多くのお客様が、急な要請により倉庫業登録の申請を検討されるケースが見受けられます。その際に問題となるのが、「どれくらいの期間で倉庫業登録が完了するのか」という点です。
弊社・玉藻行政書士事務所では、倉庫業登録申請のご依頼をいただいた際、まず 「問題なく進めば、申請用書類の作成には約2か月かかります」 とご説明しています。つまり、何らかの「問題」が発生すると、2か月以上の期間を要する可能性があるということです。
そこで今回は、この「問題」とは何か、またどのようにすればその問題を回避できるのかについて、倉庫業登録をお考えの皆様にお伝えしたいと思います。
ちなみに全く問題なくスムースに申請が進めば、書類作成に2カ月、運輸局での審査に2カ月の計4か月で倉庫業登録が可能です。
目次
1.居抜き物件には要注意
新築の物件でない限り、当たり前ですがその物件を借りていた前の業者さんがいるということですね。
そして最近よく流行っているのが、前の業者さんが使用していた設備什器をそのまま引き継ぐ『居抜き』という売買・賃貸の方法です。
設備什器を新たに揃える必要がないためコストの面でも操業までの期間短縮の面でも大きなメリットがあります。
しかしこの居抜きで注意していただきたいのが、前の業者さんが残した『倉庫業のための倉庫にはあってはならないもの』です。
他のコラムでも書いた通り、倉庫業を行う物件には厳しい設備基準が設けられています。
設備基準の中でも水濡れと火災を防止するために、倉庫内にそれらの原因となる設備がある場合は必要な措置が講じられている必要があります。
居抜きで問題となるのは、それらの必要な措置が講じられることなくウォータークーラーやトイレまたガスを使用する給湯器などが設置されていることがあるということです。
前の業者さんが倉庫業者ではない場合は、設置されていた設備什器が設備基準に則っているとは限りません。それが設備基準に反する場合はそれらを取り除いたり改修する手間がかかってしまうこととなります。
このようなトラブルを避けるためには図面だけではなく実際に現地調査をする必要があるでしょう。
2.同じ倉庫でも「倉庫業を営まない倉庫」とは
建築確認申請において重要となる「用途」の分類ですが、倉庫という分類がもちろんあります。
しかし実はこの倉庫には2種類あります。『倉庫業を営む倉庫』と『倉庫業を営まない倉庫』です。
この2つの倉庫ですが、建築基準法において求められる設備・構造の基準に大差はありません。ただ大きく違うのは、求められる『床の強度』です。
『倉庫業を営む倉庫』では倉庫業の基準を満たす3900N/㎡以上となっていますが、『倉庫業を営まない倉庫』ではその基準がありません。
つまり建物がの用途が『倉庫業を営まない倉庫』となっている物件においては構造計算書によって床の強度が3900N/㎡以上であることを証明しなくてはなりません。
この構造計算書がはじめから用意されている物件なら良いですが、存在しない場合は一級建築士の方に計算を依頼しなくてはなりません。そして最悪の場合、床の強度が3900N/㎡未満の場合は、倉庫を探し直す必要が出てきてしまうのです。
売買または賃貸しようとしている倉庫が『倉庫業を営まない倉庫』ならば、あらかじめ構造計算書が存在していること、なおかつ床の強度が3900N/㎡以上であることを確認しておくと良いでしょう。
3.転貨借ならあらかじめの確認はしっかりと
倉庫の借り主の方からさらに借りることを転貨借といいます。
倉庫業の申請においては転貨借した物件でも問題ありません。
ただ通常の賃貸と同じくその物件を使用する権原をしっかりと証明する必要があります。
転貨借の場合は、倉庫の借り主だけではなく所有者の方からの使用許可を得る必要があります。
物件の所有者の中には転貨借を嫌がる方もいらっしゃいますので、使用許可をもらおうとしたらなかなか首を縦に振ってくれないなんてトラブルがあります。
実際に転貸借する前に所有者の方から許可が得られるか確認しておくと良いでしょう。
4.倉庫管理主任者はしっかり確保している?
倉庫業を営むためには必ず倉庫管理主任者の資格を持った者が必要です。
日本各地の倉庫連合会さまが主催されている講習会を1日受講すれば資格は取得できます。
ただ東京のような大都市であっても一般参加できる講習は年に2~3回しか開催されていません。
倉庫管理主任者の資格の取得自体は操業開始までにできれば大丈夫ですが、できるだけ早い操業開始を望むのでしたら、地方の講習会への参加を覚悟しなくてはならないでしょう。
またすでに倉庫管理主任者の資格を所有している方がいらっしゃっても、すでに他の倉庫の管理をされているならば新たな倉庫と兼任はできません。
5.消防用設備はきちんと点検してる?
あらゆる倉庫は防火対象物であるため、半年ごとの点検と3年に一度の点検報告が義務付けられています。この義務は所有者に課せられますが、長期間使用されていない倉庫では、消防用設備の点検が怠られている場合があります。
倉庫業登録の申請には、点検報告が行われたことを証明するために、届出済の押印がある「消防用設備等点検結果報告書」を提出する必要があります。しかし、この報告書を紛失していたり、報告自体を行っていない場合は、改めて点検業者に依頼し、消防用設備を点検してもらう必要が生じる可能性があります。さらに、点検の結果「不良」と判断された箇所があれば、修繕も必要となります。
消防用設備の点検や修繕には時間と費用がかかるため、事前に消防用設備に問題がないか確認しておくことが安心につながります。
あらかじめの確認を
以上の5つのケースはいずれもあらかじめ確認することで防ぐことができる問題です。操業開始が遅れることによって発生してしまうコストを避けるためにも念頭置いておくと良いでしょう。