【倉庫業】耐火性能または防火性能の審査基準について分かりやすく解説します【営業倉庫】

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シリーズ第九段では1類倉庫の耐火性能または防火性能の審査基準について解説します。

倉庫が防火構造であるか、耐火建築物もしくは準耐火建築物であることを要件としています。

建築基準法では、3階以上の階が200㎡以上の倉庫であれば『耐火建築物』、1,500㎡以上の倉庫であれば『準耐火建築物』であることが義務付けられています。また防火地域の全ての倉庫、準防火地域の500㎡以上の倉庫であれば審査基準を満たしているはずです。

もしこの耐火性能または防火性能を満たせないようならば、それらの条件がない2類倉庫として申請すると良いでしょう。ただし保管できる物品の種類は1類倉庫に比べて限られています。

このページの読み方

上部の枠内に法令の条文を示し、その下に解説が書かれています。

前提条件

倉庫業法施行規則第三条の四第2項六より

倉庫の設けられている建物が、耐火性能又は防火性能を有するものとして国土交通大臣の定める基準に適合していること。


倉庫業法施行規則等運用方針より

2-7 耐火性能又は防火性能(則第3条の4第2項第6号)

「耐火性能又は防火性能」を有する構造とは、以下のものを指す(告第7条)。

解説

耐火性能とは
通常の火災が終了するまでの間、火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために、壁・柱・床などの建築物の部分に必要とされる性能のことです
防火性能とは
建築物の周囲で発生する通常の火災による延焼を抑制するために、外壁や軒裏に必要とされる性能のことです

簡単に言えば、耐火性能中からの火に対するもの、防火性能外からの火に対するものです。

そして「耐火性能又は防火性能」を有する構造とは具体的には3種類の建物のことを指します。

  1. 防火構造の建物
  2. 耐火建築物の建物
  3. 準耐火建築物の建物

防火構造

建築基準法第2条第8号に定める防火構造であり、かつ、その外壁のうち同法第2条第6号に定める延焼の恐れのある部分に設けられた開口部に同法第2条第9号の2ロに定める防火設備(防火戸に限る。)を有するもの

解説

防火構造とは

建築基準法第2条第8号

八 防火構造 建築物の外壁又は軒裏の構造のうち、防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼を抑制するために当該外壁又は軒裏に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄網モルタル塗、しつくい塗その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。

防火構造とは防火性能をもつ構造のことです。

防火性能とは

そして建築基準法施行令にて技術的基準が細かく定めています

(防火性能に関する技術的基準)
第百八条 法第二条第八号の政令で定める技術的基準は、次に掲げるものとする。

一 耐力壁である外壁にあつては、これに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。

二 外壁及び軒裏にあつては、これらに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。

耐力壁とは、建物に地震や風などの横方向の力(水平力)が加わった際に抵抗する壁のことです。

防火性能は耐力壁・非耐力壁・軒裏のそれぞれに基準があります。

開口部について

建築基準法第2条第6号

六 延焼のおそれのある部分 隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が五百平方メートル以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線から、一階にあつては三メートル以下、二階以上にあつては五メートル以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、防火上有効な公園、広場、川等の空地若しくは水面又は耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分を除く。

密集地においては近隣からの火災の影響を受けやすいので、建物の『延焼のおそれのある部分』の防火性能を高める必要があります。

隣地境界線と道路中心線から1階では3m、2階では5m以内にある建築物の部分が『延焼のおそれのある部分』となります。営業倉庫においては、その『延焼のおそれのある部分』にある開口部は防火設備である必要があります。

防火設備とは

建築基準法第2条第9号の2ロ

ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。

防火設備は、特定防火設備と防火設備の二種類があります。YKKさんのホームページにて分かりやすく解説されています。


参考
防火設備についてYKK AP

まとめ

防火性能に関する技術的基準をまとめると以下のようになります。

  • 耐力壁・・・非損傷性30分間
  • 非耐力壁・・・遮熱性30分間
  • 軒裏・・・遮熱性30分間
  • 開口部・・・延焼のおそれのある部分は防火設備

この防火性能を持つ構造のことを防火構造と呼びます。

例えば具体的には以下のようなものです。

公益財団法人日本住宅・木材技術センター https://www.howtec.or.jp/publics/index/71/


耐火建築物

建築基準法第2条第9号の2に定める耐火建築物であるもの

解説

建築基準法第2条第9号の2

九の二 耐火建築物 次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

イ その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。

(1) 耐火構造であること。

(2) 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあつては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。

