宅配便で荷物を送る際に、送り状に色々と書くことになると思いますが、その中でお届け先の電話番号そして自分の電話番号は書く必要があるのかどうか。個人情報としてあまり書きたくはないけど、法律上はどうなんだろうかと気になっている人はいるかと思います。
結論から申し上げます。
『法律上は電話番号を書かなくても大丈夫。でも宅配便業者から引受けを断られる可能性はある』です。
どういうことか詳しく説明していきたいと思います。
目次
関係してくる法律にはどのようなものがあるか
宅配便に関係する法律はいくつかあります。リストアップしてみましょう。
それぞれ大まかに貨物の運送についてに規定していますが、送り状の細かい所まで規定しているのは商法第7章ぐらいでしょうか。
商法第570条ではこのように規定されています
荷送人は、運送人の請求に因り運送状を交付することを要す。
○2 運送状には、左の事項を記載し、荷送人之に署名することを要す。
一 運送品の種類、重量又は容積及び其荷造の種類、個数並に記号
二 到達地
三 荷受人の氏名又は商号
四 運送状の作成地及び其作成の年月日
簡単に噛み砕いて言うと、以下の通りになります。
荷物を送るように頼む人は、宅配業者に送り状を書いて渡して下さい。
○2 送り状には下記の事項を書き、また荷物を送るように頼む人の署名が必要です。
一 送る物の種類、重量または容積、そして荷物の梱包の方法、その個数と単位
二 届け先の住所
三 届け先の氏名または商号
四 送り状を作成した場所、また作成の年月日
ご覧の通り、商法の送り状に関する規定の中には届け先の氏名に関する記述はありますが、電話番号に関しては記述がありません。(この法律に違反しても罰則がないので契約が無効になるだけです。)
貨物自動車運送事業法と貨物利用運送事業法においては、そもそも送り状に関する記述がありません。
つまり、送り状に電話番号を書かなくてもどの法令にも違反することはないということになります。
それでは何の法令も違反していないのに『宅配便業者から引受けを断られる可能性はある』とはどういうことなのでしょうか、説明していきたいと思います。
なぜ宅配便業者が引受けを断る可能性があるのか
宅配便で何かを送ろうとする場合、宅配便業者との間に運送に関する契約を結ぶことになります。そしてその契約は、当事者間で何かしらの特別の取り決めをしない限り、宅配便業者が用意した約款によって契約することになります。1
宅配便業者が用意している約款はその業者によって様々ですが、実は違う業者であってもそれぞれの約款は同じような内容であり、似ているものなのです。
なぜ同じような約款を用意しているのか
宅配便業者が事業を始めるにあたっては国土交通省の許認可を受ける必要があるのですが、その申請の際に作成した約款の提出を求められます。しかしながら約款をイチから作るのは大変なので、国土交通省は標準宅配便約款というものを用意しています。多くの宅配便業者はこの標準宅配便約款を参考にするかそのまま使用することになるので、約款が同じような内容になるのです。
つまり標準宅配便約款を見れば一般的な宅配便業者との契約はどのようなものになるかおおよそ判断できます。(宅配便業者各自の約款は事務所に掲示されていたり、ホームページで公開されています。)
標準宅配便約款についてはこちらで会話形式で分かりやすく解説していますのでご参考にして下さい。
標準宅配便約款には送り状についてどのように記述されているのか
標準宅配便約款では送り状についてこう書いてあります。
第三条 当店は、荷物の運送を引き受ける時に、次の事項を記載した送り状を荷物一個ごとに発行します。この場合において、第一号から第四号までは荷送人が記載し、第五号から第十四号までは当店が記載するものとします。ただし、第九号は記載しない場合があります。
一 荷送人1の氏名又は名称、住所及び電話番号
二 荷受人1の氏名又は名称並びに配達先及びその電話番号
三 荷物の品名
四 運送上の特段の注意事項(壊れやすいもの、変質又は腐敗しやすいもの等荷物の性質の区分その他必要な事項を記載するものとします。)
五 宅配便名
六 当店の名称、住所及び電話番号
七 荷物の運送を引き受けた営業所その他事業所の名称
八 荷物受取日
九 荷物引渡予定日(特定の日時に荷受人が使用する荷物の運送を当店が引き受けたときは、その使用目的及び荷物引渡日時を記載します。)
十 重量及び容積の区分
十一 運賃その他運送に関する費用の額
十二 責任限度額
十三 問い合わせ窓口電話番号
十四 その他荷物の運送に関し必要な事項
第一項および第二項において電話番号を記載するように定めています。
ところで約款とはあくまで契約をする上での両者間の取り決めについて書いたものですので法律ではありません。では約款に書かれた事項を拒否した場合はどうなるのでしょうか?そのことについても標準宅配便約款では定めています。
電話番号の記載を拒否した場合についてはどうのように記述されているか
標準宅配便約款には引受けを拒絶する場合についてこのような記述があります。
第六条 当店は、次の各号の一に該当する場合には、運送の引受けを拒絶することがあります。
一 運送の申込みがこの運送約款によらないものであるとき。
二 荷送人が送り状に必要な事項を記載せず、又は第四条第一項の規定による点検の同意を与えないとき。
三 荷造りが運送に適さないとき。
四 運送に関し荷送人から特別の負担を求められたとき。
五 信書の運送等運送が法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するものであるとき。
六 荷物が次に掲げるものであるとき。
ア 火薬類その他の危険品、不潔な物品等他の荷物に損害を及ぼすおそれのあるもの
イ その他当店が特に定めて表示したもの
七 天災その他やむを得ない事由があるとき。
つまり『送り状に必要な事項を記載しないと引受けを拒絶することがある』ということです。必要な事項が何を指すか具体的に書かれていませんが、普通に考えて先ほどの第三条において指定してる事項についてだと思われます。
以上のことから、送り状に電話番号を書かないと宅配便業者に引受けを断れる可能性があるということになります。
まとめ
- 法律上は送り状に電話番号を記載する必要はない
- 宅配便業者と約款によって契約することになる
- その約款は国土交通省が作った標準宅配便約款が元になっている
- 標準宅配便約款には送り状には電話番号を記載するように書いてある
- 電話番号を記載しないと引受けを拒絶できるとも書いてある
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