【寄託】商法593~596条を超噛み砕いて解説【倉庫営業】

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593条から596条までは第一節「総則」の項目にあたります。寄託の基本的なことについて書いてあります。

商法593条

原文
商人カ其営業ノ範囲内ニ於テ寄託ヲ受ケタルトキハ報酬ヲ受ケサルトキト雖モ善良ナル管理者ノ注意ヲ為スコトヲ要ス

現代風
商人がその営業の範囲内において寄託を受けたときは、報酬を受けなくとも、善良な管理者の注意1

をしなければならない。

噛み砕き

お金をもらってなくても商売の一部として物を預かったなら、プロとしての仕事と同じ高い意識を持って物を預からなくてはならない。

商法594条

原文

旅店、飲食店、浴場其他客ノ来集ヲ目的トスル場屋ノ主人ハ客ヨリ寄託ヲ受ケタル物品ノ滅失又ハ毀損ニ付キ其不可抗力ニ因リタルコトヲ証明スルニ非サレハ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得

○2 客カ特ニ寄託セサル物品ト雖モ場屋中ニ携帯シタル物品カ場屋ノ主人又ハ其使用人ノ不注意ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ場屋ノ主人ハ損害賠償ノ責ニ任ス

○3 客ノ携帯品ニ付キ責任ヲ負ハサル旨ヲ告示シタルトキト雖モ場屋ノ主人ハ前二項ノ責任ヲ免ルルコトヲ得ス

現代風
旅店、飲食店、浴場その他客の来集を目的とする場屋の主人は、客より寄託を受けた物品の滅失又は毀損につき、その不可抗力によることを証明することができなければ、損害賠償責任を免れることができない。

○2 客が特に寄託しなかった物品であっても場屋中に携帯したる物品が場屋の主人又はその使用人の不注意によって滅失又は毀損したときは場屋の主人は損害賠償責任を負う。

○3 客の携帯品につき責任を負わない旨を告示した場合であっても、場屋の主人は前二項の責任を免れることができない。

噛み砕き

 

ホテル、飲食店、公衆浴場その他の客が訪れる場所のオーナーは、客から荷物を預かった場合に紛失したり壊したら、やむを得ない事情がない限りそれを弁償しなければならない。

○2 客から特に荷物を預かったわけではなくて持ち歩いている場合でも、第1項の場所の場合ではオーナーや従業員の不注意によって紛失したり壊れてしまったら、オーナーがそれを弁償しなければならない。

○3 「お客様のお荷物が紛失または壊れた場合は責任は負いかねます」などの張り紙やアナウンスをしたとしても、第1項と第2項の責任から逃れられるわけではない。


商法595条

原文
貨幣、有価証券其他ノ高価品ニ付テハ客カ其種類及ヒ価額ヲ明告シテ之ヲ前条ノ場屋ノ主人ニ寄託シタルニ非サレハ其場屋ノ主人ハ其物品ノ滅失又ハ毀損ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任セス

現代風
貨幣、有価証券その他の高価品については、客がその種類及び価額を明告してこれを前条の場屋の主人に寄託したのでなければ、その場屋の主人はその物品の滅失又は毀損によって生じた損害賠償の責任を負わない。

噛み砕き

客から財布やその他高価なものをその店のオーナーが預かった場合には、客がその中身や金額等をちゃんとオーナーに知らせていなかったのならば、オーナーはその預かったものの紛失や壊れた場合に弁償しなくても良い。

商法596条

原文
前二条ノ責任ハ場屋ノ主人カ寄託物ヲ返還シ又ハ客カ携帯品ヲ持去リタル後一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス

○2 前項ノ期間ハ物品ノ全部滅失ノ場合ニ於テハ客カ場屋ヲ去リタル時ヨリ之ヲ起算ス

○3 前二項ノ規定ハ場屋ノ主人ニ悪意アリタル場合ニハ之ヲ適用セス

現代風
前二条の責任は、場屋の主人が寄託物を返還し又は客が携帯品を持去した後、一年を経過したときは、時効によって消滅する。

○2 前項の期間は物品の全部滅失の場合においては、客が場屋を去った時よりこれを起算する。

○3 前二項の規定は、場屋の主人が悪意2の場合には、これを適用しない。

噛み砕き

商法594条と商法595条の責任は、オーナーが預かった物を返したり、また客が荷物を預けたわけではない場合は店を去ってから、1年を経過すると時効で消滅する。

○2 預かった荷物を紛失した場合は、客が店を去ってから1年で責任は時効で消滅する。

○3 第1項と第2項については、オーナーがなぜ紛失や壊れたかを知っている場合は、時効によって消滅しない。


  1. 善管注意義務と呼ばれるもので、その人の社会的地位を考慮して通常期待される注意義務のこと
  2. 法律用語としての悪意は「知っていた」という意味であり、悪い感情を持っていたと意味ではない