〇・五単位として算定した消火能力を示す数値、膨張ひる石又は膨張真珠岩にあつてはスコップを有する百六十リットル以上のもの一塊を一単位として算定した消火能力を示す数値をいう。以下同じ。

まず消火器具は消火器と簡易消火用具に大別することができます。

消火器具は消火器と簡易消火用具に大別できる

まず簡易消火用具に関しては能力単位が決まっています。

簡易消火用具能力単位
水バケツ(容量8リットル以上)×3個
水槽(容量80リットル以上)1個 + 消火専用バケツ(容量8リットル以上)×3個1.5
水槽(容量190リットル以上)1個 + 消火専用バケツ(容量8リットル以上)×6個2.5
乾燥砂(50リットル以上)1塊 + スコップ0.5
膨張ひる石または膨張真珠岩(160リットル以上)1塊 + スコップ

次に消火器は実際に模型を燃やして能力単位を決めています。模型による測定では、木材を燃やすA火災と油を燃やすB火災の二種類あります。そのため消火器にはそれぞれAとBの能力単位があります。また消火器によっては電気火災用のCに適合したものがありますが、これには能力単位がありません。

消火器の表面を見てみると能力単位が『A-1・B-3・C』というように記載されています。これはA火災では能力単位が1、B火災では能力単位3、C火災にも適合しているという意味です。

倉庫においてはA火災の能力単位をもとに設置する数を計算します。

設置する場所の制限

消防法施行規則第六条第六項より

前五項の規定により設ける消火器具は、防火対象物の階ごとに、第一項及び第五項に規定するものにあつては防火対象物の各部分から、第三項に規定するものにあつては危険物又は指定可燃物を貯蔵し、又は取り扱う場所の各部分から、第四項に規定するものにあつては電気設備のある場所の各部分から、それぞれ一の消火器具に至る歩行距離が二十メートル以下となるように配置しなければならない。

消火器具は各階ごとに、または対象の20メートル以内に設置する必要があります。危険物・指定可燃物・電気設備などがある場所に関しても20メートル以内に設置する必要があります。

簡易消火用具の制限

消防法施行規則第六条第七項より

前各項の規定により設ける消火器具の能力単位の数値の合計数が二以上となる防火対象物又はその部分にあつては、簡易消火用具の能力単位の数値の合計数は、消火器の能力単位の数値の合計数の二分の一を超えることとなつてはならない。ただし、アルカリ金属の過酸化物、鉄粉、金属粉、マグネシウム若しくはこれらのいずれかを含有するもの又は禁水性物品に対して乾燥砂、膨張ひる石又は膨張真珠岩を設けるときは、この限りでない。

必要な能力単位が2を超える場合は簡易消火用具をその半分以上で賄ってはいけません。ただしアルカリ金属の過酸化物、鉄粉、金属粉、マグネシウムなどの禁水性物品に関して乾燥砂、膨張ひる石または膨張真珠岩で対処する場合は制限はありません。

参考書籍

今回は大脇賢次さまの著作『史上最強 図解よくわかる消防法』を参考にさせていただきました。

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