倉庫業の申請手続きが長引く理由5選!

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わたくし秋山は倉庫業申請のご依頼をいただいた際に、まず『問題なく進めば申請用書類作成には2か月ほどかかります。』とご説明します。

つまり『問題』によって2か月以上の期間を要することがあるということです。

今回はこの『問題』とは何か、倉庫業申請を考えていらっしゃる皆様にお伝えしたい思います。

1.居抜き物件には要注意

新築の物件でない限り、当たり前ですがその物件を借りていた前の業者さんがいるということですね。

そして最近よく流行っているのが、前の業者さんが使用していた設備什器をそのまま引き継ぐ『居抜き』という売買・賃貸の方法です。

設備什器を新たに揃える必要がないためコストの面でも操業までの期間短縮の面でも大きなメリットがあります。

しかしこの居抜きで注意していただきたいのが、前の業者さんが残した『倉庫業のための倉庫にはあってはならないもの』です。

他のコラムでも書いた通り、倉庫業を行う物件には厳しい設備基準が設けられています。

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設備基準について詳しく説明してます→倉庫業審査基準シリーズ目次

設備基準の中でも水濡れと火災を防止するために、倉庫内にそれらの原因となる設備がある場合は必要な措置が講じられている必要があります。

居抜きで問題となるのは、それらの必要な措置が講じられることなくウォータークーラーやトイレまたガスを使用する給湯器などが設置されていることがあるということです。

前の業者さんが倉庫業者ではない場合は、設置されていた設備什器が設備基準に則っているとは限りません。それが設備基準に反する場合はそれらを取り除いたり改修する手間がかかってしまうこととなります。

このようなトラブルを避けるためには図面だけではなく実際に現地調査をする必要があるでしょう。

2.同じ倉庫でも「倉庫業を営まない倉庫」とは

建築確認申請において重要となる「用途」の分類ですが、倉庫という分類がもちろんあります。

しかし実はこの倉庫には2種類あります。『倉庫業を営む倉庫』と『倉庫業を営まない倉庫』です。

この2つの倉庫ですが、建築基準法において求められる設備・構造の基準に大差はありません。ただ大きく違うのは、求められる『床の強度』です。

『倉庫業を営む倉庫』では倉庫業の基準を満たす3900N/㎡以上となっていますが、『倉庫業を営まない倉庫』ではその基準がありません。

つまり建物がの用途が『倉庫業を営まない倉庫』となっている物件においては構造計算書によって床の強度が3900N/㎡以上であることを証明しなくてはなりません。

この構造計算書がはじめから用意されている物件なら良いですが、存在しない場合は一級建築士の方に計算を依頼しなくてはなりません。そして最悪の場合、床の強度が3900N/㎡未満の場合は、倉庫を探し直す必要が出てきてしまうのです。

売買または賃貸しようとしている倉庫が『倉庫業を営まない倉庫』ならば、あらかじめ構造計算書が存在していること、なおかつ床の強度が3900N/㎡以上であることを確認しておくと良いでしょう。

3.転貨借ならあらかじめの確認はしっかりと

倉庫の借り主の方からさらに借りることを転貨借といいます。

倉庫業の申請においては転貨借した物件でも問題ありません。

ただ通常の賃貸と同じくその物件を使用する権原をしっかりと証明する必要があります。

転貨借の場合は、倉庫の借り主だけではなく所有者の方からの使用許可を得る必要があります。

物件の所有者の中には転貨借を嫌がる方もいらっしゃいますので、使用許可をもらおうとしたらなかなか首を縦に振ってくれないなんてトラブルがあります。

実際に転貸借する前に所有者の方から許可が得られるか確認しておくと良いでしょう。

4.倉庫管理主任者はしっかり確保している?

倉庫業を営むためには必ず倉庫管理主任者の資格を持った者が必要です。

日本各地の倉庫連合会さまが主催されている講習会を1日受講すれば資格は取得できます。

ただ東京のような大都市であっても一般参加できる講習は年に2~3回しか開催されていません。

倉庫管理主任者の資格の取得自体は操業開始までにできれば大丈夫ですが、できるだけ早い操業開始を望むのでしたら、地方の講習会への参加を覚悟しなくてはならないでしょう。

またすでに倉庫管理主任者の資格を所有している方がいらっしゃっても、すでに他の倉庫の管理をされているならば新たな倉庫と兼任はできません。

5.倉庫管理主任者ちゃんと足りてる?

4でも書きましたように、倉庫管理主任者は他の倉庫と兼任はできません。1棟ごとに1名を選任することが原則となっています。

ただしちょっとした緩和措置があります。

a) 同一敷地内に設けられている倉庫がその他の機能上一体の倉庫とみなされる場合

b) 同一都道府県内で同一の事業所が直接管理又は監督している場合で、それらの面積の合計が1万㎡以下(1類倉庫)の場合

これら2つの条件に当てはまる場合は1棟ごとに1名を選任する必要はありません。

ただ、a) においては道路によって分断され、あまりにも離れているなど、機能上一体と判断されない場合もあります。またb) においてもすでに他の倉庫をお持ちの場合は合計面積を気を付ける必要があるでしょう。その後の事業拡大によって急遽新たに選任する必要がでてきたりします。

実際の職務において倉庫管理主任者が行うことは多くあります。できるだけ多くの方が資格を取得するようにされると良いでしょう。

あらかじめの確認を

以上の5つのケースはいずれもあらかじめ確認することで防ぐことができる問題です。操業開始が遅れることによって発生してしまうコストを避けるためにも念頭置いておくと良いでしょう。