前回に引き続きシリーズ第四段として1類倉庫の水の浸透を防止する設備の審査基準について解説していきます。
倉庫業施行規則第3条の4第2項第3号においては以下のように規定されています。
構造及び設備が、倉庫内への水の浸透を防止するに足るものとして国土交通大臣の定める基準に適合していること。
今回はこの『構造及び設備』のうち設備についての記事になります。
自家用倉庫として使用していたものを営業倉庫として申請する場合、よく問題になるのが水回りの所です。水によって荷物が濡れてしまわないように、水回りの設備には厳しい条件がついています。どうしてもクリアできそうにない場合は、倉庫外に設備を移すなどの対策をすることにもなります。
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上部の枠内に法令の条文を示し、その下に解説が書かれています。
前提条件
倉庫業法施行規則等運用方針の以下のように定められています。
倉庫内への水の浸透を防止するため、以下の設備基準に適合していることを要する。
解説
後述の(1)の『雨樋』と(2)の『水を使用する設備がない』という条件を両方ともクリアしている必要があります。(2)の『水を使用する設備がない』には関しては例外条件としてa、b、cを設けています。a、b、cにそれぞれあてはまる場合にあっては、それぞれをクリアする必要があります。
雨樋は必須
(1)雨水を有効に排出できる雨樋を有すること(告第4条第2項第1号)。
解説
雨樋はいかなる場合でも必須です。雨樋がないと落ちた雨水が土台や外壁に跳ね返り濡らすことで痛みが早くなります。また落ち葉などのゴミや劣化なのでしっかりと排水ができていないこともありますので、審査基準に関係なくちゃんとチェックするようにしましょう。
水を使用する設備がないこと
(2)倉庫又は倉庫と隣接して設けられた設備(倉庫と区画されていないものに限る。)の内部(以下「倉庫内等」という。)に樋及びこれに伴う排水路並びに水を使用する設備が設けられていないこと(告第4条第2項第2号)。
「倉庫と隣接して設けられた設備(倉庫と区画されていないものに限る。)」とは、倉庫に隣接する作業場、プラットホーム等の設備であって、壁等により倉庫と区画されておらず、当該設備内に浸透した水が直接倉庫内にも流入する可能性のある構造となっているものを指す。
「水を使用する設備」とは、ウォータークーラー、手洗所、浴室その他の設備又は保管物品を洗浄するための洗浄槽等の設備を指す。倉庫内等においては、樋及びこれに伴う排水路や水を使用する設備を設けることは原則として許されないが、以下に該当する場合にあっては、この限りではない(告第4条第2項第2号ただし書き)。
解説
倉庫内や壁で仕切られていない隣接する設備の内部に『水を使用する設備がない』ことが必要だと定めています。ただし後述のa、b、cをそれぞれをクリアすれば良いということになっています。また運用方針とは別に告示においても条件が示されています。
谷樋について
a 谷樋にあっては、十分な水勾配がとられており、かつ、溢水を防ぐため十分な防水措置が講じられていること(告第4条第2項第2号イ)。
解説
谷樋とは2つの勾配がついた屋根が接する谷部分に雨水を流すために作られる樋のことです。
なぜこの谷樋が問題になるかというと、倉庫の建屋は長いため大量の雨水がこの谷樋を流れることになりますが、よく雨漏りをする部分であるからです。また多くの場合は谷樋は倉庫内を通っており、これが溢水してしまうと大変なことになってしまいます。
排水量の計算については屋根の面積を元に計算していきます。
参考
雨とい技術情報SEKISUIエスロンタイムズ on the Web
計算と設計はあくまでも建築士の先生のお仕事ですので、申請手続きにおいてはそれがなされていることを確認するために矩計図を提出します。
水の浸透を防ぐ
b 水を使用する設備の周囲に堰が設けられている等当該設備から倉庫内等へ水がせき浸透しないよう適切な措置が講じられていること(告第4条第2項第2号ロ)。
「適切な措置」とは、水を使用する設備から水が流出した際に、倉庫内への水の浸透を防ぐため、当該施設を壁又は防水シートにより区画すること(当該施設で氷等を使用する場合にあっては、施設から漏出した冷気による貨物への結露防止のため、必ずビニールシート等により区画することとする。)、周囲に堰を設けること等の措置をいう。
解説
ウォータークーラーやトイレを設置する場合には、ただ置くのではなく水が流出した場合に備えて壁で区切られた場所に置かなくてはなりません。倉庫内にユニットハウス型の事務所を設置する方法もありますが、その場合には準耐火構造以上の壁で出来ている必要もあります。新たに水を使用する設備の設置をする場合には、建築士の先生および工務店の方、陸運局の担当の方等とよく相談されたほうがよろしいでしょう。
排水設備について
c 樋又は水を使用する設備に付随する排水路(倉庫内等に設けられているものに限る。)にあっては、十分な水勾配がとられているとともに、耐重型の蓋の備付け、地下埋設等溢水防止のための措置が講じられていること(告第4条第2項第2号ハ)。
解説
樋および設備の排水路にあたっては、排水量の増加により水が溢れ出し倉庫内が浸水しないようにしなければなりません。矩計図や設備図にて確認します。
配管の材質と被覆について
運用方針とは別に倉庫業法第3条の登録の基準等に関する告示においては以下のように定めています。
ハ 竪樋又は水を使用する設備に付随する給水又は排水のための配管(倉庫内等に設けられているものに限る。)にあっては、鋼管、硬質塩化ビニール管その他のこれらと同等の材質のものであり、かつ、結露防止のための防露被覆が施されていること。
解説
配管の劣化によって水が浸透しないように、丈夫なものでなくてはいけません。鋼管、硬質塩化ビニール管以外にもステンレス管、硬質塩化ビニル管、硬質塩化ビニルライニング鋼管など多種多様な水道管があります。
また防露被覆はポリエチレンフォームなどでできたパイプカバーを被せテープで固定します。
参考
給水配管・排水配管等の防露被覆公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター
その他の施設基準について
倉庫業審査基準シリーズとしてその他の施設基準についても解説しています。ぜひご覧ください。