(i) 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。

(ii) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。

ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。

耐火建築物とは、屋内からの火災、屋外で発生した火災に耐えることができる建築物のことを指します。その要件を満たすには2パターンがあります。

  1. 主要構造部を耐火構造とした建築物+延焼のおそれのある部分の開口部が防火設備
  2. 耐火性能検証法による耐火建築物+延焼のおそれのある部分の開口部が防火設備

耐火構造とは

耐火構造とは、通常の火災が終了するまでの間に、火災による建築物の倒壊および延焼を防止するために、壁・柱・床などの部分に必要とされる性能(耐火性能)を持っている構造のことです。

耐火性能とは

耐火性能には3つの基準があります。

  • 非損傷性・・・壁・柱・梁・床が火災による変形・溶融・破壊その他の損傷に耐える性能
  • 遮熱性・・・壁および床で火災の火熱面以外の面の温度が燃焼する温度以上に上昇しない性能
  • 遮炎性・・・外壁および屋根が屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じない性能

耐火性能検証法とは

耐火性能検証法により、主要構造部が耐火構造でない建築物でも技術的基準が一定の水準を満たせば耐火建築物として認められます。以下の2点が要件となります。

  1. 屋内で発生が予想される火災による火熱に対する主要構造部の耐火時間 ≧ 火災継続時間
  2. 建築物周囲で発生が予想される火災による火熱に対する外壁の耐火時間 ≧ 1時間or30分間(延焼のおそれのある部分では長い)

国土交通大臣の定めた構造

その他に国土交通大臣の認定を受けた耐火建築物もあります。

平成12年 建設省告示 第 1443 号にて告示されています。


参考
防火上支障のない外壁及び屋根の構造を定める件(PDF)国土交通省


準耐火建築物

建築基準法第2条第9号の3に定める準耐火建築物であるもの

解説

建築基準法第2条第9号の3

九の三 準耐火建築物 耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。

イ 主要構造部を準耐火構造としたもの

ロ イに掲げる建築物以外の建築物であつて、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの

準耐火建築物は耐火建築物ほどの耐火性能はないが、屋内で発生した火災や屋外で発生した火災に対して容易に倒壊や延焼のしない建築物のことを指します。準耐火建築物にも2パターンあります。

  1. 主要構造部が準耐火構造である(イ)
  2. 準耐火構造と同等の準耐火性能を持つように主要構造部に防火措置を施したもの(ロ)

いずれの場合も外壁の延焼のおそれのある部分には防火設備が必要です。

主要構造部が準耐火構造である建築物をイ準耐と呼び、準耐火構造と同等の準耐火性能を持つように主要構造部に防火措置を施したものをロ準耐と呼びます。

準耐火構造とは(イ準耐)

45分間の間に、火災による建築物の倒壊および延焼を防止するために、壁・柱・床などの部分に必要とされる性能(準耐火性能)を持っている構造のことです。(階段・軒裏などは30分間)

公益財団法人日本住宅・木材技術センター https://www.howtec.or.jp/publics/index/56/

準耐火構造と同等の性能とは(ロ準耐)

公益財団法人日本住宅・木材技術センター https://www.howtec.or.jp/publics/index/56/

ロ準耐には2種類あります。

  1. 外壁耐火・・・外壁は耐火構造、屋根は不燃構造とする。
  2. 不燃材料・・・主要構造部の柱や梁は不燃材料、その他は準不燃材料とする。

それぞれ細かい非損傷性1・遮熱性2・遮炎性3が定められています。


その他の施設基準について

倉庫業審査基準シリーズとしてその他の施設基準についても解説しています。ぜひご覧ください。


  1. 壁・柱・梁・床が火災による変形・溶融・破壊その他の損傷に耐える性能
  2. 壁および床で火災の火熱面以外の面の温度が燃焼する温度以上に上昇しない性能
  3. 外壁および屋根が屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じない性能