ドライバーの職業病といえば何と言っても腰痛ではないでしょうか。先日はそんな腰痛持ちの方に『マッケンジー法』をおすすめする記事を書かせていただきました。
非公開: 【坐骨神経痛】しつこい腰痛に効くマッケンジー法の簡単なやり方【膝の痛みにも】
しかしながらマッケンジー法はあまり腰痛を予防することには向いていません。
最近では腰痛を予防するためにドライバーの方でも筋トレをしている方は結構いらっしゃいますね。特に昨今は空前の筋トレブームですので、腰痛以外にも健康目的や見た目を格好よくしたいでやられている人も多いことでしょう。
筆者も筋トレが趣味ですのでジムによく行くのですが、そこでよく聞かれる話があります。それは『筋トレしているのに腰と首が痛い』ということです。それも全くの初心者というわけではなく、中々の筋トレ歴を誇るトレーニー1からよく聞かれる話なのです。
なぜ筋トレをしているのに腰や首が痛くなってしまうのでしょうか。実はこれには腹筋や腕立て伏せなどの人気の筋トレと関係があるのです。
目次
なぜ人気の筋トレのせいで腰や首が痛くなるのか?
筋トレといえば筋肉を大きくして見栄えを良くしたり、筋力を付けて重たい物を持ち挙げるられるようになる効果があります。実はそれらの効果だけでなく、筋トレには人間の身体にとって重要な働きに影響があるのです。
ここでいう人間の身体にとって重要な働きとは『抗重力筋』のことです。
重要な働きである『抗重力筋』とは?
人間が重力に逆らって立ち、姿勢を保つために働く筋肉が抗重力筋です。身体中にある抗重力筋の筋肉達が緊張や伸縮をしながらそのバランスをとっています。
代表的な抗重力筋には以下のものがあります。
身体の前面にある赤い抗重力筋と背面にある青い抗重力筋がお互いにバランスを取りながら姿勢を保ちます。
筋トレによる抗重力筋への影響とは?
抗重力筋は緊張と伸縮を繰り返していますが、筋トレをするとその力が強くなり、筋肉自体が短く縮まるようになります。そうすると徐々に前面と背面のバランスが崩れていってしまうのです。
特に腹筋は人気の筋トレ種目ですが、強烈な収縮力を持ちますので一気に身体を前面に曲げてしまいます。
また、腕立て伏せやベンチプレスで鍛える大胸筋と呼ばれる胸の筋肉は『前肩2』と呼ばれる症状を引き起こします。
↑左が前肩の状態、右が正常です。
胸の筋肉の力が強くなることで、両肩を前面に巻き込んでいきます。すると頭が背骨より前に突き出すようになり、背が猫背に丸まります。また胸の筋肉だけでなく、懸垂などで鍛える広背筋よっても前肩が引き起こされることが分かっています。
広背筋の筋トレも広い背中を手に入れられるために人気の筋トレ種目となっています。猫背を治すためにやってしまっている方もいるかも知れません。
筋トレをしていなくても姿勢が悪くなるのはなぜ?
抗重力筋と前肩による姿勢の悪化は、あくまでも筋肉同士の力のバランス関係が悪くなるために起こります。現代の日常生活では、身体を背中の方に反らす運動よりも、圧倒的に身体を前に丸める運動の方が多いために、前の筋肉の力が大きくなりバランスが前方向に行ってしまうのです。
身体が前面に傾くと腰痛になる
頭の重量は約5kgありますが、これが背骨の延長線上に正しく乗っていればさほど負担にはなりません.。しかし、いったん身体が前面に傾き、頭が前に出てきてしまうと大変な負担となってしまいます。
ただでさえ力の強い前面の抗重力筋に対抗するために緊張を強いられている背面の筋肉・腱・靱帯には、頭を支えるためにさらに緊張が起こることになります。ドライバーなどの座る時間が長いお仕事になると腰から下は固定されていますので、背面の負担がすべて腰に集中していき、腰痛が引き起こされることになるのです。
腰痛持ちのドライバーがやるべきこととは?
今まで説明してきた通り、腰痛を引き起こす姿勢の悪化は以下の筋肉のせいでした。
- 腹筋
- 大胸筋
- 広背筋
それでは、これらの筋肉を鍛える筋トレをやめれば良いのでしょうか?
