【倉庫業】水の浸透を防止する構造の審査基準について分かりやすく解説します【営業倉庫】

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今回は倉庫業審査基準シリーズ第三段として1類倉庫の水の浸透を防止する構造の審査基準について解説していきます。

倉庫業施行規則第3条の4第2項第3号においては以下のように規定されています。

構造及び設備が、倉庫内への水の浸透を防止するに足るものとして国土交通大臣の定める基準に適合していること。

今回はこの『構造及び設備』のうち構造についての記事になります。

このページの読み方

上部の枠内に法令の条文を示し、その下に解説が書かれています。


倉庫業法施行規則等運用方針において以下のように定められています。

屋根の構造

(1) 屋根の構造(告第4条第1項第1号)
屋根は、倉庫内への屋根からの水の浸透を防止するため、以下の構造のうちのいずれかであることを要する。

解説

屋根の構造や屋根材を具体的に指定することで水の浸透を防止することができるとみなしています。


金属板葺について

波型鉄板葺、瓦棒葺、折板構造、ルーフデッキ構造(瓦棒型ルーフデッキを含む。)等の金属板葺のもの(告第4条第1項第1号イ)

解説

屋根材と工法が同列に挙げられているので少し分かりにくいですが、以下のような意味となります。

  • 波型の金属板葺を使っている
  • 金属板を瓦棒葺している
  • 金属板葺を折板構造で施工している
  • 金属板葺をルーフデッキ構造で施工でしている

一般的によく知られているトタン屋根がこの部類に入ります。金属板葺は素材への水の浸透が一切ないことが最大の特徴となります。

瓦棒葺の例


参考
瓦棒ぶき一般社団法人金属屋根協会


陸屋根について

鉄筋コンクリート、プレキャストコンクリート板、軽量気泡コンクリート板等で造られているもので、表面に防水塗装が塗布されている等有効な防水措置が講じられていると認められるもの(告第4条第1項第1号ロ)

解説

陸屋根の場合は防水措置を取っている必要があります。矩計図または断面図に記載されています。また別途、メーカーや施工業者の資料があれば添付します。

住宅瑕疵担保責任保険おいては以下のようなものが有効な防水措置とされているため、倉庫業においても同様だと思われます。

  • 金属板(鋼版)ふき
  • 塩化ビニール樹脂系シート防水工法
  • アスファルト防水工法
  • 改質アスファルト防水工法
  • FRP 系塗膜防水工法。ただし、ガラスマット補強材を2層(ツープライ)以上とすること。なお、防水材製造者の施工基準において、施工面積が小さく、ガラスマッ ト補強材に十分な強度が認められる場合など、当該基準が雨水の浸入を防止するために適切であると認められる場合は1層以上とすることができる。
  • FRP系塗膜防水と改質アスファルト防水又はウレタン塗膜防水を組み合わせた工法

あくまでこれは住宅瑕疵担保責任保険での基準ですので、倉庫業の審査基準にも適用できるかどうかはの担当陸運局の方とご相談ください。


屋根の有効な防水措置について

a又はbに掲げるもののほか、スレート葺の屋根で裏地に下地板を張ったもの等これらと同等以上に倉庫内への水の浸透の防止上有効な構造であると認められるもの(告第4条第1号ハ)

解説

陸屋根と同じく住宅瑕疵担保責任保険おいては以下のようなものが屋根の防水として適しているとみなされるようです。

  • 下ぶき材は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)に適合するアスファルトルーフィング940又はこれと同等以上の防水性能を有するものとする。
  • 上下(流れ方向)は100㎜以上、左右は200㎜以上重ね合わせることとする。
  • 谷部及び棟部は、谷底及び棟頂部より両方向へそれぞれ250mm以上重ね合わせることとする。ただし、ふき材製造者の施工基準においてふき材の端部に止水措置を施すなど、当該基準雨水の浸入を防止するために適切であると認められる場合は当該基準によることができる。
  • 屋根面と壁面立上げ部の巻き返し長さは、250mm以上かつ雨押さえ上端より50㎜以上とする。
  • 天窓の周囲は、各製造所が指定する施工方法に基づいて防水措置を施すこととする。

下ぶき材は別名『ルーフィング』と呼ばれ、屋根葺を施工する前に、屋根の下地に貼る防水シートです。隙間から水が侵入しないように重ねて貼ります。また屋根と壁の間から水が侵入しないようにまたがるように貼る(巻き返し)ことが必要です。

あくまでこれは住宅瑕疵担保責任保険での基準ですので、倉庫業の審査基準にも適用できるかどうかはの担当陸運局の方とご相談ください。


外壁の構造

(2) 外壁の構造(告第4条第1項第2号)
外壁は、倉庫内への外壁からの水の浸透を防止するため、以下の構造のうちのいずれかであることを要する。

解説

屋根と同様に、構造や材料を具体的に指定することで水の浸透を防止することができるとみなしています。


金属系サイディングについて

波形鉄板その他の金属板張のもの(告第4条第1項第2号イ)

