【寄託】商法611~618条を超噛み砕いて解説【倉庫営業】

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競売や質入りについての項目が多くなります。

商法611条

原文

倉庫営業者ハ競売代金ノ中ヨリ競売ニ関スル費用、受寄物ニ課スヘキ租税、保管料其他保管ニ関スル費用及ヒ立替金ヲ控除シタル後其残額ヲ質入証券ト引換ニ其所持人ニ支払フコトヲ要ス

○2 競売代金ノ中ヨリ前項ニ掲ケタル費用、租税、保管料、立替金及ヒ質入証券所持人ノ債権額、利息、拒絶証書作成ノ費用ヲ控除シタル後余剰アルトキハ倉庫営業者ハ之ヲ預証券ト引換ニ其所持人ニ支払フコトヲ要ス

現代風

倉庫営業者は競売代金の中より競売に関する費用、受寄物に課すべき租税、保管料其他保管に関する費用及び立替金を控除したる後、其残額を質入証券と引換に其所持人に支払うことを要す

○2 競売代金の中より前項に掲けたる費用、租税、保管料、立替金及び質入証券所持人の債権額、利息、拒絶証書作成の費用を控除したる後、余剰あるときは倉庫営業者は之を預証券と引換に其所持人に支払うことを要す

噛み砕き

倉庫営業者は競売によって得たお金の中から、競売の費用、預かった物にかかった税金、保管料、その保管に関する費用を差し引いてから、その残りのお金と質入証券とを引き換えて支払わなければならない

○2 第1項の費用の他に質入証券を持っている人の債権のお金、利息、拒絶証書の作成費用を差し引いてもなおお金が余る場合は、倉庫営業者は残りのお金と預証券と引き換えて支払わなければならない


商法612条

原文

競売代金ヲ以テ質入証券ニ記載シタル債権ノ全部ヲ弁済スルコト能ハサリシトキハ倉庫営業者ハ其支払ヒタル金額ヲ質入証券ニ記載シテ其証券ヲ返還シ且其旨ヲ帳簿ニ記載スルコトヲ要ス

現代風

競売代金を以て質入証券に記載したる債権の全部を弁済すること能はざりしときは、倉庫営業者は、其支払いたる金額を質入証券に記載して、其証券を返還し、且其旨を帳簿に記載することを要す

噛み砕き

 

競売で得たお金が質入証券に記載されている債権の金額におよばないときは、倉庫営業者は、競売で得たお金までを質入証券に記載して、その証券を返還して、その旨を帳簿に記載しなければならない


商法613条

原文

質入証券ノ所持人ハ先ツ寄託物ニ付キ弁済ヲ受ケ尚ホ不足アルトキハ其裏書人ニ対シテ不足額ヲ請求スルコトヲ得

○2 手形法第四十五条第一項第三項第五項第六項、第四十八条第一項、第四十九条及ヒ第五十条第一項ノ規定ハ前項ニ定メタル不足額ノ請求ニ之ヲ準用ス

○3 手形法第五十二条第三項ノ規定ハ不足額ノ請求ヲ受クル者ノ営業所又ハ住所ノ所在地カ其請求ヲ為ス者ノ営業所又ハ住所ノ所在地ト異ナル場合ニ於ケル償還額ノ算定ニ付キ之ヲ準用ス

現代風

質入証券の所持人は、先つ寄託物に付き、弁済を受け尚ほ不足あるときは、其裏書人に対して不足額を請求することを得る

○2 手形法第45条第1項、第3項、第5項、第6項(遡求の通知) 、第48条第1項(遡求金額)、第49条(再遡求金額)及び第50条第1項(遡求義務者の権利)の規定は、前項に定めたる不足額の請求に之を準用する

○3 手形法第52条第3項(戻為替相場主義による償還額の算定) の規定は、不足額の請求を受くる者の営業所又は住所の所在地が其請求を為す者の営業所又は住所の所在地と異なる場合に於ける償還額の算定に付き之を準用する

噛み砕き

質入証券を持っている者は、まず預けた物に対してのお金を受け取り、それでも不足があるときは、その裏書人に対して不足分を請求するが出来る。

○2 質入証券に不足分が出た場合は、手形法第45条第1項1、第3項2、第5項3、第6項4(遡求の通知) 、第48条第1項7(遡求義務者の権利)の規定を適用できる

○3 不足分を請求する者と請求される者の営業所または所在地が違う場合に、金額の計算方法は手形法第52条第3項8(戻為替相場主義による償還額の算定) の規定を適用する


商法614条

原文

質入証券ノ所持人カ弁済期ニ至リ支払ヲ受ケサリシ場合ニ於テ拒絶証書ヲ作ラシメサリシトキ又ハ拒絶証書作成ノ日ヨリ二週間内ニ寄託物ノ競売ヲ請求セサリシトキハ裏書人ニ対スル請求権ヲ失フ

現代風

質入証券の所持人が、弁済期に至り支払を受けさりし場合に於て、拒絶証書を作らしめさりしとき又は拒絶証書作成の日より二週間内に寄託物の競売を請求せさりしときは、裏書人に対する請求権を失う

噛み砕き

質入証券を持っている者が、返済の期限になっても支払いを受けられない場合に、拒絶証書を作ろうとしなかったり、または拒絶証書を作った日より2週間以内に預けた物を競売にかけように請求しないときは、裏書人に対して支払いを請求する権利を失う