いいえ、これらの筋トレをやめる必要はありません。
これらの筋肉を鍛える事自体はとても良いことです。ただそのバランスが悪いだけなのです。
それではここから下では、筋トレをやめずに姿勢を正常にしていく方法を書いていきます。もちろん特に3つの筋肉を鍛えていないのに猫背になってしまっている方にも参考になると思います。
ストレッチをする
過度な筋肉の力を弱めるため、また短く縮まってしまった筋肉をストレッチで伸ばしていきましょう。3つそれぞれのおすすめのストレッチをご紹介します。
腹筋のストレッチ
寝そべった状態で腕を付き、上体をそらしていきます。実はこれマッケンジー法と同じ動きです。強烈に腹筋がストレッチされます。
大胸筋のストレッチ
2:46頃から始まるストレッチです。棒や紐またはトレーニングチューブを両手で持ち、頭のほうから後ろに回していきます。あまり急に短い幅でやると痛める可能性がありますので、長さに余裕のある道具を選びましょう。個人的には下のようなトレーニングチューブでやると安全なのでおすすめです。肩も同時にストレッチできます。
広背筋のストレッチ
3:50頃から始まるストレッチです。ポールなど頑丈なものを片手でつかみ、伸ばしたい方の筋肉と同じ左右の足を後ろに引きます。少し身体をねじっていくとさらに強くストレッチできます。
拮抗筋を筋トレする
腹筋・大胸筋・広背筋はとても大きな筋肉ですので、ストレッチしただけでは足りない場合もあります。その場合は、拮抗筋を筋トレして鍛えましょう。
拮抗筋とはお互いが相反する動きをする筋肉の関係を言います。腕で使って重りを持ち挙げる際には、二頭筋と三頭筋が拮抗筋の関係になります。
http://stray-notes.blogspot.com/2015/07/common-agonist-antagonist-muscle-pairs.html
さて今回の場合は骨をまたいで反対側にあれば拮抗筋であるという単純な話ではありません。3つそれぞれが姿勢に及ぼす動きを見て、それと相反する筋肉を鍛える必要があります。
今回はそれぞれ、弱い負荷である『器具なし』と強い負荷の『器具あり』の2つのバージョンの動画を貼っていきます。
脊柱起立筋の筋トレ
腹筋の拮抗筋は脊柱起立筋です。背面の抗重力筋でもあります。
器具なし
バックエクステンション
器具あり
デッドリフト
棘上筋の筋トレ
大胸筋の拮抗筋は棘上筋です。あまり聞き馴染みのない筋肉だと思いますが、肩を外に広げる力があります。
https://www.yoganatomy.com/supraspinatus-rotator-cuff-muscle/
器具なし
器具あり
エクスターナル・ローテーション
僧帽筋中部の筋トレ
広背筋と僧帽筋中部は実際には拮抗筋ではありませんが、広背筋により前肩なったもの肩甲骨を寄せることにより後ろに持っていきます。その肩甲骨を寄せる筋肉こそが僧帽筋中部です。
https://musculoskeletalkey.com/testing-the-muscles-of-the-upper-extremity/
器具なし
両手は頭で固定し、背中に力を入れて肘を開くように上げていきます。
器具あり
ダンベル・シュラッグ
7:23からの筋トレです。とてもわかりやすく良い動画ですので、全編見ることをおすすめします。
まとめ
ストレッチも拮抗筋の筋トレも即効性があるわけではありませんが、2週間ほどやっていれば確実に身体が変化していることを感じられるはずです。
記事の内容を改めてまとめましたので、ご覧ください。
- 特定の筋トレばかりをしていると姿勢が悪くなる
- 腹筋ばかりしていると抗重力筋のバランスが崩れる
- 大胸筋・広背筋ばかり鍛えていると前肩になる
- 抗重力筋が崩れ、前肩になると頭が前に移動し腰痛になる
- 筋トレをしていなくても身体を丸める筋肉は使われやすくバランスが崩れる
- 腰痛のために腹筋・大胸筋・広背筋の筋トレをやめる必要はない
- 以下の8.9.をやる
- 腹筋・大胸筋・広背筋のストレッチをよくやる
- 腹筋・大胸筋・広背筋の拮抗筋の筋トレをする