【倉庫業】防火区画の審査基準について分かりやすく解説します【営業倉庫】

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シリーズ第十一段では1類倉庫の防火区画の審査基準について解説します。

防火区画とは火災を拡大を抑制するために建物を立体的に設備で区切ることです。具体的な方法は建築基準法施行令において定められおり、倉庫業法においても準拠しています。

このページの読み方

上部の枠内に法令の条文を示し、その下に解説が書かれています。

前提条件

倉庫業法施行規則第三条の四第2項より

倉庫の設けられている建物内に事務所、住宅、商店等の火気を使用する施設又は危険物等を取り扱う施設が設けられている場合にあつては、当該施設が、国土交通大臣の定めるところにより区画されていること。

同じ建物内に火気又は危険物等を取り扱う施設がある場合では、防火区画を有している必要があります。

火気又は危険物等を取り扱う施設

倉庫業法施行規則等運用方針においては以下の項目において規定されています。

2-9 防火区画(則第3条の4第2項第8号)

イ火気又は危険物等を取り扱う施設

対象となる施設は以下の2つです。

  • 火気を使用する施設
  • 危険物等を取り扱う施設

火気を使用する施設

a 「火気を使用する施設」とは、規則中に挙げられているもののほか、宿直室、労務員詰所、喫煙所等の施設又は焼却炉、ボイラー等の火気を取り扱う施設を指す。

倉庫業法施行規則および倉庫業法施行規則等運用方針では以下の施設が火気を使用する施設として挙げられています。

  • 事務所
  • 住宅
  • 商店
  • 宿直室
  • 労務員詰所
  • 喫煙所
  • 焼却炉
  • ボイラー

これら火気を使用する施設が倉庫と同じ建物内にある場合は防火区画が必要となります。喫煙所が挙げられていることからもわかる通り、どんな小さな火気であっても対象となります。


危険物等を取り扱う施設

b 「危険物等を取り扱う施設」とは、消防法第2条第7号の危険物、高圧ガス保安法第2条の高圧ガスその他の爆発しやすい物品又は極めて燃焼しやすい物品を取り扱う施設を指す。

危険物等とは以下の2つのことを指します。

  • 危険物(消防法第2条第7号によって指定)
  • 高圧ガス(高圧ガス保安法第2条によって指定)

消防法または高圧ガス保安法で定められた危険物等を取り扱っている施設が倉庫と同じ建物内にある場合も防火区画が必要です。取り扱うとは製造、貯蔵、販売、移動、輸入、消費及び廃棄のことを指します。つまり製造だけではなく使用する場合も対象となります。

消防法第2条第7号

○7 危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。

高圧ガス保安法第2条

第二条 この法律で「高圧ガス」とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 常用の温度において圧力(ゲージ圧力をいう。以下同じ。)が一メガパスカル以上となる圧縮ガスであつて現にその圧力が一メガパスカル以上であるもの又は温度三十五度において圧力が一メガパスカル以上となる圧縮ガス(圧縮アセチレンガスを除く。)
二 常用の温度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる圧縮アセチレンガスであつて現にその圧力が〇・二メガパスカル以上であるもの又は温度十五度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる圧縮アセチレンガス
三 常用の温度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる液化ガスであつて現にその圧力が〇・二メガパスカル以上であるもの又は圧力が〇・二メガパスカルとなる場合の温度が三十五度以下である液化ガス
四 前号に掲げるものを除くほか、温度三十五度において圧力零パスカルを超える液化ガスのうち、液化シアン化水素、液化ブロムメチル又はその他の液化ガスであつて、政令で定めるもの
高圧ガスとは圧縮ガス・圧縮アセチレンガス・液化ガス・その他液化ガスのことを指します。

必要な防火区画

それではどのような防火区画が必要なのでしょうか。

ロ 上のa又はbに該当する施設が倉庫の設けられた建物内に存在する場合は、以下に定めるところにより区画されていなければならない(告第9条)。

a又はbとは以下の2つのことを指します。

  1. 火気を使用する施設
  2. 危険物等を取り扱う施設

これら施設が倉庫と同じ建物内にある場合は、後述の方法により区画されている必要があります。

また建物を二種類に分けて、必要な区画方法を分けています。

  • 建物が耐火建築物又は準耐火建築物である場合
  • 建物が耐火建築物又は準耐火建築物以外である場合

 

MEMO

これから先は多くの法令が引用されており分かりにくい条文になっていますが、要は「建築基準法施行令」通りにきちんと防火区画を設けている必要があるということを述べています。つまりは建築確認をパスした倉庫については全てこれらの基準を満たしていることになります。

建物が耐火建築物又は準耐火建築物である場合

a 倉庫の設けられている建物が耐火建築物又は準耐火建築物である場合にあっては、火気を使用する施設又は危険物等を取り扱う施設が建築基準法施行令第112条第10項、第11項、第15項及び第16項並びに同令第115条の2の2第1項第1号の基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備により区画されていること(告第9条第1号)