商法615条

原文

質入証券所持人ノ預証券所持人ニ対スル請求権ハ弁済期ヨリ一年質入証券裏書人ニ対スル請求権ハ寄託物ニ付キ弁済ヲ受ケタル日ヨリ六个月質入証券裏書人ノ其前者ニ対スル請求権ハ償還ヲ為シタル日ヨリ六个月ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス

現代風

質入証券所持人の預証券所持人に対する請求権は、弁済期より一年質入証券裏書人に対する請求権は、寄託物に付き弁済を受けたる日より六个月質入証券裏書人の其前者に対する請求権は、償還を為したる日より六个月を経過したるときは、時効に因りて消滅する

噛み砕き

質入証券を持っている者の預証券を持っている者への支払いを請求する権利の時効は、返済の期限より1年間である。質入証券の裏書人への支払いを請求する権利の時効は、預けた物を返してもらった日から6ヶ月である。質入証券の裏書人の前者への支払いを請求する権利の時効は、返済をした日から6ヶ月である


商法616条

原文

寄託者又ハ預証券ノ所持人ハ営業時間内何時ニテモ倉庫営業者ニ対シテ寄託物ノ点検若クハ其見本ノ摘出ヲ求メ又ハ其保存ニ必要ナル処分ヲ為スコトヲ得

○2 質入証券ノ所持人ハ営業時間内何時ニテモ倉庫営業者ニ対シテ寄託物ノ点検ヲ求ムルコトヲ得

現代風

寄託者又は預証券の所持人は、営業時間内何時にでも倉庫営業者に対して、寄託物の点検若くは其見本の摘出を求め又は其保存に必要なる処分を為すことを得

○2 質入証券の所持人は、営業時間内何時にでも倉庫営業者に対して、寄託物の点検を求むることを得

噛み砕き

物を預けた者や預証券を持っている者は、倉庫の営業時間内ならいつでも倉庫営業者に対して、預けた物の点検もしくはその見本を取り出して見せること、またその保管に必要な処置を求めることができる。

○2 質入証券を持っている者は、倉庫の営業時間内ならいつでも倉庫営業者に対して、預けた物の点検を求めることができる


商法617条

原文

倉庫営業者ハ自己又ハ其使用人カ受寄物ノ保管ニ関シ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ其滅失又ハ毀損ニ付キ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス

現代風

倉庫営業者は自己又は其使用人が受寄物の保管に関し、注意を怠らさりしことを証明するに非ざれば、其滅失又は毀損に付き損害賠償の責を免るることを得ず

噛み砕き

倉庫営業者はオーナーや従業員が預かった物の保管に関して、注意を怠らなかったことを証明することができないのならば、その紛失や壊れてしまったことに対して賠償する責任から逃れることができない


商法618条

原文

倉庫営業者ハ受寄物出庫ノ時ニ非サレハ保管料及ヒ立替金其他受寄物ニ関スル費用ノ支払ヲ請求スルコトヲ得ス但受寄物ノ一部出庫ノ場合ニ於テハ割合ニ応シテ其支払ヲ請求スルコトヲ得

現代風

倉庫営業者は受寄物出庫の時に非ざれば、保管料及び立替金、其他受寄物に関する費用の支払を請求することを得ず。但、受寄物の一部出庫の場合に於ては、割合に応じて其支払を請求することを得

噛み砕き

 

倉庫営業者は預かった物を倉庫から出す時でないならば、保管料、立替金、その他の預かった物に関する費用を請求することができない。ただ、預かった物の一部を倉庫から出す場合は、その割合に応じて支払いの請求をすることができる


  1. 所持人は、拒絶証書作成日に続く又は無費用償還の文言の記載がある場合には、手形提示日に続く4取引日内に自己の裏書人及び振出人に対して引受拒絶又は支払拒絶があったことを通知しなければならない。各裏書人は、通知を受けた日に続く2取引日内に前通知者全員の名称及び宛所を表示し、自己が受けた通知を自己の裏書人に通知し、順次に振出人に及ぶようにしなければならない。この期間は、各通知を受けたときから進行する
  2. 裏書人がその宛所を記載せず、又は記載が分明でない場合には、その裏書人の直接の前者に通知すれば足りる。
  3. 通知をしなければならない者は、適法な期間内に通知をしたことを証明しなければならない。この期間内に通知の書面を郵便に付したときは、その期間を遵守したものとみなす。
  4. 前項の期間内に通知をしなかった者も遡求権を失わない。ただし、過失により損害が発生したときは、為替手形金額の限度内において賠償する責任を負う。
  5. 所持人は、遡求権により次の金額の支払いを請求することができる。

     1.引受又は支払われない手形金額及び利子の記載があればその利子

     2.年6分の利率による満期以後の利子

     3.拒絶証書の費用、通知の費用及びその他の費用

  6. 為替手形を受戻した者は、その前者に対して次の金額の支払いを請求することができる。

     1.支払った総金額

     2.前号の金額に対する年6分の利率により計算した支払いの日以後の利子

     3.支出した費用

  7. 遡求を受けた手形債務者又は受ける手形債務者は、支払と引換えに拒絶証書、受領を証明する計算書及びその手形の交付を請求することができる。
  8. 所持人が戻手形を振り出す場合には、その金額は、本手形の支払地でその前者の住所地に対して振り出す一覧払手形の為替相場により定める。裏書人が戻手形を振り出す場合には、その金額は、戻手形の振出人がその住所地で前者の住所地に対して振り出す一覧払手形の為替相場により定める。