2024年3月29日の閣議決定により、自動車運送業の分野で外国人労働者の受け入れが開始されることとなりました。このコラムでは、そもそも自動車運送業の分野では、外国人労働者の受け入れがどのような扱いだったのか、今回の閣議決定によりどのように変わったのか、また実際にどのような受け入れ準備をすればよいのかを分かりやすく解説します。
目次
これまでの自動車運送業における外国人労働者の扱いと制限
日本においては、外国人労働者の受け入れが厳しく制限されています。日本に滞在するためには、在留資格を取得して、その資格で許可された範囲でのみ活動が許されています。
在留資格とは?
在留資格とは、日本での活動の種類に応じて区分される資格です。主に「就労資格」「居住資格」「その他」という三つのカテゴリに分けられます。労働を目的として日本に滞在する場合は、「就労資格」カテゴリ内でさらに細かく分類された資格を選び、該当する資格で許可を申請します。適切な就労資格がない場合は、日本に滞在することは認められません。つまり、言い換えれば、特定の業種では外国人労働者の受け入れが不可能な場合があります。
ドライバーになれる在留資格
これまで、自動車運送業でドライバーとして働くための在留資格は限定されていました。永住者・定住者などの「居住資格」の在留資格をお持ちの方は制限なく就労が可能です。しかし「居住資格」がない場合は、運送会社で技術者として働いたり、海外企業との取引に必要な翻訳など専門的な仕事は可能でしたが、現場のドライバー職には規制がありました。しかし、今回の閣議決定により、「就労資格」の中の「特定技能」というカテゴリーおいて「自動車運送業」の分野が新設され、ドライバーとしての在留資格が認められるようになりました。
今回新たに認めらた在留資格・「特定技能」とは?
在留資格「特定技能」とは、高齢化等による人手不足が顕著な特定の業種において、技能を有する外国人労働者を受け入れるために2019年にスタートしました。特定技能1号、特定技能2号に分類されます。特定技能1号では、最長5年まで滞在できますが、技能検定の合格や、家族の帯同は認めれていないなどの制限があります。特定技能1号で活動したのちに、特定の試験などに合格すると特定技能2号に移行でき、在留期間の制限がなかったり、家族の帯同が認められるようになります。しかしながら、現在のところ「自動車運送業」は特定技能1号のみで認められており、特定技能2号に移行できる予定はないようです。
特定技能「自動車運送業分野」の条件とは?
さきに述べたように、日本では外国人労働者の受け入れが厳しく制限されています。その中でも「特定技能」という在留資格は、特定の技能を有する外国人に限って受け入れを許可しています。この資格を取得するためには、外国人労働者自身がその技能を証明する必要があります。加えて、外国人の方を受け入れる事業者にも一定の条件が課されており、適切なサポートと管理が求められます。
外国人の方が用意すること
以下の四点すべてを満たす必要があります。
日本語能力を証明する試験の合格
トラックにおいては、以下のうちいずれかを満たしていれば日本語能力があると認められています。
- 日本語能力試験N4以上合格
- 国際交流基金日本語基礎テスト合格
- 技能実習2号の良好修了
自動車運送業分野特定技能1号評価試験の合格
一般財団法人日本海事協会が実施する試験に合格する必要があります。
2024年10月現在、試験内容は発表されていませんが、60分ほどの学科試験と実技試験になると予想されます。
日本の自動車運転免許の取得
外国で取得した運転免許を日本のもの切り替えたものでも大丈夫です。
初任者運転者研修の修了
詳細はまだ調整中ですが、受け入れ先の事業者が実施するものでも、研修会社が主催するものでも良いでしょう。
事業者が用意すること
以下の三点すべてを満たす必要があります。
道路運送法に規定する自動車運送事業を経営していること
トラックにおいては一般貨物自動車運送事業等の許可を取得している必要があります。
自動車運送業分野特定技能協議会の構成員となること
国土交通省により、特定技能制度の適切を運用を図るために設置される機関です。詳細はまだ調整中のようです。
「働きやすい職場認証制度」もしくは「Gマーク制度」の認証
どちらとも事業の許可を取得してから3年以上経過してから申請できる認証制度です。法令遵守などの各種項目をクリアすることにより認証を受けられます。「働きやすい職場認証制度」は職場環境全般について、「Gマーク制度」は運送業についての審査となります。どちらか認証を受けやすいほうでも良いですが、「Gマーク制度」を受ければ違反点数の消去や、IT点呼の導入ができるようになります。
PDFで公開されている申請案内書の中で、各種項目について解説されています。
下部の画像で審査項目が紹介されています。
受け入れに際しての注意点
これまでに述べてきたように外国人労働者の受け入れには様々な制限があります。それらをクリアして外国人労働者を雇用できたとしても、新たな問題点が浮上するかも知れません。文化的な違いや言語の壁を理解し、これを乗り越えるための研修やプログラムを実施すること、また職場でのコミュニケーションやチームワークを促進するために、定期的な交流会や相互理解を深める活動を計画することも必要になってくるでしょう。