建物が耐火建築物又は準耐火建築物である場合は、防火区画は準耐火構造または特定防火設備によってなされなければなりません。

準耐火構造または特定防火設備は以下の法令の基準に適合している必要があります

  • 建築基準法施行令第112条第10項
  • 建築基準法施行令第112条第11項
  • 建築基準法施行令第112条第15項
  • 建築基準法施行令第112条第16項
  • 建築基準法施行令第129条の2の3(第115条から改定)

スパンドレル

第10項、第11項はスパンドレルと呼ばれる設備について述べられています。

建築基準法施行令第112条第10項

10 第一項から第四項までの規定による一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁(第二項に規定する防火上主要な間仕切壁を除く。)若しくは特定防火設備、第五項の規定による耐火構造の床若しくは壁若しくは法第二条第九号の二ロに規定する防火設備又は前項の規定による準耐火構造の床若しくは壁若しくは法第二条第九号の二ロに規定する防火設備に接する外壁については、当該外壁のうちこれらに接する部分を含み幅九十センチメートル以上の部分を準耐火構造としなければならない。ただし、外壁面から五十センチメートル以上突出した準耐火構造のひさし、床、袖壁その他これらに類するもので防火上有効に遮られている場合においては、この限りでない。

条文を見やすい形にするとこのようになります。

  • 第一項から第四項までの規定による一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁若しくは特定防火設備
  • 第五項の規定による耐火構造の床若しくは壁若しくは法第二条第九号の二ロに規定する防火設備
  • 前項の規定による準耐火構造の床若しくは壁若しくは法第二条第九号の二ロに規定する防火設備に接する外壁

については、当該外壁のうちこれらに接する部分を含み幅九十センチメートル以上の部分を準耐火構造としなければならない。ただし、外壁面から五十センチメートル以上突出した準耐火構造のひさし、床、そで壁その他これらに類するもので防火上有効に遮られている場合においては、この限りでない。

建築基準法施行令第112条第11項

11 前項の規定によつて準耐火構造としなければならない部分に開口部がある場合においては、その開口部に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備を設けなければならない。
つまりは建物が耐火建築物又は準耐火建築物である場合は、建築基準法施行令の通りにスパンドレルが設けられていることが必要であるということです。

給水管、配電管その他の管が防火区画を貫通する場合

建築基準法施行令第112条第15項

15 給水管、配電管その他の管が第一項から第四項まで若しくは第十三項の規定による一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁、第五項若しくは第八項の規定による耐火構造の床若しくは壁、第九項本文、第十項本文若しくは第十二項の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は第十項ただし書の場合における同項ただし書のひさし、床、袖壁その他これらに類するもの(以下この項及び次項において「準耐火構造の防火区画」という。)を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。
防火区画を給水管、配電管その他の管が貫通する場合は隙間をモルタルその他の不燃材料で埋める必要があります。

換気、暖房又は冷房の設備の風道が防火区画を貫通する場合

建築基準法施行令第112条第16項

16 換気、暖房又は冷房の設備の風道が準耐火構造の防火区画を貫通する場合(国土交通大臣が防火上支障がないと認めて指定する場合を除く。)においては、当該風道の準耐火構造の防火区画を貫通する部分又はこれに近接する部分に、特定防火設備(法第二条第九号の二ロに規定する防火設備によつて区画すべき準耐火構造の防火区画を貫通する場合にあつては、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備)であつて、次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを国土交通大臣が定める方法により設けなければならない。
一 火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖するものであること。
二 閉鎖した場合に防火上支障のない遮煙性能を有するものであること。
防火区画を換気、暖房又は冷房の設備の風道が防火区画を貫通する場合は防火ダンパーを設ける必要があります。

準耐火構造による区画

建築基準法施行令第115条の2の2は第129条の2の3に改定になりました
ロ 主要構造部が準耐火構造(主要構造部である壁、柱、床、はり及び屋根の軒裏にあつては、その構造が次に定める基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)であること。
(1) 次の表に掲げる建築物の部分にあつては、当該部分に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後それぞれ同表に定める時間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
間仕切壁(耐力壁に限る。)
一時間
外壁(耐力壁に限る。)
一時間
一時間
一時間
はり
一時間
(2) 壁(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分を除く。)、床及び屋根の軒裏にあつては、これらに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。
(3) 外壁(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分を除く。)にあつては、これに屋内において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものであること。

建物が耐火建築物又は準耐火建築物以外である場合

b 倉庫の設けられている建物が耐火建築物又は準耐火建築物以外の建築物である場合にあっては、火気を使用する施設又は危険物等を取り扱う施設が建築基準法施行令第113条第1項の基準に適合する防火壁等により区画されていること(告第9条第2号)。

建築基準法施行令第113条第1項

一 耐火構造とし、かつ、自立する構造とすること。

建物が耐火建築物又は準耐火建築物以外である場合は防火壁によって区画されている必要があります。

その他の施設基準について

倉庫業審査基準シリーズとしてその他の施設基準についても解説しています。ぜひご覧ください。