皆さんがよく耳にする法律の名前には、最後に「法」とつくものが多いですよね。たとえば「相続法」「消防法」「道路交通法」などがあります。他にも「民法」「消費税法」「労働基準法」などがあり、挙げだすときりがありません。
一方で、法律について調べていると、時々「○○令」という名前にも出会うことがあると思います。たとえば、「相続税法施行令」「危険物の規制に関する政令」「道路交通法施行令の一部を改正する政令」などです。法律に比べて名前が長いものが多いですね。では、この「○○令」とは一体何なのでしょうか?
ずばり『○○令』とは法律ではなく『法規命令』です!
法規命令とは
法規命令とは行政手続法の第2条において規定されている『法律に基づく命令』と呼ばれるものです。法律と同じように国民の権利義務に関わるルールです。
法律ではないからといって無視したり違反をすると、設定された罰則が課されることがあります。
法規命令は何のためにあるのか
それではなぜ、わざわざ法律とは別に法規命令を作る必要があるのでしょうか。
それは専門性・柔軟性・中立性のためと言われています。
法律というものは、皆さんご存じのように、国会議員による長い委員会での話し合いや議会での審議を経て成立します。しかし、すべての国会議員がその分野の専門家というわけではありませんし、時代に合わないからといって毎年改正するのも非効率です。また、法律を実際に運用する際には、中立的な立場からの目も必要です。
そのため、法律では大きな枠組みや方向性を決め、細かな取り決めについては「法規命令」によって規定する仕組みになっています。
そのため法規命令は基本的に元となる法律を補足するようなものとなっています。
法規命令を発する4つの者たち
法規命令は法律ではないので、逆に議会で立法するわけでないのではお分かりになると思います。
実は法規命令は大まかに4つの者たちによって発することになります。それによって名前も異なってきます。
政令 | 内閣が発する法規命令(憲法73条6号によって規定) |
内閣府令 | 内閣総理大臣が発する法規命令(内閣府設置法7条3項によって規定) |
省令 | 各省大臣が発する法規命令(国家行政組織法12条1項によって規定) |
規則 | 各庁の長や各委員会が発する法規命令(国家行政組織法13条1項によって規定) |
法令の順番と成り立ち
ここまで法律と法規命令が出てきましたが、このような法律と命令などの諸々をまとめて『法令』と呼びます。
これら『法令』はピラミッド状の優劣関係があります。上から順に優先される法令となります。
憲法>法律>命令>規則
法規命令とは「命令」のことです。ただし、ここで注意していただきたいのは、その後によく出てくる「規則」という言葉です。この「規則」には2つの意味があり、行政規則(法的拘束力のない内部的なルール)と、各庁の長や各委員会が発する法規命令としての「規則」があります。
この2つの「規則」はよく混同されがちなので、注意が必要です!
行政規則とは内部ルール
行政規則は、法規命令とは異なり、行政内部で用いられるルールであり、国民の権利義務には直接関わりません。
行政は、こうした行政規則によって運用されています。「お役所仕事」という言葉がありますが、それも当然のことです。お役所は、この行政規則に従って、紋切り型の仕事を行うよう決められているのです。
行政規則はあくまで行政内部で用いられるものなので、私たち国民が目にする機会はほとんどありません。
法規命令になりうる行政規則
行政規則の中でも上級官庁が下部官庁に対して命令する場合を『訓令』といい、その『訓令』が書かれた文書のことを『通達』と言います。これらはあくまで行政内部での話です。
しかしながら行政規則でありながら国民に対して公示されるものがあります。それが『告示』です。
この『告示』は行政規則ですが、重要な事項であるために「お知らせ」として公示されます。
総務省のHPに掲載されている告示の一覧を見てみると多種多様な告示があることが分かります。
なぜこのように行政規則を公示するかと言うと、簡単にいえば国民もこのルールに則って手続きをして欲しいとの思いがあるからです。そのため『告示』はある意味では国民の権利義務に関わるルールである法規命令になりうると言われています。
似たようなものに『ガイドライン』『要綱』がありますが、これらも法律でも法規命令でもありません。しかしながら公開されているのであればこれらに則って手続きするのが良いでしょう。
4つの行政規則
行政規則は以下の4つに分類できます。
解釈基準 | 法律の解釈をするための基準 |
裁量基準 | 行政裁量を行使するための基準 |
給付基準 | 補助金の交付や融資をするための基準 |
行政指導指針(指導要綱) | 行政指導をするための基準 |