不法行為・担保責任・危険負担・債務不履行の違いを見分ける方法

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民法を勉強をしていて、大きな関門となるのが債権の項目だと思います。一つ一つの場面は理解できても似たような文言が多く、どの条文についてなのか分からず混乱しがちですよね。

今回はそんな債権の4つの類型について、違いを理解し見分ける方法について解説したいと思います。たった1つのフローチャートをたどっていけば誰でも見分かるようになります。

フローチャート

以下の3つで判断します

  1. 契約関係(あり・なし)
  2. 発生時期(原始・後発)
  3. 債務者責任(あり・なし)

不法行為

不法行為とは

故意または過失によって他人の権利または法律上の保護される権利を侵害し、これいによって損害を生じさせることです。民法709条により損害を賠償する責任を負うことになります。

契約関係「なし」

不法行為が成立するには契約関係を必要としません。つまり現実においては契約関係にあるならば不法行為にならない、というわけではありません。ただ試験問題として出される場合は、契約関係があるならば他の類型となる可能性が高いため、不法行為について述べてるわけではないことがほとんどです。

○×問題
BはデパートAからコートを購入し、所定の期日にBがAに赴いて引渡しを受けることにした。Aはコートを梱包して倉庫に保管していたが、引渡し期日前にAの責めに帰すべからざる事由によって当該コートを紛失した。Aは不法行為によりBに対する損害賠償責任を負う。

×です。AとBにはコートの売買契約があるため不法行為ではありません。この場合は債務不履行による損害賠償責任となります。

担保責任

担保責任とは

売買契約の目的物に欠陥があり、このために買主が契約締結の時に予期した結果に反する場合に、売主が負うべき責任のことです。

契約関係「あり」・発生時期「原始」

民法においては問題の発生時期で類型を分けています。問題の発生時期が原始的、つまり元々問題がある物を売った場合は担保責任が発生します。

○×問題
Bは古美術商Aから、有名な陶芸家の茶碗を購入した。Aは所定の期日にB宅に配達した。ところが売買契約締結時にはA・Bともに気付かなかったヒビが入っていた。AはBに対して担保責任を負う。

です。一見して発生時期が分からないと感じますが、この場合は「隠れた瑕疵」と呼ばれ原始的な問題とされます。逆に後発的な問題は発生時期がハッキリとわかるものを指します。

危険負担

危険負担とは

双務契約上の債務の一方が債務者の責めに帰することができない事由によって消滅した場合に、他方の債務も消滅するか否かという問題のことです。

契約関係「あり」・発生時期「後発」・債務者責任「なし」

説明にもあるように、危険負担においては債務者の責任がないことが要件となっています。危険負担においては損害賠償責任は問題にならず、他方の債務が残るかどうかだけが問題になります。

○×問題
Bが不動産屋Aから住宅を購入した。成立後に移転登記がなされたが、引渡しがいまだなされていない時点で落雷によって滅失してしまった。AはBに損害賠償責任がある。

×です。落雷によって住宅が滅失してしまったのはAに責任はないため危険負担の問題となります。危険負担においては他方の債務が残るか否かが問題なので、損害賠償責任は発生しません。 

債務不履行

債務不履行とは

債務者が債務の本旨に従った履行をしないことです。履行遅滞・履行不能・不完全履行の三種類があります。

契約関係「あり」・発生時期「後発」・債務者責任「あり」

債務不履行はとても範囲が大きい類型ですが、見分けるのは簡単です。債務者に責任があるのは債務不履行のみなので、その旨が明記されていれば全て債務不履行の問題となります。

○×問題
Bが不動産屋Aから住宅を購入した。成立後に移転登記がなされたが、引渡しがいまだなされていない時点でAのタバコの不始末によって火災が発生し滅失してしまった。AはBにまだ代金を支払っていなかったがその債務は消滅した。

です。これはちょっと引っ掛け問題です。他方の債務が消滅と書いてあると、債務不履行なのに危険負担のことが書いてあると思い×にしてしまうかも知れません。実際は債務不履行においても、債務不履行への対抗措置として契約の解除が認められています。契約が解除されると他方の債務も消滅しますので、問題は債務不履行として矛盾がなくとなります。