【倉庫業】遮熱措置の審査基準について分かりやすく解説します【営業倉庫】

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シリーズ第八段として1類倉庫の遮熱措置の審査基準について解説していきます。倉庫業施行規則等運用方針の該当部分を見ると長文な上、なにやら難しそうな数式があり、正直とても難しそうな項目になっています。よく読んでみると通常は考慮に入れる必要のない事柄についての記載もありますので、それらを分かりやすく区別しながら解説していきたいと思います。

このページの読み方

上部の枠内に法令の条文を示し、その下に解説が書かれています。

熱貫流率とは

2-6 遮熱措置(則第3条の4第2項第5号)

「熱貫流率」とは、熱エネルギーが、ある壁を通して屋外から屋内へ伝わるときの「熱の伝わりやすさ」を表す数値であり、屋外と屋内の温度差1℃ごとに、1㎡の面積を1秒間に通過する熱量(単位:W)を表す数値である。

この数値が小さいほど熱を伝えにくく、断熱性能の高い壁ということになる。

解説

単純に熱貫流率について説明しているだけの項目です。製品等の表示において熱貫流率は単位が『W/㎡・K』と『Kcal/㎡h℃』の2つが使われますが、この倉庫業施行規則等運用方針では『W/㎡・K』が使用されています。混同しないように気をつけましょう。


前提条件

一類倉庫においては、遮熱のため屋根、外壁及び開口部の熱貫流率の平均値(以下「平均熱貫流率」という。)が4.65W/㎡・K以下となるように措置されていなければならない(告第6条)。ただし、以下の場合にあっては、上の基準に適合しているものとして取り扱うことができる。

解説

後述で実際に熱貫流率の平均値の計算をする場合の方法が記載されていますが、まずは『みなし』適合についてが示されています。以下の(1)(2)(3)のいずれかに該当する場合は、熱貫流率の平均値が4.65W/㎡・K以下だとみなされ、遮熱措置の審査基準はクリアとなります。


みなし適合

天井あり

(1) 当該倉庫が天井を有する場合

解説

天井があれば遮熱措置の審査基準はクリアです


耐火構造または準耐火構造の屋根及び外壁

(2) 当該倉庫が建築基準法第2条第7号に規定する耐火構造又は同条第7号の2に規定する準耐火構造の屋根及び外壁(同条第9号の3ロの規定により、準耐火構造として認められる金属板一枚張りの屋根及び外壁にあっては、下地板を有するものに限る。)を有している場合。

解説

建築基準法において耐火構造または準耐火構造の技術的基準は、通常の火災による加熱が加えられた際に構造耐久上支障がある変形等が生じないことが必要です。ある一定の時間まで変形等がしなければ基準クリアとなります。

もちろん自分で火を加えて実験するわけにはいきませんので、使用されてる建材のメーカーが公開している仕様書を確認します。耐火構造や準耐火構造として基準を満たしている建材は、国土交通大臣による認定がされています。

屋根と外壁の両方とも、耐火構造か準耐火構造でなければ遮熱措置の審査基準をみなし適合することはできません。


除外される防火構造の屋根及び外壁

(3) 当該倉庫が建築基準法第2条第8号に規定する防火構造の屋根及び外壁を有している場合。ただし、以下に該当する倉庫にあっては、この限りではない。

a 屋根又は外壁が単一の材料をもって作られている倉庫

b 屋根又は外壁が複数の材料をもって作られている倉庫であって、構造材の一部に金属板が使用されているもの

c 屋根又は外壁が複数の材料をもって作られている倉庫であって、その全てがセメント板系又は珪酸カルシウム板系であるもの。

解説

防火構造は耐火構造および準耐火構造よりも技術的基準が緩くなっています。同じく国土交通大臣による認定がされます。a、b、cのいずれかにあてはまる場合は遮熱措置の審査基準をみなし適合することはできません。


平均熱貫流率の計算方法

ハとニに具体的な計算方法が記載されています。特に解説する部分はありません。そのまま数値を当てはめていくだけです。屋根または外壁の熱貫流率を求める際に、材料が複数種類使用されている場合は総和する(∑)必要があります。

平均熱貫流率は、以下の数式により算出することとする。なお、民間の検査機関等の検査により、平均熱貫流率の数値を提出できる場合にあっては、当該数式によることを要しない。


上のKr、Kw及びKoの値は、以下の数式により算出することとする。


その他の方法

ホ 上の計算方法によるほか、以下の場合に該当する倉庫にあっては、有効な遮熱措置がとられているものとして取り扱うことができる。

検査による確認

(1) メーカー、民間の建築士事務所その他の者の行った検査により当該倉庫の平均熱貫流率が4.65W/㎡・K以下であるものと認められる場合

解説

前述の計算をご自身でやられるのは大変ですので、専門機関にご依頼されるのをおすすめします。建築士の先生にご依頼されるのが一般的だと思いますが、建築検査を専門とした民間機関もあります。国土交通省では指定確認検査機関等を公表しています。ご参照ください。


参考
「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」について国土交通省

換気による熱損失

(2) 換気扇、空調装置その他の排熱上一定の効果を有する設備の設置により、当該倉庫の平均熱貫流率を4.65W/㎡・K以下に抑えることができると認められる場合

解説

屋根と外壁の建材によりそのままでは平均熱貫流率を4.65W/㎡・K以下にならない場合は、換気設備の設置により排熱をし熱損失をつくります。


その他の施設基準について

倉庫業審査基準シリーズとしてその他の施設基準についても解説しています。ぜひご覧ください。