解説

金属系サイディングと呼ばれるものです。近年はデザイン性の向上により一般住宅でも使用されるようになりました。以下のような種類のものがあります。

  • 塗装ガルバリウム鋼板
  • 塗装溶融亜鉛めっき鋼板
  • アルミニウム合金塗装板
  • 塗装ステンレス鋼板

金属サイディングとは


参考
金属サイディングとは一般社団法人金属屋根協会


ラスモルタルについて

モルタル塗のもので、下地にラスシートその他の鉄板を全面的に使用したもの又は鉄網モルタル塗のもので、裏面に下地板及びアスファルトフェルト、アスァルトルーフィングその他の防水紙を張ったもの(告第4条第1項第2号ロ)

解説

ラスモルタルと呼ばれるもので、ラスシートという鉄線を編み込んだシートにモルタルを塗ることで壁にする工法です。左官職人の方が仕上げていきます。ラスモルタル自体はひび割れや台風時などの風が強い時に水が浸透しやすいく防水性能は良くないため、裏面に下地板や防水シートを貼ります。

矩計図または断面図に記載されています。


塗装またはシーリングについて

鉄筋コンクリート造のもので表面への防水塗装の塗布等有効な防水措置が施されているもの又は金属系複合板張、プレキャストコンクリート板張又は軽量気泡コンクリート板張(防水塗装の塗布等表面に有効な防水措置を施してあるものに限る。)のもので、各接合部分に目地コーキング処理等の有効な防水措置が講じられていると認められるもの(告第4条第1項第2号ハ)

解説

鉄筋コンクリート造では表面はコンクリートがむき出しです。そのままでは雨に長期間さらされ強度が下がり、コンクリート内部の鉄筋にまで水が侵入し錆びてしまいます。そのために表面に塗装やその他の防水措置をする必要があります。

住宅瑕疵担保責任保険おいては以下のようなものが防水塗装として挙げられています。

  • JIS A 6909(建築用仕上塗材)の薄付け仕上塗材に適合する防水形外装薄塗材 E
  • JIS A 6909(建築用仕上塗材)の厚付け仕上塗材に適合する外装厚塗材 E
  • JIS A 6909(建築用仕上塗材)の複層仕上塗材に適合する複層塗材 CE、可とう形複合塗材 CE、防水形複合塗材 CE、複層塗材 Si、複層塗材 E 又は防水形複層塗材 E
  • JIS A 6021(建築用塗膜防水材)の外壁用塗膜防水材に適合するアクリルゴム系

 

またa以外のサイディング工法にあたっては接合部分に目地コーキング処理等の有効な防水措置を取る必要があります。

住宅瑕疵担保責任保険おいては以下のようなものがシーリング材として挙げられています。

  • シーリング材は、JIS A 5758(建築用シーリング材)に適合するもの

あくまでこれは住宅瑕疵担保責任保険での基準ですので、倉庫業の審査基準にも適用できるかどうかはの担当陸運局の方とご相談ください。


外壁の有効な防水措置について

a~cに掲げるもののほか、スレート張の外壁で裏地に下地板を張ったもの等これらと同等以上に倉庫内への水の浸透の防止上有効な構造であると認められるもの(告第4条第2項第2号ニ)

解説

住宅瑕疵担保責任保険おいては以下のようなものが外壁の防水として適しているとみなされるようです。

  • 通気構法(外壁内に通気層を設け、壁体内通気を可能とする構造)とした外壁に用いる防水紙は、JIS A 6111(透湿防水シート)に適合する透湿防水シート又はこれと同等以上の透湿性能及び防水性能を有するものとする。
  • 前号以外の外壁に用いる防水紙は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)に適合するアスファルトフェルト 430 又はこれと同等以上の防水性能を有するもの(透湿防水シートを除く)とする。
  • 防水紙の重ね合わせは、縦、横とも 90 ㎜以上とすること。ただし、横の重ね合わせは、窯業系サイディング仕上げは 150 ㎜以上、金属系サイディング仕上げにあっては 180 ㎜以上とする。

あくまでこれは住宅瑕疵担保責任保険での基準ですので、倉庫業の審査基準にも適用できるかどうかはの担当陸運局の方とご相談ください。


まとめ・防水施工について

今回は住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準から多くの引用させていただきました。さらに詳しくお調べになりたい方は日本住宅保証検査機構さまが出版されてます防水施工マニュアル(住宅用防水施工技術)をご覧ください。

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その他の施設基準について

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